5
おれはいつまでも、宇宙人Hのことを考えたいた。
病室ではたらたら過ごしている。
気が向いた時には、一つ下のえいいちをからかった。
その時はその時でおもしろいけれど、宇宙人Hの姿が頭から離れない。
宇宙人Hのおかあさんは、あれから現れないし・・・。
おれの気持ちとは別に、おれの胸のむかむかは、どんどん軽くなってきた。
検査の結果がよければ退院できると、おかあさんが言ってた。
宇宙人Hが言ってたこと、当たった。
おれが思っているよりも、早く退院できるって。
だけどね、なんだかいまいちうれしい感じがしてこない。
えいいちはよかったねと言ってくれたけれど。
そんな時に宇宙人Hのおかあさんが久しぶりに現れた。
おれのお見舞いに来たそうだ。
おれはむかむかとは違う、胸の痛みを感じた。
おばさんのやさしい顔は変わらず。
手にかばんを提げた様子は普通の人と変わらない。
でも、何か不安なんだ。
「ゆうじくん、元気そうね。」
「・・・うん、退院できそうなんだ。」
「まあ、良かったわ。」
おれは自分のことよりも宇宙人Hのことが知りたかった。
ちょっとでも元気になったのか聞きたかった。
でも話ができない。
ごくんとつばを飲み込むだけ。
おばさんがかばんから見覚えのある巻貝を取り出した。
「ゆうじくんに渡して欲しいって、ひろむに頼まれたの。」
「でも、これは、ひろむくんの宝物でしょう?」
「ええ、だからこそ、ゆうじくんに・・・。」
おれは貝を受け取った。
とても軽く冷たく感じる。
おれは唇が震えてくるのを、どうにかおさえながら言った。
「・・・あの、ひろむくんは、どうしているの?」
おばさんは、おれから顔を逸らして天井を見上げた。
そしておれの方に再び顔を向けて言った。
「・・・ひろむはね、宇宙に還ったのよ。」
おれは、凍りついたように、しばらく動けなかった。
夜だ。
おれは病室の窓から外を見ていた。
空は真っ黒で、星がちかちか光っている。
大うそつきの宇宙人H、いや、ひろむ。
お前は宇宙人じゃない、おれと同じ。
うそをついて、夢みたいに星のことを話したひろむ。
おれは、おれは・・・。
おれは巻貝を持った。
耳に貝を当ててみる。
ぐぉぉぉぉぉぉ。
星の声。
宇宙人Hはこの宇宙のどこかで、小さい自分を気持ちよさそうに感じているんだろうなあ。
星たちがちかりと瞬いて、合図を送ってきた。
拙い作品を読んでいただきありがとうございました。