お手伝い
「アンナはここで街の復興のお手伝いしてて」
「はぁ?なんで私が…」
「私の旅についてきたのはそっちだよ?」
「ぅ…わかったわよ…」
「うんうん、それじゃあ私はモンスター狩りに行ってくるね、ちゃんとお手伝いしてね?」
アンナの膨らんだ頬を指で押して空気を抜き、森の方に歩き出した。
街の青年たちも一緒だ。
「本当にあなただけで大丈夫なんですか?その…若いし、お世辞にも強そうには見えなくて…」
「安心して。これでも元冒険者で、有名だったんだよ?」
そう言うと、1人の青年が食いついた。
「そうなんですか!?お、俺、冒険者になるのが夢で…!冒険のお話、聞かせて貰ってもいいですか!?」
「うん、いいよ。どんな話が聞きたい?」
「やっぱり、強敵との戦いとか…!」
「おぉ〜、やっぱり男の子だねぇ。そうだなぁ、君たちが喜びそうな話と言ったら、ドラゴン討伐とか、かな?」
「「「!?」」」
おっ、みんな食いついた。
そりゃ、最上級のモンスターだし、冒険者の夢と言ったらドラゴン討伐だもんね。
「それじゃあ、話してあげよっか。あれはね…18歳の時だったかな」
***
「そこで相棒が…」
「キョェエエエエエ!!」
「ひっ!?す、すみません、話に夢中で…!既に奴らの巣のど真ん中です!」
みんなが武器や盾を構え始めた。
「なんだよもー、1番いいところなのに…。みんなは自分を守ることだけ考えてて。すぐに終わらせるから」
私は腰に差している刀を抜き、前に突き出した。
魔王軍が放った凶暴化モンスターの証である赤黒い瞳を持つキメラが5体。
私の気配を読み取って、総出で殺しに来たのだろう。
「…はッ!!」
***
「えっと、どこまで話したっけ…あ、そうそう。そこでフィールが…あり?どしたのみんな」
ぽかーん、と口を開け、積み重なったキメラの死体を眺める青年たち。
「す、すげぇ…」
「これが、元凄腕冒険者…」
キメラの死体は食用にもならないし、残しておいたらまた再生するからここで燃やしておこう。
魔法を唱え、高火力の火の玉をぶつけた。
「なぁ…俺、思ったんだけど…」
「だよな…俺も多分同じこと思ってる」
「シトラスさん…貴女まさか、勇者様では…?」
その場の全員の視線がこちらに向いた。
「あはは…ううん、私は違うよ。私は勇者なんて大層なものじゃない。ただ腕がいいだけ。期待に添えなくてごめんね?」
***
村に戻ると、力仕事をしている村の男たちにアンナがせっせと飲み物を配っていた。
「あれ?アンナ、手伝いなんてしたくないんじゃなかった?」
「う…しょうがないじゃない。飲み物を配るだけでみんなが喜んでくれるんだから…少し、楽しくなっちゃって…そ、そのニヤニヤやめなさいよ!」
恥ずかしそうに俯いたアンナがブツブツと呟いている。
ふふん、アンナもボランティアの楽しい所に気がついたのだろう。
私もアンナから飲み物を受け取り、一気に飲み干した。