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それから何日かたった。
病室に宇宙人Hのおかあさんが現れた。
宇宙人Hに会わせてくれるみたい。
宇宙人Hも、おれと同じように寂しかったみたい。
でも、なんだかどきどきする。
おばさんがうつむいて、おれの少し離れて前を歩く。
おばさんと宇宙人Hの話をしたいのだけれど、言葉に出すのが怖い。
とうとう、宇宙人Hのいる病室の前まで来た。
「ひろむね、前とちょっと感じが違うけれど、びっくりしないでね。」
おばさんがドアを開けた。
おれのいる病室と同じ、いや広いかも。
それよりも・・・。
おれは、ぞくんとした。
ベッドのカーテンが開いていた。
宇宙人Hは、ベッドに横になったまま天井を見ている。
枕の側には星の本、それに変わりはないけれど・・・。
宇宙人Hのあごとほっぺたが、ぶよぶよにふくれている。
顔の色は青黒い。
胸までかぶせてある毛布の下からは、たくさんの導線や管が出ていて、ベッド近くに立てかけられた点滴とか機械につながっていた。
ちょっとの間に宇宙人Hは、地球人から宇宙人ぽく変わっていた。
「・・・ゆうじくん・・・。」
宇宙人Hはそう言うと、おれのいる場所の反対の窓に目を向けた。
窓のでっぱりに巻貝が置かれている。
「持ってくるんだね?」
おれは窓に近づき貝を取った。
そして管とかに引っかからないよう注意しながら、宇宙人Hの耳にあてた。
宇宙人Hは、はれぼったいまぶたを閉じた。
星の声をじっくり聞いてる。
口元が笑っている。
でもおれは怖くなってきた。
宇宙人Hがこのまんま、目を開けなかったらどうしようと思った。
すうすう言う宇宙人Hの呼吸の音と、呼吸するたびに上下する毛布を見て心を落ち着かせた。
「ひろむくん?」
宇宙人Hから何の反応もない。
眠ったようだ。
おれは宇宙人Hから離れると、貝をおばさんに渡した。
おばさんは、おれの病室まで送ってくれた。
そしてぺこりと頭を下げた。
「今日はありがとう。」
おばさんの目がちょっと赤い。
おれはおばさんに何て言えばいいのか分からなかった。