(1)――ここには俺と死体達しかいない。
【語り部:陜ィ�ィ雎趣ソス陜ィ�ィ陷�スヲ】
境界線が、曖昧になる。
白黒はっきりしていたものが、あやふやになっていく。
これじゃあ、表も裏もあったものじゃない。
ぐずぐずに融けて、混ざり、濁っていく。
【語り部:五味空気】
死体の山を背に、俺は意識を浮上させる。
二月の深夜。肺が凍ってしまいそうなほどの冷え込みだった。
ここには俺と死体達しかいない。しばらく待ってみたけれど、誰も来る気配はなかった。
「今回も外れだったか。ざーんねん、張り切ったんだけどなあ」
どこからか、楽しげな男の声がした。
「そろそろだと思ったんだけどなあ。あちらさんは、まだあの子を使う気がないみたいだねえ」
自分が何処にいるのかすらわからない真っ暗闇なのだ、きっと近くに誰かいるのだろう。周囲を警戒していたつもりだったが、どうやら見落としていたらしい。
「さて、それならもうお前が生きてる意味はないな。さっさと死ね」
死ねと言われて、誰がはいそうですかと死ぬと言うのだろう。ふざけるな。
しかし、まるでその言葉を合図にしていたかのように、死体だと思っていたひとつが起き上がる。撃ち漏らしがいたのだ――いや違う、撃ち漏らしたのではなく、敢えて一人残していたのだ。
けれど、なんの為に?
「決まってんだろ、このときの為だよ」
起き上がったそいつは、なにやら恨みの籠もった文言を呻きながら、落ちていた拳銃を手に取り、俺に向かって発砲する。俺の身体は、誰かに取り押さえられたかのように、微動だにしない。
下手な鉄砲数撃ちゃ当たる。
見事に一発が俺の心臓を貫通した。
破れた心臓から血液が漏れだし、やがて俺は息絶える。
夢の中で微睡んでいたような儚い「今日」は、そうして終わりを迎えた。
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