まぶたの母
とある病院。
ベッドに横たわっているのはミホちゃんのお父さん(そう言えば名前はまだない)だ
若い医師が説教している
「もう、お酒はおやめになることですね。命に関わりますよ、本当に!」
「そのう、いわゆる急性アルコール中毒ということですか?」
「いや、専門的にはちょっと違うんですがね。人間の身体はアルカリ性に多少傾いている方が好ましいのですがね。酸性とアルカリ性はご存じでしょう?」
「まあ、常識程度には」
「で、アルコール摂取すると、人体は酸性に傾く性質があるのです。アルコール摂取しただけで」
「はあ、そうなんですか」
「そして、あまりに急激に酸性に傾くと、人間はそれだけで死んじゃうんですよ!あまり知られてないと思いますけどね」
「そうなんですか」
まあ、素人にそんな説明されても相づちの打ちようもないだろうな
とか思っていると
検査結果なのか?医師が何か見て
「そうですね、もう一本点滴打てば大丈夫でしょう。もうすぐお身内の方も見えると思いますよ」
「娘…ですか?」
「直接連絡取ったのはスタッフなのでボクは分からないですけど。無断で失礼でしたけど、手帳拝見して連絡したようです」
「ああ、競馬手帳ですね。いつも持ってるから」
苦笑いするお父さん
医師も微苦笑して去っていった
場所が変わって待合室だ
ただの飲み過ぎ、飲み過ぎて道端に倒れただけ
という病院の説明を聞いて我々はちょっとホッとしていたのだが
「お父さん、こういうのしょっちゅうなんですよ。警察にもしょっちゅう保護されるし。心配かけてごめんなさい」
ミホちゃんがあやまる筋合いないけどなあ
「お父さん、お金あると、あるだけ飲んじゃうから。ふだんはお金ないから家飲みなんですけど。たぶんミホノソヨカゼでもうかっちゃったのかなあ。ソヨカゼ、もっと負ければよかったのかなあ」
。それはないだろう
ミホちゃんしょんぼりするなよ
ソヨカゼがかわいそうだよ
「ん?」
一同の耳に誰かが階段を駆け上がって来る足音
ひとりではないようだが?
駆け上がったところで息を切らしているが
「お母さん!?」
ミホちゃんが長椅子から跳び上がった
お母さん??
我々も跳び上がった
お母さん?らしき女性はバツの悪そうな顔で息を切らしているのだが
その横に立っているのは
私と女神様は顔を見合わせた
横に立っているのは
あの
例の
空き缶おじさんではないか??
しかも?
小さな女の子を連れている??
続く!