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第1話

初めまして、作者の久留間猫次郎です。

この物語は、「奈良」という日本最古の歴史の地を舞台に、

一人の青年が“過去と未来”を超えて戦う姿を描いた考古ファンタジーです。


奈良県民の皆様には最初に全力で謝っておきます。 描写テキトーですいませんでした。


このお話は、派手な魔法も、ドラゴンも出てきません。

出てくるのは、埴輪兵と古代超技術と、地味だけど熱い覚悟。


もし、あなたの心に「歴史って、ちょっとロマンかも」と思える一瞬が生まれたなら、

それだけで、書いた甲斐がありました。


どうぞ、楽しんでください!

 ――初夏。 セミの声がじりじりと空気を焼き、古都・奈良の地面からは、数千年分の記憶が蒸し返される。 俺は、誰が見ても“ただの青年”だった。 ボサッとした黒髪に、掴みどころのない眠たげな目。細身の身体は少し猫背気味で、着ているシャツはシワだらけ。けれど――妙に、目が離せなかった。 言葉少なで、いつもどこか遠くを見ているような横顔。 無関心を装いながらも、誰かのピンチにはさりげなく手を差し伸べる。 その優しさは押しつけがましくもなく、むしろ本人がそれを「特別だ」と思っていないことが、逆に人の心を揺らした。 地味。平凡。その他大勢。 けれど、彼の隣に立った者は皆、なぜか忘れられなくなる。 それは、世界を変えるかもしれない運命にある男の、あまりに控えめな顔だった。 


 *** 


 俺の名前は、長屋総一郎ながや・そういちろう。二十七歳。 大学院まで出た考古学者の卵……というか、殻すら破れていない。 就職活動はなぜか意味不明の不運で惨敗続き。いまは母校で非常勤講師をやりながら、発掘現場のバイトで食いつないでいる。 天涯孤独の身の上だが、別に不幸な人生ってわけじゃない。 ただ、なんというか――ぱっとしない。 小中高大と、特に目立たず、人に迷惑をかけず、それなりに頑張ってきた。 けれど「それなり」にしか、なれなかった。 女っ気もない。 性格は優しいってよく言われるし、顔も悪くはないらしい。だけど、自信が持てない。どうせ俺なんかって、つい心のどこかで思ってしまう。 恋も、夢も、あと一歩のところで引いてしまう。 


 それでも――ひとつだけ、譲れないものがある。 シルクロードへの憧れだ。 中学の頃、テレビの特集番組で見た。 果てしない砂漠と、蜃気楼のように浮かぶ遺跡。その中に、ひときわ美しいミイラの紹介があった。 楼蘭の美女――あの伝説のミイラ。 その神秘的な微笑みを見た瞬間、俺の心は灼かれた。 歴史と時間の壁を越えて、俺は彼女に恋をしたんだ。 いつか自分の手で、誰も知らない遺跡を掘り当てる。 歴史の中で埋もれた誰かを探す。 あの微笑みに、もう一度出会う。 それが、俺の人生で唯一、確かに“熱くなれる夢”だった。


 *** 


 ……そんなことを思い出しながら、今日も俺は、発掘現場の片隅でスコップを握っている。 ここは奈良。 千年以上前の人々の息づかいが、いまだ眠る街。 今は、どこにでもあるような普通の午後。 ――だけどこの日。 俺の耳に、誰かの“声”が届いた。


「――我が力を欲するか?」


 最初は幻聴かと思った。 だけど、それは確かに俺に向けられていた。 発掘現場の帰り道、俺はふと足を止めた。 いつも通っている古墳群の裏手――地元でも詳細不明とされている、登録もされていない“小さな円墳”があった。 フェンスもなければ、調査の看板も出ていない。 名前すら知られていない、まるで忘れられた墓。 だけどこの日、なぜか俺はその古墳の斜面を登っていた。 理由はわからない。ただ、何かに呼ばれた気がした。


「――我が力を欲するか?」


 まただ。 あの“声”が、俺の脳に直接響いた。 気味が悪い。でも、怖さよりも知的好奇心が勝った。 幸い、発掘用の小型スコップもブラシも持っていた。 俺は斜面のくぼみに手を伸ばし、土を払いはじめた。 数分後、何かが“そこ”にあった。 見えないのに、確かに触れる。目には映らないのに、手のひらに重みと冷たさがあった。 大きさは、手のひらに収まる程度。ルービックキューブより少し大きいか?


