学園でモテない!
異世界に飛ばされた俺が初めて目にしたのは、金髪で金色の瞳をした美青年だった。
「君は…」
美青年はイキナリ目の前に現れた俺を見るなり、そう言うと座り込んでいる俺の口にキスをした。
女性にモテたくて異世界に来たのに男にイキナリ、キスをされて俺の頭は真っ白になった。そんな俺達の後方から悲痛に満ちた絶叫が響き渡った。
「いや~〜ベル様が~~!」
「あの方は誰ですか〜!」
「え、衛兵を呼んで直ぐに始末しなくては!」
「お、汚物は消毒!」
そんな心無い言葉が俺のモテたかった女性達から聞こえてきた。その原因を作ったベル様と呼ばれていた美青年が自分の口元を手で隠しながら動揺して俺に言って来た。
「こ、これは、し、親愛のあ、挨拶のようなもので…」
動揺した美青年がトンデモないこと言い始めた。まず初めてあった同性の男にキスをする親愛の挨拶ってなんだ?そんな事がまかり通る異世界に俺を飛ばしたのかあの女神は!
「そんな挨拶あったかしら?」
後方に居た一人の女性がそう言うと。
「そ、それはそうと君はどこから来たのかな?イキナリ現れたように見えたけど」
誤魔化すかのように俺にそう聞いてきた美青年に俺は素直に転生して来たと打ち明けた。まぁ、言い訳を考えるのが面倒なだけだったが。
「ほう、女神様がそうかそうか、それならわが国で君を保護しなくてはな、僕はベル・ベッド、このベッド・デ・ネール王国の第一王子だ」
いま、保護のところで目が輝かなかったか?この王子は?
「君を僕の親友兼客人としてもてなそう、今日からこの学園の宿舎に住むといい」
…いつ親友になったのだ?キスか?キスの時か?それは親友と呼べる間柄か?そんな俺の疑問に回答が得られないまま時が過ぎていった。
俺は案内をされた部屋の前で立ち止まって震えていた、あまりにも豪華だったからだ。
「これは誰の部屋だ?」
「ん?僕の部屋だが?」
キョトンとした表情で当たり前かのように王子の金髪の美青年が言ってくる。
「なんでお前の部屋に案内されてるんだ俺は?」
「保護すると言っただろ?」
「お前の部屋にか?」
「客人を接待するのは王族の務めだからな」
どこの世界に客人を自分の部屋に泊める接待があるのか。だが異世界ではそれが一般的なのかも知れない、と、思いながら俺は後ろに居たメイドさんの顔を見てみると頭を左右に振っていた。
「ベッドが一つしかないんだが?」
中に入って最初に出た言葉がそれだった。部屋の真ん中にバカでかいベッドが置いてある。
「そうだな」
王子が視線を横にそらしながら言った。
「俺はどこで寝ればいいのだ?」
「そこで」
王子がベッドを指差す。
「お前と一緒にか?」
「当たり前だろ、親友とは一緒に寝るものだぞ?」
それは本当に親友か?穴がもうつながっていないか?そう思いながら後ろのメイドさんを見てみると頭を先ほどと同じように左右に振っていた。
俺の住む部屋は王子の部屋からだいぶ離れた所にされた。王子の暴走を止めてくれたメイドさんの計らいだ。
それからちょうど昼食の時間らしく俺は大食堂に来ていた。食堂の中に入った瞬間、中に居た百名近い視線が俺に注がれる。
「う」
視線の半分半分が、片方殺意、片方好意と見事に分かれていた。そして殺意の方は俺がこの異世界に来た目的の人達からだったのは言うまでもないことだろう。
「なぜだ?なぜこうなった?」
俺が思案を巡らせていると視界の端でクソみたいな事が行われていた。すぐさま歩き出し、俺は小さな女の子の頭にシチューをかけていた貴族らしい格好の少女の手を掴んだ。
「やめろ…」
怒りを抑えた静かな声に貴族の少女は少し怯えながら反論してくる。
「な、なによ…貴方に関係ないでしょ」
「関係はある、俺がこの行為を許せないからだ、俺が許せないなら…俺にも関係があるだろ?」
最後の言葉を怒りを隠さずに言うと貴族の少女は怯えながら逃げて行った。
「大丈夫か?着替えたほうがいいんじゃないか?」
イジメられて震えている小さな少女に俺は声を掛けた。
「…き、着替え、な、ないです、家が、び、貧乏で」
「そうか」
俺は着ていた自分のローブを小さな少女に掛けて上げた。部屋に置いてあったローブだ。小さな少女は嬉しそうに俺のほうに笑いかけて言った。
「あ、ありがとう」
それからいろいろな話を二人でした。名前はロ・リータということや、家は小さな商家をやっていて借金があって経営が苦しこと、この学園には奨学金で入ったことなど。
「リータは家に帰って働きたいのか」
ロは言わないでおいた、なんとなくだなんとなく
「う、うん、でもお父さんが俺がなんとかする、お前は貴族でも捕まえて幸せになれって、でもいつもイジメられてばかり…」
「イジメは俺がいるかぎり二度とさせないから、大丈夫でかい後ろ盾が俺にはいるからな」
できれば後ろに立って欲しくない後ろ盾がな。
「ふふ、王子様でしょ?凄いね王子様に好かれるなんて自慢できるね」
「ああ、後ろに立たなければな」
「後ろ?王子様が?どうして?」
「リータは知らなくて良い世界だ、それより実家の商家の事で力になれることがるんだが」
「ほ、本当に?ど、どんな事?」
俺は記憶にある現代の知識を紙に書いてリータに渡して上げた。ソレを受け取って見たリータが目を輝かせて言った。
「あ、ありがとう。凄い凄いこれに書いてある事のほとんどが秘蔵のことばかり、1個でも知ったら大商人なれるのにこんなに…本当にありがとう」
リータは泣きながら、俺が渡した紙を大事そうに胸に抱えていた。
それから、ひと月が過ぎた頃、実家が大商人になったリータが宿堂に座って居る俺の太腿の上に腰掛けて、美味しそうにシチューを飲んでいた。リータが落ちないように手で腰を支えてあげながら、俺は思っていた。
女性心理ソノ三
男の太腿に座ってくる女性には脈がある
だがそれは女性に対してあてはまる、小学生の歳であろうリータにはあてはまらないと。
そして、宿堂を見渡すと半数の殺意が籠った視線を俺は感じていた。
「はぁ、学園でも俺はモテないな」




