短い幕間
トモカズ君がさおり様に稽古をつけている
さおり様は汗だくだ
手にしているのは?バットではない
木刀である
「どうですか、ヨシザワさん。いや、師匠。彼女、少しは上達しました?」
ヨシザワさんがすっと手を伸ばし
木刀を受け取る
その木刀を
さおり様に手渡した
そして
さおり様の前に立ちはだかる
「どうぞ斬ってください」
さおり様がトモカズ君にいぶかしげな顔を
向ける
「斬ってください、私を。一刀でも二刀でもかまいません。私を斬るのです」
トモカズ君がじっと目をこらしている
さおり様が木刀を一本捨てた
残り一本をすっと頭上に振り上げる
示現流トンボの構え!
しかし、この間合いでは斬れない
一歩踏み込まなければ
しかし、踏み込んだ瞬間
何が起こる?
何かが起こる?
さおり様は動けない
気を集中しているようだが
木刀を握る手に力がこもる
額に汗が滴る
一歩
一歩踏み込まなければ!
「私はヨシザワではありません」
「邪念を除くのです」
「目の前の相手を斬る!それがすべてです!」
「斬らなければ斬られる!斬られる前に斬るのです!先に斬るのです!躊躇は命取りです!考える前に斬るのです!気で斬るのです!!」
さおり様がゆっくりと木刀を下ろした
呼吸が荒い
全身が汗みずくである
こんな修行を何日続けているのか?
そして
その心中は?
第六話に続く。