お前はお前で私は私だ
熊さん登場
長年一緒にいたって、わからないことは沢山ある。
なんで彼はそっちの道に行ったのだろうか。
気になるけど聞かない。
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「うわっ」
ええぇぇぇ・・・
引くよ。引くってそれ。
少なくとも私はそうだよ。一人に対してそれはないよ。男気ないよ。
見るそこには、青高の制服男子と黒高の制服男子がざっと合わせて20人ほどいた。
みんなで来ちゃったの?なんでみんなでくんの?一人でいいじゃん
私は頭を抱えた。
「参ったな」
そう頭を抱えて俯く自分に重なるように影ができた。同時に両手を掴まれ、頭から引き剥がされる。
「!」
引き剥がされた両手は上に持ち上げられ、その勢いに乗り顔が上がった。私は万歳をした格好になり、目の前には熊さんがいた。
「・・・」
「・・・」
大きい大きい熊さん。私もそんなに大きくなりたかった。熊さんは180以上ある。私は160ちょいしかない。くれよ、10センチくらい。
そんなくだらない事を考えられる私は、まだ余裕があるのかもしれない。
「補習くらい、サボれ」
「なんで知ってんの!」
いやサボれじゃないし!なんで知ってんの!補習って言ってないよ!
熊さんはなんてことないように、「後輩から聞いた」と言った。なにそれ怖!後輩って誰よ。聞いたって何よ!
「なにそれ!私、見張られてんの?プライバシー!ホントこうゆうのやめて!」
私は一気にまくし立てた。こうゆう事は初めてじゃない。私の知らないとこで確実に熊さんは何かしてる。私に関して。
荒げる私を無表情で見る熊さんは、私の両手を上に持ち上げたまま後ろを振り返り、軍団に向かって「帰っていい」と言った。軍団は何も言わず、その場から去っていった。
なんのためにここに来たのあの人たち。余計な威圧感ホントやめて。
熊さんは私に向き直った。
相変わらず男前ですこと。
一重のつり目に凛々しい眉毛。少し厚い唇に芝生っぽい短い髪型。そして、太い首に制服の上からも見て取れる逞しい体。(すっごいもりもりの筋肉という訳ではない)
これが高校生って思うと凄く怖い。関わりたくない。
「・・・補習はサボれないけど、行けなくて悪かったよ」
「まったくだ」
はあー!私一般人だからな!お前のようにグレてないんだよ!巻き込むなっ!
私は唇を噛み締め、熊さんを睨み付ける。熊さんは私の両手を離した。すとんと両手は下に落ちる。
「・・・帰りたい」
「帰るか」
熊さんは私の手を掴んでずんずん歩き出した。
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「あっ、ゼンヤとハツ」「・・・」
「待たせた」
「!」
はっ、
誰だ。直也くんの隣にいる人は
帰るんじゃなかったんかい!