車検
第3話 車検
転生してからというもの、てつや――いや、今はアルトワークスとなった彼は、車庫で静かに過ごしていた。しかし、ある日、人間だった頃の記憶がふと蘇る。「そういえば、車って定期的に車検があるんだったなぁ……」
そんなとき、オーナーのヒロシが工具箱を手に車庫へ現れた。「よし、今日はお前の車検の日だぞ。しっかり頼むぞ、アルトワークス!」と声をかける。
てつやは(いや、俺も人間のときは車検とか面倒くさくて嫌いだったんだよなぁ……。まさか自分が受ける立場になるとは)と心の中でぼやく。
ヒロシはボンネットを開け、エンジンオイルやバッテリー、ブレーキパッドをひとつひとつ丁寧に点検していく。普段は気にもしなかった部品のひとつひとつが、今は自分の「身体」だと思うと、不思議な気持ちになるてつや。
「お、意外と調子いいじゃねぇか。さすがアルトワークス!」とヒロシが嬉しそうにつぶやくと、てつやはなんとなく誇らしい気分になった。
整備が終わり、ヒロシが車庫からアルトワークスを外に出す。てつやは久しぶりの外の空気と、太陽の光を浴びて、どこかスッキリとした気分になる。「車検って悪くないかもな」と、少しだけ思った。
――こうしててつやの新たな日常が、またひとつ進むのであった。