↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『スキル無し』で婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!  作者: しずもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/14

あの時、婚約者は恋に落ちました

よろしくお願いします。

 さて、私の特殊スキルについての扱いは、大人たちは悩みに悩んだ末に、表向きでは『()()()()()』という判定だった、との重大な決断をすることになったわけですが、実は希少スキル、特殊スキルは国への報告の義務がありました。それは希少なスキルを持つ者の管理と国外流出を防ぐことを主目的としたものでした。


当然、私の場合も国への報告義務があります。ですが、マリエッタ(わたくし)のスキルを知っている者は少ない方が良い。そう判断した大神官様たちは国王陛下にのみ、内々に報告をすることにしたのだそうです。


 その結果、翌日にはルーデンブルグ公爵家に、『第一王子とマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢の婚約を結ぶ』、という打診という名の王命と言っても過言ではない手紙が届いてしまったのです。


 打診という名の王命、というのは少しばかりおかしくはないか、と思います。けれど本当にそういう手紙だったらしいのです。


打診だったけれど、『もう決めたからね。これは絶対だからね』みたいな言葉が書かれた手紙だった、と後に両親から聞かされました。


 この婚約は、大神官様から内密に報告を受けた国王陛下が、誰にも相談せずに独断で送り付けてきた手紙だったそうです。いくらこの国の王だとはいえ、普通ならあり得ないことです。しかし、打診という形を取りつつも、玉璽もしっかりと押されている正式な王命(もの)でした。


それが、私が第一王子レオンハルトの婚約者となった経緯です。


六歳で婚約を結ぶ事になった私とレオンハルト殿下の顔合わせは、意外にも互いの印象は悪くはないように周囲には見えていたようです。


 勿論、ルーデンブルグ公爵家側ではこの婚約は多いに不服でした。それはそうでしょう。

スキル判定の翌日に、王家側からの有無を言わせぬ王命で、第一王子との婚約が決定してしまったのですから。


 マリエッタ(わたくし)の気持ちどころか。ルーデンブルグ公爵夫妻の気持ちさえ無視した一方的な婚約()に納得出来るわけがありません。


 しかし両親の憤りや不満など、事情を知らない当時の私には分かりませんでした。お互いに『婚約者だ』と紹介された顔合わせでは、ニコニコと笑顔でお茶を飲み、レオンハルト殿下は張り切って王家自慢の薔薇の庭園を私に見せる為に、仲良く手を繋いで案内までしてくれたのです。ですから、当時の私には殿下に対して悪い印象は持ちようがなかったのです。


 その様子をコッソリと見ていた両家の親たち、特に国王陛下は胸を撫で下ろし、安堵していたようです。何しろ妻である王妃様にも相談せずに決めてしまった婚約でしたから。


公爵家側の、特にお父様は不本意ではあったものの、『マリエッタが嫌がらないのであれば、嫁ぎ先が王家というのは最高の縁』と、お母様にも説得され、仕方なく納得するしかなかったそうです。



しかし『その気持ちが間違いであった』と、お父様だけでなく、お母様までが強く後悔する日は意外にも早くやってきました。


それが私たちが八歳の時に起こった出来事です。


 ある日、王子教育の授業の中で聞いた平民の暮らしに興味を持ったレオンハルト殿下が、お忍びで遊びに行きたい、と言い出したのです。



「なぁ、マリエッタ。お前もしせいのくらしとやらにきょうみがあるだろう?」



教師や侍従などに既に反対をされて不満顔のレオンハルト殿下が、婚約者と仲を深める為のお茶会の席で私に言いました。


「市井の暮らし、ですか?確かに興味はありますが・・・」


 実はこの頃には、既に二人の教育の成果に開きが出始めていました。

それ故に、私には王子妃教育の中で、『将来の伴侶となる婚約者のレオンハルト王子を常に立てるように』と、厳しく指導をされていたのです。私はまだ八歳の子どもでしたのに。


 その言葉には、『優秀なマリエッタをレオンハルト殿下よりも目立たせてはいけない』という教育係の、王家への行き過ぎた配慮が強く含まれていたのでしょう。もうその頃には、殿下は優秀とは言い難い片鱗がちらりちらりと見え隠れしていたそうですから。



「そうだよなっ!きょうみあるよな。よしっ、おしのびだっ!おしのびでしせいのくらしを見に行こう!」



 私の言葉を勝手に過大解釈し、レオンハルト殿下が国王陛下に直接()()()()ことにより、私たちはお忍びで下町へと出かける事が決まったのでした。

もうこの頃には、国王陛下のレオンハルト殿下に対する()()()()が常態化していたのでしょうね。



 私とレオンハルト殿下の下町へのお忍び当日は、通常の護衛の人数に加えて、過保護な国王陛下と王家のすることに不安を拭いきれないルーデンブルグ公爵家側からの見守り隊が、密かに派遣されていたようです。


 だから私だけではなく、実は大勢の者がレオンハルト殿下が恋に落ちる瞬間を目撃していたのです。当然、レオンハルト殿下の初恋のお相手も目撃されているわけで、名前を知らずとも、その容姿をしっかりと確認されていました。


 私の両親と国王陛下に至っては、レオンハルト殿下が恋した相手が、どこの誰かも把握しています。それを知っているのは私だけではありますが。




あの日、待ち合わせ場所に簡素な馬車でやって来た私は、一人の女の子を連れて来ておりました。


 レオンハルト殿下は私に続いて馬車から降りてきたその女の子を見た瞬間、時が止まったかのようにその場で固まってしまったのです。


歩く度にふわりと揺れるピンクの髪も、キラキラと瞳を輝かせて周囲を見回す好奇心に満ちた青い瞳も、女の子の全てが愛らしく光り輝いた。レオンハルト殿下の目にはそう映ったようでした。


「マ、マリエッタ。この者は?」


「レオンハルト殿下。この者は遠い国に住む私の友人のルーナと申します。我が家に滞在しているのですが、殿下と同じ様に市井に大変興味がある、との事でした。急な事ではありますが、同伴しても構わないでしょうか?」



私の言葉がレオンハルト殿下の耳に届いていたのかどうか。殿下は頬を染め、じっとルーナの姿を見つめ続けていました。


そうです!この時、レオンハルト殿下は私の言葉を何一つ聞いてはいなかったのでしょう。


私の言葉を聞いてさえいれば、彼の初恋の相手が誰だったのかは明白であり、ルナティア嬢を初恋の人だと勘違いする事もなかったのです。


 その日、レオンハルト殿下はルーナと手を繋ぎ、楽しげに王都の広場周辺の店や下町の屋台を見て回り、広場から少し離れた高台で一緒に王都の景色を眺め、お忍びを満喫されました。


 幼な子ではありましたが、庶民の恰好をしていても忍びきれていない見目の良いレオンハルト殿下とルーナが先頭を切って歩き、そのすぐ後ろを同じく下町娘風の恰好をした私が付き従って歩く。

更にその後ろには、町民の姿に扮した通常の倍の人数の護衛と公爵家見守り隊がゾロゾロと歩いていく。

それは不思議な稚児行列の様だったと、暫くの間、下町では噂になっていたと聞いています。


 そして翌日、レオンハルト殿下に急に呼び出され、親子で登城した時に『お前を愛さない宣言』をされたのでした。


レオンハルト殿下にとっても、初恋の人との大切な思い出だったはずですのに。殿下は一体、その記憶をどこに置いてきてしまわれたのでしょうね?


思い出は美化されるのが定番なのに、美化どころか・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。