婚約破棄されました
よろしくお願いします。
今夜は王家主催の夜会でした。
王家主催なのだから、当然、主だった王族の方々は出席しております。
しかも今夜の夜会には、国王陛下と王妃様だけでは無く、成人前の王子、王女様たちが出席されているだけでなく、王弟閣下のご家族も揃い踏み。
この場で王族の暗殺を実行しようものならば、王家は途絶えてしまうんじゃない?というぐらいの、高貴なる方々が壇上には揃っていました。
勿論、高位貴族や下位貴族の方々も多数出席しておりますし、今回の夜会にはあと半年で学園を卒業する予定の高位貴族の令息令嬢たちも招待されており、すご~く重要な夜会のはず、でしたのよね。
それなのに、この場で婚約破棄なんてしようとする馬鹿がいるなんて、誰が予想出来たのかしら?
本当に、いきなりでしたのよ?
「マリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢!私、レオンハルト・オーガスタはお前との婚約を破棄する!」
国王様。『こんな話は寝耳に水だ!』というお気持ちは分かります。ですが、その様な表情を壇上から皆様にお見せしてはいけませんわ。
王妃様。王妃様が『王族の何たるか』を我が子たちに厳しく教え諭していたのを私もよく存じ上げております。
ですから、この場で私に対して婚約破棄を言い渡してきたレオンハルト殿下の暴走は、誰も予想出来るものではなかったと思いますよ?
「聞いているのか、マリエッタ!お前の様なスキル無しの無能な婚約者など、このオーガスタ王国の第一王子である私には相応しくない。
私の女神は、癒しのスキルを持つこのルナティアだ!
お前との婚約を破棄した後は、私はルナティアと婚約を結び直すことにした!」
いつの間にか壇上から降りていたレオンハルト殿下は、ご自分のお隣に何やらピンク髪で青い瞳の美少女を呼び寄せておりますね。
更にそのお二人の後ろには、殿下の側近候補の三人が、ギロリと私を睨みつけている状態でいつの間にか立っていましたわ。
レオンハルト殿下から事前に夜会の為のドレスも贈られず、エスコートの申し出もなかったので、他の貴族の方々と同じく、従兄弟のエスコートでお父様たちと入場する事になったときから嫌な予感はしておりました。
ですが、まさかこのような場で、婚約破棄をするなんて、レオンハルト殿下は、バ・・・いえ、一体どうしてしまわれたのでしょうね。
・・・・王族の皆様方、心中お察し致します。
壇上には王家の方々。
夜会が行われている広間の中央には、私の対面にレオンハルト殿下と美少女。その後ろには殿下の三人の側近候補たちという構図。
これは、昔は栄華を誇った王国随一の劇団の定番の演目を思い出す様な構図ではありませんか。
まあ、その演目もとうの昔に飽きられて、今では席の半分も埋まらない程に劇団も落ちぶれてしまった、という話ですけれど。
その演目の役者さながらに、ビシっと、私を指さして言い切ったのは、そんじょそこらには落ちていない金髪碧眼の見目麗しいレオンハルト殿下です。けれど、もう少ししたら、そこら辺りに落ちているかもしれませんわね。
レオンハルト殿下は得意になって婚約破棄などと仰っていますが、誰にも相談せずにごり押しで、王家の力を使い王命に近い形で私との婚約をもぎ取った国王陛下が壇上で青い顔をして見ていらっしゃいますが、大丈夫でしょうか?
「レオンハルトっ!おっ、おまっ、何を言っているのだっ!?」
呆けた状態からやっと回復したらしい国王陛下が玉座から立ち上がって叫んでいます。が、殿下には事の重大さが理解できていないようですよ?
「父上っ。あ、公の場では、陛下、でしたね。申し訳ありません。
長年の憂いからやっと解放されて、つい気が緩んでしまいました!」
国王陛下の様子を気にかけることもなく、レオンハルト殿下が満面の笑みを浮かべて・・・言い切りましたね?
憂い、ですか。
態々、確認を取らなくても、たぶん私との婚約を言っているのでしょう。いえ、それしかありませんわ。しかし、随分と酷い物言いですね。
昔はこっそりとお忍びで市井に出かけるような仲、でしたのに・・・。
でも、それがいけなかったのかしら?
だってあの後すぐに、
「あなたをあいするきはないっ!」
とか、言われてしまったのですもの。いくら八歳とはいえ、この国の第一王子としては、もう少し言いようがあったと思うのですが。
あの日、レオンハルト殿下は自分だけの女神さまに出会った、と言った。
そして、殿下は恋をしたのです。
以来、私は理不尽にも、初恋の人と比べられ続け、形だけの婚約者扱いとなってしまいました。
そうでした。そうでした。
私、既に八歳で『愛さない宣言』されていましたっけ。
それが十年経って婚約破棄ですか?
『何それ、今更?』でしたわね。
まあ、こんな大きな夜会ですることではないと思いますけれど。
ここまでお読み下さりありがとうございました。




