人類にモテない!
「なぁ…この状況を説明してもらえないだろうか?」
この国の王子ベルが俺に向かって言ってきた。いつものように食堂に居たのだが俺の左隣に座っている人物が王子の目に入りこの言葉がでた。リータ、貴族の令嬢、自分の姉、いつもの三人に加え新たに勇者がいるのが不可解だったようだ。
説明をしろと言われても俺にもこの状況はわからないのに説明のしようがない。俺が返事に躊躇していると。
「この僕がいるのになぜ勇者が君の太腿を撫ででいるんだい?」
「撫でてないつねってるんだ」
俺の代わりに勇者が答えた。
「なぜ、つねっているんだい?」
「コイツが僕の秘密を知って脅迫したからだ」
秘密を知ったのは本当だが脅迫はしてないぞ?
「男子の秘密を知って自分の太腿をつねるよう脅迫をしたと?」
「違う!秘密は知ってしまったが断じて脅迫はしていない!」
「そう、彼が言っているが?勇者よ」
王子にそう言われた勇者が俺をキッと睨んで。
「コイツの日ごろのおこないを見ていれば脅迫の言葉なんていらない、少女にご飯を食べさせ、貴族の令嬢に足を踏ませ、それだけでは飽き足らず王女様に肩を揉ませる、そんなコイツに秘密を握られたらどうするかなんて考えなくてもわかる」
「…確かに」
勇者の力説に王子が納得してしまった。王子だけではなく周りにいる生徒達も首を縦に振り口々にその通りだと言い合っていた。俺は反論しようとしたが、いくら考えても反論できる材料がないことに気づきあきらめた。
「みんなも…」
勇者が言葉を途中でくぎったかと思うと、食堂の中心の広間を険しい表情で見つめた。なにかあったのかと俺も視線を向けると、空間が歪んでいた。歪みがどんどん丸く大きくなっていく、その歪みに気づいたほかの生徒達が驚きに声を上げ始めた。
「なんだあれは?」
王子の口からも怪訝な声がもれる。その声に反応するかのように勇者が立ち上がり、腰にさしていた剣を抜き放ち歪みの前に立ち塞がる。
大きく丸くなった歪みから人に見えるなにかがゆっくりとでてきた。顔立ちは人類と同じように見えたが頭に大きな角が二本生えていた。
「…魔王…」
その姿を見たラブが呟く。
「我は魔王、アレク・プラトン、このたび新たに魔王を先代魔王から受け継いだ」
魔王が勇者の前に立ちそう口上した。
「受け継ぐ?」
「はい、魔王は世襲制です、先代魔王は人類との共存をしようとしていて争いはなかったのですが…」
ラブが俺の疑問に答えてくれるが肩に触れている手が震えていた。周りを見ると生徒全員声も出せずに震えていた。
「ぼ、僕はゆ、勇者、フルン・カリバーだ!魔王!ここになにをしにきた!」
剣を身体の前に持ち、勇者が震えながらも魔王て対峙している。フルンって言うのか初めて知ったな。
「…なに、勇者?勇者だと…フ、フハハハ…まさか勇者がこんなところにいるとはな、これは僥倖…いまここでこの国と共に滅びろ!」
魔王がそう叫ぶと手のひらを上にして片手を上げた。そして、魔王が呪文を唱えると手のひらから黒い塊が出現した。黒い塊は徐々に大きさを増していき食堂の天井まで届きそうなほどだ。
「や、やめろ…」
フルンが魔王に近づこうとするが身体が震えて動けそうにない。周りを見渡すとみんなこの状況に絶望していた。
「…」
リータが声も出せず震えて俺に掴まる。
「ああ、もう、だめですわ…」
貴族の令嬢がそう呟く。
「そんな、我が国が…」
王子の悲痛な声が聞こえる。
状況は絶望だった、だが、俺は軽い口調でラブにとあることを聞いた。
「なぁ、あの魔王、男だよな」
「え?ええ、男性のかたに見えますが…」
ラブの返事もそこそこに俺はリータを椅子に座らせ、立ち上がった。そして、普通に散歩するかのように魔王の前まで行くと。
「おい、魔王、俺を見ろ」
「ん?なんだキサ…マ…は…」
魔王は俺を見るなり口から声を発するのをやめ、そのやめた口で俺の口を塞いできた。
そして、いつの間にか魔王が出していた黒い塊は消えて無くなっていた。
「マイ、スイート、ボーイ」
つい先程までこの国を滅ぼそうとしていた魔王の口から甘い言葉が俺に向けられる。
「魔王、今日は帰れ」
魔王は俺の命令に近い口調を気にもしてない様子で。
「わかった、今日は帰るとしよう、また会いに来るぞ、マイ、スイート、ボーイ」
そう、答えると魔王は来たときと同じように帰って行った。それを見届けた俺はまるでなにごともなかったかのように自分の席に戻った。
周り全員がこの状況にポカーンとしてるなか俺はリータを自分の太腿に乗せた。
「え!えええええええええ!」
リータを乗せた瞬間時間が戻ったかのようにそこら中から叫びが聞こえた。口々になにがどうしてと言うようなことを言っていた。その中に聞き捨てならない言葉があった。
「あの男、魔王までたぶらかしたわよ」
…たぶらかしてない、いや、たぶらかしたかもしれないが俺の本意じゃないぞ
「人外にまで手をだすなんて」
「変態です」
「ど変態ね」
…人類の女性達ににモテたいなぁ。




