懐かしい
「はっ!やぁっ!」
今日も今日とて魔王軍の残党狩り。
この村付近を彷徨いているのは4体ほどのワイバーンだ。
元魔王領に最も近い王国領の村なので、そこそこ強いモンスターが増えている。
「ふぅ…疲れた…」
いつもよりも時間がかかった。
昨日も他の村の依頼で魔王軍が作ったゴーレムを爆破して回っていたため、その疲れが残っているのだろう。
「ありがとうございました!貴方様のおかげでようやくこの村にも平和が訪れました…!これはお礼でございます。少ないですが…」
「いえいえ、私はやりたいことをやってるだけですからお礼はいりません。全て村の復興のために役立ててください」
老いた村長が差し出したお金が入った袋を拒否し、微笑んだ。
村から出る前にと、いつも通り村の外周を散歩する。
「ねぇ、いつも思うんだけどなんで村から出る前に、こうやって歩くの?」
「村の風景を見たいとかでは?」
「それもあるかな。気づいてないかもしれないけど、実は結界張ってるんだよ。害があるモンスターとかが近づかないようにね」
村を囲む柵や、森の木々に結界を張りながら歩いているのだ。
効果は数十年くらいかな。
「この範囲に結界って…」
「しかも数十年も…シトラス様、流石です…」
「この村は大きくて魔力の消費が多いから大変だけどね…この村の人達が健やかに過ごせますように、って思って結界を張ってるの」
「…いつもの言動が嘘みたいな聖人っぷりね」
失礼な…
***
今日は昨日に引き続き魔力を大量に使ったから、いつも以上に疲れた。
…頭がぼーっとする…
『これが終わったら何がしたいか?うーん…旅をしながら、人の為になる事をしたいかな。正義の旅人ってなんかカッコよさそうじゃん?』
フィールの声…
懐かしい、2人で旅をしていた時にこんな会話してたなぁ…
『たしかに…私は王国に戻ったら、またあの日々が待ってると思ったら憂鬱だよ…』
『…ねー、別に戻る必要なくない?世界を救った英雄なんだからそれくらいのワガママ許されるって』
『…なるほど。考えてみればそうだね…それじゃあさ、私も連れてってよ。フィールと一緒なら、私はなんでも楽しいからさ』
『ふふん、言ってくれるじゃん。ま、僕はどっちにしろ連れて行く気満々だったけどね』
「うん、知ってた…あぁ、そうだったね…あなたと一緒にしたかった事を…私は…今…」
「なにブツブツ呟いてるのよ…って、顔赤いわよ!?大丈夫!?」
「た、大変です…!少し休める場所を!」
あぁ…
あの頃の…黄金に輝く日々が懐かしい…
大好きなフィールと、一緒に過ごした、5年間…
絶対に…絶対に、忘れない…
今日は久しぶりに仲のいい友達を集めて花火を見に行きました。
十代最後の花火だからすっごいしんみりしちゃった…




