王女にモテない!
「あなたが弟の後ろの恋人?」
不愉快な二つ名が聞こえ、俺は後ろを振り向く。シルバーブロンドの髪で、綺羅びやかなドレスが目にはいる。推察なんか必要ない王女様がそこにはいた。俺が返事に躊躇していると。
「…わたしを出迎えるにはあんまりな格好ね…」
王女様の目が怪訝そうに曇る。それもそのはず、俺の格好といえば、太腿にはリータを乗せ、片足は貴族のお嬢様に踏まれていた。お嬢様はだいっきらい、と言ったあの日以降も俺の足を貴族の務めですっ、と言い、踏み続けている。この国の貴族は人の足を踏むのが務めらしい、この国大丈夫か?この誰が見ても異様な光景を王女様に指摘された俺は。
「太腿に座っている子は俺が保護している子で、足を踏まれているのはこの国の貴族の務めだそうだ」
「貴族の務め?そうなの?」
王女様にそう問われても足を踏むのを止めない貴族のお嬢様が答える。
「はい、貴族のお務めですわ、ラブ・ベッド様」
…いま、なんて言った?ラブ・ベッド?
「そっか、お務めご苦労様」
…この王女、貴族のお務めがなんなのか、知らないな?いや、それよりもラブ・ベッドのほうだ。ラブホのベッドの事だよな?なんて名前を付けやがるこの国の王様は、いや、こんな貴族がいる国だしな。俺は足を踏み続けている貴族のお嬢様をチラッと見た。
「なんですの?」
貴族のお嬢様が俺の視線に気づきそう言ってきた。
「足を踏み続けるのは楽しいか?」
前々から気になっていた事を聞いてみる。
「楽しいですわよ、貴族の務めを果たしている達成感に身が震えていますわ」
男の足を踏む事で得られる達成感って…
「わたしも王族の務めを果たさなくっちゃ」
イキナリ決心に満ちた声を張り上げたあと、王女様は俺の肩や腕を触り始めた。王女の指先を肩や腕に感じる。これはもしかして今、俺は王女にモテている?
女性心理ソノ五
女性は気になる男性の肩や腕を触る
「ラブ、俺と付き合ってくれ!」
「不敬よ」
モテてなかった。
「ん~~分からないわね」
俺の肩や背中を指先でなぞる様に這わせながらラブ・ベッド王女様の困惑な声が聞こえた。
「なにがだ?」
振られたことをおくびにも出さず俺は答える。伊達に102回も振られていない。除夜の鐘がつき終わるまでには俺もモテタイ。
「弟の後ろの恋人よ、あなたの後ろにあるんでしょ?」
…肩や背中じゃなくて…もっと下だ。
「なにが弟の恋人なのか王族の兄弟なのだから調べなくっちゃいけないでしょ?これこそあたしの王族の義務だと発見したのよ!」
その王女様の決心に俺は返事ができないまま昼食時の宿堂で他の学生が食事をしている中、太腿に少女を乗せ、足をお嬢様に踏まれ、背中を王女様になぞられるという謎な時間だけが過ぎていった。




