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旅人と吸血鬼  作者: うらにうむ
13/18

父親


がちゃ、キィ…


この屋敷に避難した翌日の夜、玄関が開く音で目を覚ました。

隣で眠るシトラスは未だに目を覚まさない。


「アルト…」


「お嬢様、この部屋で静かにやり過ごしましょう」


他の部屋からドアを開く音が聞こえる。

つまりここには私たち以外に何かが居る。

私たちは戦えるはずもなく、隠れるしかできない。

なんて情けない…

シトラスを守らなければならないというのに、隠れるしかできないのだから…


がちゃ…


この部屋の扉が開いた。


「…リアンナ。居るのだろう」


「お、お父、様…?」


屋敷の侵入者は、お父様だった。

いつもと変わらずビシッとした服を着た、厳格な父親だ。


「探したぞ。まさかこんな所まで逃げてくるとは…」


「な、んで…どうしてここにいるって…!」


「見張りのコウモリが知らせてくれたのだよ」


そう言って、屋根裏から出てきたコウモリの頭を撫でる父上。

そうだ、別荘を無防備にしているはずがないだろう。


「さぁ、帰るぞ。お前に相応しい相手を見つけたのだ。お前には結婚してもらう」


「嫌よ!私は自由に生きるって決めたの!これ以上お父様の言いなりになんてなりたくないわ!」


「…ふん。お前を誑かしたのはその女か」


そう言って睨みつけるのは、目を覚まさないシトラス。

お父様の目は、「余計なことをしやがって」と、敵意を持った目だ。

それを見たアルトはシトラスを抱きしめ、反抗の意思を見せている。


「貴様もか、駄犬」


「ええ、そうですとも。私が忠誠を誓ったのはお嬢様とシトラス様だけです。あなたが入る隙間なんてありません」


「恩を仇で返しおって…リアンナがどうしてもと言うから面倒を見てやったのだ。誰のおかげで今日まで生き長らえていたのか、よく考えながら死ぬがいい」


そう言ったお父様の目が、赤く光った。

吸血鬼がその力を発揮する時の兆候だ。

私はお父様の腕を引っ張り、止めた。


「ダメ!その2人だけは…!」


「離しなさい」


「…ついて、いくから…私、屋敷に戻るから!だから…その2人、だけは…!」


「なっ…!?駄目ですお嬢様!」


力は無いし逃げられない。

お父様を止めるにはこれくらいしか方法はないのだ。

大好きな二人には生きて欲しい。

小さい頃からずっと一緒に居たアルトは勿論。

シトラスは、私の勝手な都合で殺してはいけない。

この人は、この世界に必要な存在だから。

それに…私の大好きな人だから、死んで欲しくない。


「アルト…ごめんなさい。私の為に仕事まで捨てて探しに来てくれたのに…」


「お嬢様…!」


「あなたの事もシトラスの事も、ずっと大好き。元気でね」


「…ふん、リアンナを保護してくれた礼だ。その女が目覚めるまではこの屋敷を使う事を許可する。さあ行くぞリアンナ。来週には式をあげるぞ」


「…はい」


そう、これで良いのだ。

…2人の命のためなら、これくらい安い。

でもやっぱり、シトラスへの別れの言葉は、直接言いたかったなぁ…


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