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緊急事態

 ファミレスの帰り道である


 四人で駅に向かって歩いていると


 「ミホちゃんてさあ、勉強はどうなの?」


 女神様、そーゆー質問はミホちゃんに対して失礼ではないかい?

 そーゆー私もちょっと聞きたいけど


 「そうですねー、だいたい学年ヒトケタだから、悪くはないと思うんですケド」

 「ヒトケタ!?すごいじゃん!」


 感心したそばから


「一番じゃないの?」


 オイ、女神様!


 「一番は、やっぱり男の子ですね、だいたいいつもおんなじ子」

 「女の子が一番のときもあるの?』


 しつこいな

 でも、なぜか間があく


 「女の子が一番だったのは二度だけなんですけど」

 「なにそれ?もしかして?」

 「その二度はアタシです」

 

 はにかんでるような、誇らしいような。


 「えーっ、カッケーな!文武両道じゃん!」


 ユウキ君、ムズカシいコトバ知ってるではないか


 「すごいじゃん、それじゃ、将来はT大とか?」

 

 ミホちゃん、うつむいてしまった


 「あたしは、中学出たら働かないと。生活あるから」


 沈黙。


 「でも、高校は出といた方がよくない?」


 女神様がとりなすように言うが


 「中学までは義務教育ですけど、高校はお金かかりますからね。公立でも」


 そうだけどさ


 「そんだけアタマよかったらさ、奨学金とかないの?それか、ソフトボールもうまいから、スポーツ推薦とか」

 

 身を乗り出すようにユウキ君。


「そこまでではないですよ、あたしなんて」


 ユウキ先輩、ちょっと考えて


 「魔球特待は?」


 ユウキ君なりに笑ってみせるが


 「あれは、いちかばちかの球ですし。魔球

投げなくても普通にうまい子、いくらでもいると思いますよ」


 ユウキ君、イマイチだったな


 すると女神様が


 「どこかから白馬の王子様でも現れるといいのにね」


 言いたいことは分かるが


 ジャガイモの耳に念仏


 だと思うぞ 


 「じゃあ、ここで」


 駅に着いてしまった


 ユウキ王子様が乗ろうとしているのは白馬でなく

 駐輪場のチャリンコである


 「ひとりで大丈夫?」


 別れ際にコドモ扱いするなよ

 かわいそうだろ


 「ありがとうございます」


 ひと言答えて背中を向けようとしたミホちゃんのスマホが鳴った


 「もしもし?」


 メールではない

 音声通話だ


 「はい、はい…」


 なんか、様子がおかしい


 「わかりました…ありがとうございます」


 無言で立ちつくしている


 「どうしたの?」


 尋ねる女神様の声もただならない


 スマホを見つめるミホちゃん


「お父さんが道で倒れたそうです…それで救急車で…」

 

 ユウキの顔色が変わった


 「何病院!?病院はどこ!?」


 病院の名を聞くと


 「乗れ!!」


 ミホちゃんの手をわしづかみして

 強引に助手席へ

 

 問答無用!


 「その病院なら知ってます!バスより早い!」


 二人乗りの王子様が風を切る

 プロ競輪のスピードだ

 実際風圧がすごいのだろう

 ミホちゃんがユウキの背中に夢中でしがみつく

 

 「ミホちゃんの胸ってどんなかなあ」

 「この場面で変な下ネタ入れないでよ!」

 「精一杯の読者様サービスなのだ」

 「それどころじゃないでしょ!」


 確かにそれどころではない!

 続く! 

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