「これは……何だ?」


 掘り出したのは“無”だった。いや、“無のような何か”だ。 形があるのに、視覚をすり抜ける。存在しているのに、認識できない。


「――欲するか?」


 声が、さらに明瞭になった。 俺は思わずつぶやいた。


「……欲しい。うだつの上がらない人生を変えられるなら……ただ、魂を差し出せ! とか三つの願いだけだぞとか、そういうのは勘弁してくれよな?」 


 口にした瞬間、見えない“それ”が俺の手の中で震え、ぐにゃりと形を変えた気がした。 まるで俺の意志を読み取って、応えるように——


「取引ではない。我が力は、選ばれし者に“共鳴”する。」


 声が再び脳内に響く。そして同時に、何かが俺の身体の奥底に、ぐぐっと沈み込んでくる感覚。 痛くもないのに、叫び出したくなるような異質感。身体の奥に“別の自分”が侵入してくるような……


「——ッ!!」


 直後、世界が“軋んだ”。 透明だった何かが、じわりと輪郭を持ち始めた。 視界に浮かぶそれは、細長く、鋭く、幾つもの突起が左右に伸びた独特の形状――。


「……七支刀しちしとう?」


 俺の脳裏に、教科書で見た写真がフラッシュバックする。 国宝七支刀は、石上神宮に伝わる、左右に枝刃が3本ずつ付いた鉄製の剣だ。  長さは80センチ弱ある。 不可視の物体は、俺の記憶から“理想の武器”を読み取り、その姿を変化させたのだ。 まるでそれは、俺の願望の象徴。 触れてしまった、運命の鍵。 俺は、七支刀のように姿を変えたそれを呆然と見つめていた。


「ヤバい……これ、このまま持ち帰ったら、銃刀法違反……」


 ビビる俺に、脳内にまたあの声が響く。 『落ち着け。わし、ちいさくなれるぞ。持ち運びサイズでな。』 目の前で、七支刀は音もなく――するんと手のひらサイズに縮んだ。 まるでキーホルダーみたいに可愛いサイズ感だが、質量と存在感はそのまま残ってる。 俺は素早くそれをバッグにしまい、古墳の斜面をダッシュで駆け下りた。 


 *** 


 家に帰ると、呼吸を整えながら慎重にそれを取り出す。 そして、俺の安アパートにある――なんちゃって神棚の、安物の御札と招き猫の横に、そっとそれを置いた。 今の俺には、何が起きているのかは分からない。 ただ、直感で確信していた。


「お前……なんなんだよ?」


「我か? 人は我を色々呼ぶな。オリハルコン、賢者の石、ミスリル……ここでは“ヒヒイロカネ”とかな。 ……だがそのどれも、我の欠片に過ぎぬ。 」


(は? オリハルコン? 賢者の石? いきなり厨二病全開だな……) 


その声は、落ち着いた響きでありながら、どこか子供のような無邪気さも混じっていた。


「……つまり、知性を持つ金属ってことか?」


「金属“だった”時代もあった。だが今の我は、“記憶”そのものと言える。」


(記憶……? なんだそれ、オーパーツってレベルじゃねぇぞ) 


“それ”はお構いなしに、さらに続けた。


「我は文明が興るたびに、誰かに拾われ、力を与え、破滅ももたらしてきた。」


(あーもう、なんかヤバいやつ拾っちゃった気がする……)


「だが……お前は違うな。お前は、欲望よりも“意志”で我を掴んだ。」


(褒められてんのか、ディスられてんのか、どっちだこれ) 


 ヤバい。 これはもうただのオーパーツじゃない。 完全に、喋る、意思持ち、文明に干渉してきた謎存在。 しかも今、その所有者が俺——長屋総一郎になっちまってる。 この出会いが、俺の人生を変える。 とんでもない何かが始まる。 この瞬間、俺の人生は“戦士”へと変わった。 始まったのは、遥か古代から続く物語――血と涙と愛の、超越的な戦いだった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
静かな情熱を秘めた考古ファンタジーの幕開けに心が躍ります。主人公・総一郎の冴えない日常から一転、奈良の忘れられた古墳での不思議な邂逅――七支刀を模した謎の存在との出会いが、現実と神話の境界線を揺るがし…
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