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旅人と吸血鬼  作者: うらにうむ
6/18

前話の夜のお話です。


「フィール!ねえ、フィールってば!!」


「ぐ、ぶっ…しと、らす…そこに、いるの?」


「いるよ!ほら、手、握ってるのわかる!?」


「…ほんと、だ…暖、かい…」


「もう全て終わったの!私達やったのよ!」


「あはは…やっぱり、やるなぁ…相棒として、鼻が高いよ…」


「いま、回復魔法をかけてるから…!大丈夫だから…!絶対に、死なせたりなんかしないんだから!」


「やめ、て…もう駄目だよ…シトラスもわかってるでしょ…?」


「そんなのやってみないと分からないじゃない!いいから黙ってて!」


「これは、呪いなんだよ…あいつの、全ての怨念が籠った、攻撃…傷が治っても、死んじゃう…」


「だから!死なせたりなんかしない!お願いだから、諦めないでよっ…!」


「シトラス…ううん、シュトラウス…僕は、君のことを愛してる」


「何を今更!私もよ!フィール、あなたのことが大好きよ!愛してる!」


「なら…最後に、キス…してくれるかしら…?」


「…っ!なん、で…最後なんて、言うのよ…!」


「最期…最期のお願いなんだ…」


きっと、回復魔法を止めたら彼女はすぐ死んでしまう。

でも、聖職者では無い私には解呪なんて出来ない…

しかもこんなに強い呪い、解呪できる人間はきっと居ない。

…無力な自分が情けなくて涙を流した。

私はフィールの頬に手を当て、口付けをした。


「フィール…愛してるよ…」


「………ふふっ…あたた……かい……」


「…フィール…ねえ、フィール…ねえ、ねえってば!フィール!私を置いていかないで!あなたが、いなければ…私は…!私はぁっ!」


***


「………はぁッ!!?」


息が苦しい。

心臓がうるさい。

涙が止まらない。

寂しい。

心が冷たい。

未だに、フィールが居ないことを信じられない。

信じたくない。


「はぁっ、はぁっ…!うぇっ…!げほっ、げほっ…!ふぃー、る…フィール…!」


彼女はもう居ない。居ないのだ。

そろそろ現実を見なければいけないのに…

震える体を抱きしめ、彼女の名を呟く。


「ふぃーるっ、フィールッ!」


「ちょ、ちょっと…大丈夫…?」


その声は、フィール…では無い。

こちらを見つめているアンナと目が合った。

その心配そうな顔を見て頭が冷えた。

そうだ、アンナがいたんだ…


「あ…ご、めん…起こし、ちゃった…」


「私のことはいいのよ。それよりもあなたの事の方が心配よ。どうしたの?怖い夢でも見たの?」


「あ、あはは…そんなとこ、かな…大丈夫だよ、心配しないで…」


「…」


じと〜っ、とこちらを睨むアンナ。


「ああ、もう…!こんなの、ガラじゃないんだけど!」


抱きしめられた。

背中をさすられ、頭を撫でられた。

小さくて柔らかいアンナが、体全体で私を慰めてくれている。


「あなたがどんな夢を見たのかは知らないけど、私だってこれくらいなら出来るわよ。いつもあなたに助けられてばっかりなんだし、少しくらい私を頼ってもいいのよ」


「あ…んな…」


「ほら、泣きたいなら泣きなさい」


「…ひっ、うぁ…ふぃー、るっ…!」


「…」


「もっと、一緒に居たかったよぉ…!」


そんな私を、アンナは何も言わずに撫で続けてくれた。


***


「すぅ…すぅ……ん、ぅ…」


あんなに強いと思っていたシトラスがこんなに泣くとは思わなかった。

しかも子供みたいに泣き疲れて寝るなんて。

泣いている時に呟いていた『フィール』という人が原因なの…?

誰だろう…そういえば、シトラスの過去なんて聞いたこと無かったな。

今度、聞いてみようかな…いや、ここまで泣くなら、聞かない方がいい事なのかも…?

…ま、気になるけどいいか。

シトラスが自分から言ってくれるのを待とう。


「おやすみ、シトラス」


「…ん…すぅ…」



「おはよ、アンナ」


「おはよ…もう大丈夫なの?」


「ん?なんの事?」


「…なんでもないわ」


昨日の夜のことを思い出して欲しくないのか、それとも本当に覚えていないのか…

朝のシトラスはいつも通りの笑顔だった。


***


後書きにこういうの書くってどうなんでしょうね。

それは置いといて、ほのぼの百合系作品のはずなのにシリアスというかちょ〜っと暗めな話を挟んですみません…

でもご安心を、次話からは百合要素増えてきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに短期間でまた泣き出すことになるとは誰が予想していましたか
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