それでも時間は過ぎていく
「は」
「だから、こいつは芝山一郎俺の従兄弟だよ」
そう言うと直也くんは彼に「ほれ、前に言ったハツだよ。この子が」と伝えている。
待て待て、頭ついてってないから
「えっとー・・・前に言ったって」
「ゼンヤの幼馴染の話になってさ、その時ハツのこと話したの。一郎が興味津々だったから」
興味津々?なんで
「はい!キャベツ豚チャーハン!」
ドンッ
注文した料理がきた。
熊さんが横で「少しくれ」と言ってきたから近くに寄せてあげた。
結局、あのまま家に帰ることはできず、途中で合流した直也くん達と一緒にテイタラクに連れて行かれた。
私たちがいるのは四人席で、私の隣にゼンヤ、ゼンヤの向かいに直也くん、その彼の隣で私の向かいに芝山一郎が座っている。
それで今、直也くんから芝山くんの紹介があった。
・・・衝撃だよ!
あの芝山一郎が目の前にいるし。一緒にご飯食べてるってなんだコレ!
「有名人に会うより緊張する・・・っておい!食い過ぎだよ!」
隣を見るとゼンヤが少しと言ったチャーハンを半分も食べていたので私は尽かさず自分の元にチャーハンを引き寄せた。
さっきから凄くバシバシと視線を感じる。
誰なのか分かるけど、そちらを見る勇気は私には無いわけで・・・
芝山一郎が私に無言の圧力をかけている。
ゼンヤと直也くんが2人で話始めてしまってから結構経つ。
私は黙々とチャーハンをゆっくり食べていたが、芝山一郎はずっと此方を見ていた。
何も面白くないと思うんだけどな・・・
でも興味津々って言ってたな。
一体直也くんは何を言ったのだろうか。
私に面白い要素なんてそんなにない筈だけど。
兎に角今は、目の前のタダのキャベツを食べよう。そうしよう。
っと思っていた。
「・・・ねえ」
「!」
芝山一郎がキャベツを一枚摘み、口に運んだ。
シャキッと景気の良い音が鳴る。
どうやら私に声をかけたらしい。
一体何用
「キャベツ好きなの」
「まあ・・・」
「キャベツそのものだけでいける」
「まあ」
・・・これ会話になってるのかな。ってか以外と喋るな、この人。
私は芝山一郎の首を見る。顔は見れない恥ずかしい訳で。鎖骨に近いところにホクロがあった。
「じゃあレタスは」
「え」
「レタスはそのものだけでいけるの」
不可思議だ。この人不可思議だ。
なんだか緊張が解けた。
芝山一郎の顔を見る。なんとも不健康な青白い顔だった。
長い前髪が目にかかって、辛うじて目は見えるくらい。頭半分が黒でその下は黄色の言わばプリンヘアーだ。口の横には薄く青みがかった丸がある。
辛うじて見える目が私を見ていた。そこにどんな感情があるのかは分からない。
「まあ、葉物は全般そのままいけるよ」
事実だ。
キャベツを口に運ぶ。こんなに食べたらお腹ギュルギュルになっちゃうな。
芝山一郎が少し笑った。ほんの少し息を漏らすだけの笑い方だった。
-------------------------------------------------------------
その日の夜
寝ようとしている時、アイフォンが鳴る。
登録していないアドレスだった。
メッセージには
【葉物と肉類ならどっち? 芝山一郎】
私は少し笑った。
【肉類】
そう返信して寝た。