果たし状
控室が急に手狭になった
誰が何を言えばいいのか
最初に口火を切ったのは意外にも空き缶おじさんだった
「ミホ、久しぶり」
「え?」
ミホちゃんがお母さん(?名前はまだない…のくだりはもうやめよう)の顔を見る
お母さんはむしろおじさんの顔を見て笑っている
「覚えてるわけないでしょ。この子が産まれたときお祝いに来てくれたきりなんだから」
今度はミホちゃんに顔を向け
「あのね、この人はカズユキさんて言うんだけど、あたしの兄貴なの。お母さんのお兄さんだから、あなたから見たらオジサンてことね」
なあんだ ホントのオジサンだったのか
「この子はレナちゃん。カズユキおじさんの子よ」
「はじめまして」
ミホちゃんがレナちゃんにあいさつしてる
微笑ましい
「もしかして、お母さんが再婚したと思っちゃった?」
「あの時、急にいなくなっちゃったから。お父さんは何にも教えてくれないし」
「ミホが眠ってる間に出てっちゃったからね。二人とも酔ってたし、売り言葉に買い言葉、てやつね」
「じゃ、ホントはリコンしてないの?」
なあんだ、 は不謹慎かな?
「うん、だからアタマ冷えたらウチに戻ればよかったんだけどさあ、ほら、お母さん、意地っぱりじゃん。自分で言ってりゃ世話ないけどさ」
ホホ、と一応口を隠して笑う
我々がいなかったらそーでもないんだろうなあ、と感じる
「で、行くとこなくて、とりあえずパチンコ屋入ったんだけど、お金ないしルールも分かんないし、出る台探してるふりして時間つぶしてたらさあ」
「そこにカズユキおじさんがたまたま入って来たんでしょ?この小説、強引だもんね」
ミホちゃんまで巻き込まれなくていいから!
「だって、面白ければいいんでしょ?要は」
女神様、よけいなこと言うな!炎上するだろ!
「マンガなんてみんなそうじゃん」
炎上決定。
「どうせなら、転生したら神様になってた件 にすればよかったね、タイトル」
うるさい もうツッコんでやらん
「で、今はカズユキおじさんの市営住宅に住まわせてもらってんだけどさ」
ミホのお母さんはひるまない
「今の、ナントカロハンは動かない のパクリでしょ?」
ツッコんでやらん、つっただろ!
「いや、オレも女手あると助かるしさ」
「すぐレナちゃんほったらかしてどっか行っちゃうもんね」
「世間からは夫婦と思われてたかもな」
「あたしとしてはさ、レナちゃんが可愛くてさ」
姪だもんな
「レナちゃん見てるとあんたの小さい頃思い出したりしてさ」
なるほどね
「あんたも年頃だし、てもあたし自身は顔出しにくいから、おじさんにそれとなく様子見て知らせてくれ、って頼んでたんだよ。ごめんなさい、他人様の前でこんな話して」
それであちこちで出くわしてたのか
「それじゃあ、いい機会じゃないですか!他人のボクが口はさんで悪いですけど、雨降って地固まるって言うんですか?ケガの功名かな?ひょうたんから駒?」
合ってるような合ってないような。
ユウキ君、問題を複雑にしないでくれ
その時
どこからともなく現れたのは
ヨシザワさん!?
「皆様、お取り込み中のところ、大変失礼いたします」
ユウキが目を丸くする
「つけて来たんですか!?」
「いいえ、尾行などはいたしませんが、スタッフは大勢おりますので」
背広の内ポケットから何か取り出した
「これをさおり様からことづかって参りました」
そう言ってミホちゃんに直接手渡す
ミホちゃんが封筒に目を走らせる
「果たし状!?」
目をまん丸くして封筒をひっくり返すと
「さおり」の署名が。
「何それ」
ミホちゃんが目を通す前にお母さんがひったくってしまった
目を走らせると
「ふーん、失礼な内容だけど、要するに三角関係なのね、あんたたち」
ミホちゃんとユウキを交互に見やる
ユウキは硬直している
「カズユキさんから聞いたけど、このさゆりって子、あんたに打ち取られたんでしょ?その腹いせに再勝負とか言ってるけど、要するに恋愛問題でしょ?」
ズケズケ言うオバさんである
「やんなさい、やんなさい。勝ったって負けたっていいのよ。どうせ決めるのは男性なんだから。このさゆりって子、分かってないよね」
そうかなあ
もっと真剣な話ではないのかなあ
「これを断ったって、なんだかんだまた因縁つけて来るんだから。早いとこけりつけちゃいなさい!」
そう言い捨ててからユウキに
「ケイリン選手ってもうかるんでしょ?」
なんだこのオバハン!
「では、お引き受け頂けたということで。おっしゃったように申し伝えます」
ヨシザワさんは無表情で去っていった 続く。