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勇者にモテない!

「君が王子様の後ろの恋人か?」


 三度不愉快な二つ名で呼ばれて俺は頭を声のしたほうに向ける。勇者が立って居た、黒髪で眉目秀麗な男の子だ。なぜ勇者だと分かるのかと言うと、先日王子が全校生徒に紹介していたからだ。どうやら将来魔王を倒す存在らしい。その勇者様が俺になんのようだ?


「俺の後ろに恋人は居ないがそう呼ばれてるのは俺だな」

「え?いないの?」

 

 シルバーブロンドの髪を揺らしてそう口にしたのは俺の肩に自分の肘を置き揺らしてマッサージしているこの国の王女様であるラブ・ベッドだ。普通に揉むのに飽きたのかいろいろな揉みかたを俺の身体で試している最中だ。


「あ」


 ラブの肘が俺の肩にあるため、ラブが発する言葉が首筋に直撃し俺の息が漏れる。その俺の反応が楽しかったのかラブが続けて俺の首筋に息を吹きかけてきた。


「ふぅ」

「い」

「ふぅふぅ」

「う」

「ふっ」

「え」

「ふっふっ」

「お」 

「ふふふ」

「…まだ続けるきかい?」

 

 か行まで続きそうな行為を勇者が呆れた声で遮ってきた。俺としては恋人同士がするような甘い体験を疑似てきに体験できて嬉しかった。何故疑似てきなのかはこのラブ王女様はきっと今の行為も王族の務めとしか思ってないだろうからな。


「すまない、それで?用事はなんだ?勇者様」

「いや、用事と言うほどのことはないんだが、一度この学園で僕を差し置いて一番有名なキミを見ておきたくてな」

「一番有名?そうか?自覚ないんだが?」

「…膝に子供を座らせ貴族の女性の脚を揉み王女に肩を揉ませていて自覚が無いとは恐れ入った」

 

 たしかに字面だけだと凄いことだが全部自分からどうこうしたというのが俺には無い。いつの間にか勝手にこうなっていただけだしな。それに本来の目的であるこの学園の半数の女性達はこの俺と勇者のやり取りを周りで見ながら口々に囁やきあっている。


「ねぇ今度は勇者様をたぶらかすおつもりよ」

「本当にねぇ」

「学園の二大アイドルを二人とも独占しようとしているわ…死んでしまえばよろしいのに…」

 

 俺の本来の目的達よ…


「たしかにこの状況は見る人が見たら変かもしれないが」

「あ」


 俺がしている脚のマッサージに感じるものがあったのか貴族の令嬢の声が漏れた。


「ここか?」

「い」

「ここも?」

「う」

「ここで?」

「え」

「ここだ!」

「お」

「ここから」

「…まだ続けるつもりかい?」

「す、すまん」


 先ほどとは違い、少しドスの効いた声がして俺は正気を取り戻した。最近気づいたが貴族の令嬢の脚をマッサージしている時、理性が飛ぶな俺は、当たり前か、こんな美人な女性の脚を揉むなんて考えられなかったからな。そう思いながら頬を赤らめ上の空でいる貴族の令嬢の顔を見ていたら、俺の膝に乗っているリータが頬を膨らましていた。


「ん、どうした?」


 リータの頭を撫でてやると、リータが空っぽのスプーンを自分の口に差し入れた。そして、スプーンを取り出すと空っぽのスプーンを俺の口元に持ってくる。この前の儀式の逆バージョンだと悟った俺はそのスプーンを躊躇なく口にふくんだ。それを見てリータは満面の笑みを浮かべ残っていたシチューを食べ始めた。


「これで自覚がないのか…」

「ん?」


 呆れたように呟くと勇者は食堂から出ていった。


 後日、俺が渡り廊下を一人で歩いていたら前から勇者も歩いてきた。その勇者に俺はひと言、声をかけた。


「なぁ、お前が女なのはやっぱり内緒なのか?」

 俺の言葉に勇者は酷く動揺した。勇者が女性なのは俺のチート能力ですぐに分かった。能力が勇者にまったく反応していなかったからだ。


「な、な、な、なんでそれを、どうして、どうやって、いや、まずは口封じを、いや、ダメだ、王子の後の恋人は殺れない…わかった…俺もハーレムに加わる!それが望みなんだろ!」


 意味不明な解釈をし意味不明な解答を勇者が導き出した。


 後日、勇者が食堂で俺の左横に座り俺の左太腿をつ

ねっていた。


 女性心理ソノ六

 女性は好意のある男性の太腿を触ったりつねる


 だがさすがにこの行為が当てはまらないとわかる俺は勇者に告白はしなかった。


 そして、周りから冷ややかな声が聞こえる。


「やっぱり勇者様も手籠めにしたわよ」


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