二十話 大会当日
二週間が経ち、大会当日。
母の体調も戻り、千秋は何の気負いもなく学年対抗レクレーションに出場していた。
「まさか、ここまで来れるとはな」
クラス代表として出席している千秋、真紅、華理は、何だかんだと決勝戦まで辿り着いた。
活躍したのは真紅と華理だけで、ここに来るまでに千秋は一戦もしていない。一番手の華理、二番手の真紅で決着がついてしまうのだ。
初戦、会場がどよめいた。
名門の動物使いとの対戦。相手が使役する狐の俊敏さに苦戦を強いられていた華理だったが、狐からの攻撃を捌きながら、彼女はまんまと学校側が生徒に用意した相手の媒介のブレスレットを壊した。
さらに次の戦いでは、水魔法使いと真紅の戦い。鬼束の落ちこぼれと呼ばれているとは思えない戦いぶりで、見る者を圧倒した。素早く相手の懐に滑り込み峰打ちを決めたその勝負は、相手が真紅を侮ったという理由だけではなかった。
学年八クラス。対戦は決勝も合わせて三回行われる。初戦、二回戦を終えて、彼らは決勝へ上がった。
「驚いたわ。いったいどんな修行をしてきたの?」
感嘆の声を上げる華理に、真紅はへへ、と頬を緩める。
「父上のトコで鍛えてもらったんだ。あたしのせいで負けるなんてヤダし」
「たかがレクレーションだろ? そこまでしなくても……」
そこで千秋は言葉を区切り、台詞を改める。
真紅が欲しているのはそんな言葉じゃない。
「よく頑張ったな」
よしよし、と真紅の頭を撫でてやる。
正直、初戦で敗退だと思っていた。他のクラスは名門の魔法使いの血を引く生徒を出場させていた。名門の出とはいえ落ちこぼれの真紅と、魔法が上手いだけの華理、そもそも戦闘向きではない千秋。この三人で勝ち進むことはできない、と。
だが、実際は違った。
真紅の技は並み居る敵をなぎ倒し、華理は持ち前の器用さで媒介を奪う。
この大会の勝利条件は、相手を戦闘不能にすること。気絶させる、眠らせる、媒介を奪うのも有効だ。
この調子なら優勝も夢ではない、と思ったときだった。
一際高い歓声が上がる。
結界の中で、一つの決着がついたようだった。
「勝者、神條瑠璃」
金色の髪を揺らし、赤茶色の瞳と視線がぶつかった。
すっかり忘れていたが、彼女は優勝候補筆頭だ。
やっぱり、優勝は無理かもしれないな。
彼はこっそりため息を吐いた。
とうとう始まりました!
戦闘描写は苦手ですが、精一杯頑張ります!