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貴族にモテない!

 食堂でリータを太腿に乗せながら食事をしていたら貴族の少女が話しかけてきた。


「貴方ですの、王子様の後ろの恋人という方は」

「…誰だ…そんな不愉快な二つ名を付けたのは?」

「王子様御本人です、「貴方の後ろは僕の物だー」と吹聴してますわよ」

「…アイツ…いつか殺してやる…後ろから刺して…いや、前から刺してやる。」


 そんな話しをしている横でリータがシチューを鼻に付けていた。俺は布を手に取り鼻に付いたシチューを拭いてやる。リータが嬉しそうに俺の胸に顔をスリスリしてきた、その頭を撫でてやる。そのやり取りを見ていた貴族のお嬢様が俺の足の甲を自分の靴で踏んづけながら言って来た。


「貴族の私を放ったらかして、良い御身分ですこと」


 俺はその高飛車な言い草など気にもとめず貴族のお嬢様の足を見ていた。


 女性心理ソノ四

 女性は気になる男性の足を踏むもの


「俺と付き合ってくれ」

「はい…?…脈絡が微塵もございませんことよ?」

「俺の足を踏んでいるだろ?」

「貴方は足を踏まれたら、踏んだ相手とお付き合いするのですか?」

「そうだ」

「…変態…ですわね…王子様とお似合いですわ」


 あまりにもな言葉吐き捨て、貴族のお嬢様は何処かに行ってしまった。そして、何故かリータがふくれっ面をしながら俺の足の甲の上に自分の両足を乗せて、立ってこっちを見ていた。なにか怒ってるのか?


「リータは軽いから、好きなだけ乗って良いぞ」


 リータの機嫌をとるかのように、俺は微笑みかけて言ったが、リータは欲しかった言葉じゃなかったのか、ふくれっ面は暫く解除されなかった。


 翌日、俺の足はまたしても貴族のお嬢様に踏まれていた。


「おい、足を踏まないと会話ができないのか?お前は?」

「仕方ありませんわ、弱小貴族ですもの」

「…脈絡がまったくないんだが?弱小貴族と俺の足にどんなつながりあるんだ?」

「そをなことより、わたくし足を踏んでますわよ?」

「踏んでるな」

「何か言う事は御座いませんの?」

「…踏んでるな」


 俺がそう言うと貴族のお嬢様は苦虫噛み潰したような表情をして。


「もう、いいですわ!」


 それだけ言うとサッと立ち去って行ってしまった。


「なんだったんだ?」


 俺は困惑しながら、胸元で顔を押し付けてスリスリしているリータの頭を撫でた。


 その日から1週間毎日俺の足を踏んでは帰る、貴族のお嬢様がいた。


「貴方おかしいのではなくて?」


 毎日俺の足を踏んでは帰る女に言われたくない、と思いながらも貴族には逆らうまいと黙って聞いていた。


「わたくしが毎日こうして足を踏んで上げてますのに」

「…俺がおかしいのか?自分の言ってることのほうを思ったほうがいいぞ?」

「わたくしは弱小貴族としての務めを果たしているに過ぎませんわ」


 …弱小貴族とは他人の足を踏むことが務めなのか?いや、これは異世界の比喩なのか?足踏むというのは足を引っ張る的な意味のことなのか?だとしたら…


「弱小貴族はクズだな」


 思わず口に出してしまった。俺の言葉を聞いた貴族のお嬢様は顔を真っ赤にして。


「わたくし貴方のこと、だいっきらい!ですわ!」


 貴族のお嬢様は俺の足を力任せに踏んだのち颯爽と帰って行ってしまった。その後ろ姿を見送りながら。


「俺は貴族にモテないな」


 半数の殺意が籠った視線の中、そんなつぶやきが俺の口から出た。


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