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序章

始めましてもそうじゃない方も読んでいただいて嬉しいです。

「優しい少年」が主人公です。それを崩さないよう、気をつけながら書きます。


 おしゃれなレンガ造りの二階建ての屋敷は、この国ではいたって普通。そのやや広めの玄関で、備え付けの靴箱の姿見が、一人の少年とその母親を映していた。

 金色を帯びた茶色の髪を緩く編んだ、深海のような深い青色の瞳を持つ、優しい風貌の女性。彼女は自分と似た面差しを持つ少年の目線に合うよう膝を折り、両手を差し出していた。

 母親譲りの髪色と、それと同じ茶色の瞳。まだ幼く、小学校に入学するには少し早いであろう少年は、不満そうにしながら母の手に自分の両手を乗せた。

「……どうしたの? 千秋」

 千秋と呼ばれた少年は、口を尖らせて母を見る。

「……どうして、そとでマホウをつかっちゃいけないの?」

 外で魔法を使ってはいけない、という決まりはない。公園などで魔法の練習をしている様子は日常の光景で、魔法を仕事に役立てている人間も多い。

 しかし少年は、母から外での魔法行使を禁止されていた。

 否、外でというより、人前で、だ。

 息子の問いに、母は困った笑みを浮かべる。

 聞いてはいけないことなのか、と首を傾げる少年に、母は右手の人差し指を立てて見せた。

「ねぇ、千秋。私たちの魔法が人とは違うことは、知っているわね?」

 母の言葉に、少年は頷いた。

 しかし、それが一体何だと言うのだろう。

「だったら、想像してみて。もし、千秋が今まで誰も見たことのないような、不思議なものを見つけたら、どうする?」

「ふしぎなものって?」

「不思議なものよ。生き物でもいいわ。それを見つけたら、あなたはどうする?」

 重ねて問いかける母に、千秋は少し考えるということもせず、すぐに答えを導き出した。

「とおさんとかあさんにはなす。あと、ともだちにも」

 それは少年の中では、当たり前のことだった。

 嬉しいことも、楽しいことも、新しい発見も、色んな人に話して教えてあげたい。そうしたら、皆も喜んでくれるから。

 息子の答えに満足したのか、母は少年の頭を優しく撫でた。柔らかな手のひらの感触に、千秋は心地よさを感じる。

 その手のひらが少年の頬まで下りて来ると、母は再び質問を続けた。

「じゃあ、もし、それを信じてもらえなかったら?」

「え?」

「誰も、千秋の見た不思議なものを、信じてくれなかったら?」

 信じてもらえなかったら?

 そんなこと、考えもしなかった。

 自分の話したことを、誰も信じてくれない。

 父が、母が、たくさんの友達が、自分から離れて行くのを想像した。

「そんなのイヤだ!」

 声を荒げる千秋に、母はもう一度、今度は慰めるように息子の頭を撫でる。

「だったら、信じてもらうために、千秋はどうする?」

 あくまでも、自分で答えを導くように、導けるように、母は問いかけた。

「……つかまえる。つかまえて、みんなにみせて、しんじてもらう」

 そこで、千秋は自分の答えに息を詰めた。

 その変化に気づいた母は、哀しそうに微笑む。

「オレたち、つかまるの?」

 さっきの質問に出てきた『不思議なもの』は、きっと自分たちのことだ。

「大丈夫。あなたのことは、母さんが守るから」

 それに、と母は息子の両手を握る。

「そうならないための《封印》よ」

 母がその言葉を発した瞬間、少年の両手の甲に、淡い光を発する『封印』の文字が浮かび、そして消えた。

 少年自身も、自分の中から『何か』が消えたような、『何か』の感覚が失われたような、奇妙な居心地の悪さを感じる。

 それは、魔力を封印されたからだろう。

「ごめんね。でも、あなたは優しい子だから……」

 その言葉の意図することは、分からない。

 優しいと、魔力を封じられるのだろうか。

 分からないけれど、そうしなければ、誰かに捕まるのだ。

 それを考えれば、これは必要なことだと思える。

「そんなかおしないでよ。ちょっと、ともだちとあそんでくるだけ。かあさんがマホウもかけてくれたし、だれにもつかまらないよ」

 封印を掛けてもらった手の甲を見せて、千秋はニカッ、と笑ってみせる。

 母は少し目を丸くして、息子の身体を抱きしめた。

「ごめんね。母さんがもっと、普通の魔法使いだったら、あなたに不自由な思いをさせなくて済んだのに……」

 窓から入る光で金色に輝く母の茶髪が、千秋の頬をくすぐる。

 少年は母の背中に手を回して、優しくポンポン、と叩いた。

「どうして? かあさんはすごいマホウつかいなんでしょ。だったら、おなじマホウがつかえるオレも、大きくなったらすごいマホウつかいになれるんだ」

 身体を離して、千秋はもう一度笑ってみせる。

「それってすごいじゃん」


 ――母との約束。

 外で魔法は使わない。

 けれど、二人の秘密は世間に知られることとなる。



 全ての人間は、一つだけ魔法を使えた。

 

 なぜそんなことができるのか。長年研究されているが答えは出ず、ほとんどの人々はただそういうもの、とだけ認識している。


 それは親から子へ遺伝する。

 苗字に魔法と同じ字を持つ彼らには、同じ魔法でも、強い魔法、弱い魔法がある。そして、特に強い魔法を持つ人間の家は栄えていた。


 そんな中、一つの魔法であらゆる魔法を使う魔法使いがいた。


 『言葉』。


 苗字にその字を持つ魔法使いは、同時に世界を破壊するだけの可能性を秘めている。


たまに読み返しながら誤字脱字の修正をしたいと思います。

気づいた方は教えて頂けると助かります。

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