3
おれは目が覚めた。
病室は暗い。
夜中かな?
でもカーテンの向こう、宇宙人Hのベッドが騒がしい。
カーテンの奥で影絵の劇をしているよう。
ゆらゆらした影が何かを話している。
看護士さんの影だ。
宇宙人Hのおかあさんの影もいる。
影が大きく震えている。
おれは怖くなった。
頭から毛布をかぶった。
落ち着け、落ち着けと、何度も心の中でつぶやいた。
宇宙人Hのベッドは、きしきしと音をたてながら、どんどん病室から離れていく。
病室は静かになった。
足音が近づいてくる。
宇宙人Hのおかあさんだ。
おれは息を飲み込んだ。
胸のむかむかが大きくなる。
おれはこらえきれずに咳き込んだ。
「・・・ゆうじくん、起きているの?」
おばさんは、鼻が詰まったような声で言った。
「うん・・・、あの・・・、うちゅう、いや、ひろむくん、どうしたの?」
「・・・ええ、個室が空いたから、お引越ししたのよ。なかよくしてくれてありがとうね・・・。」
おばさんが病室を出てからだいぶ時間がたっても、おれはなかなか眠れなかった。
おれの隣には、次の日には別の男の子が来た。
おれが入院した初めての日のように、自分のおかあさんになにやら言ってる。
こいつはふとっちょ。
顔の赤いやつだ。
「こんにちは。」
少し恥ずかしそうにそいつは言った。
「名前は?」
「山田えいいち。」
「ふうん、ところで、えいいちくんって宇宙人?」
えいいちは、おれのとっぴな質問に目を丸くした。
おれは、寂しい。