冤罪を受けた僕と、天使な幼馴染が幼馴染じゃなくなるまで
幼馴染は幸せになってほしいと思います。
僕の名前は斎木和樹、K高校に通う平凡な高校生だ。普通と違うとすれば才色兼備な幼馴染の高橋美沙という幼馴染がいて高校生になった今でも仲良くしていていつも登下校を一緒にしていることだろう。
それはたまたま寝坊して一人で登校した時のことだった。
「この人痴漢です」
そう言われて僕の腕を掴まれたことから僕の人生は狂い始めた。
無罪を主張しても警察も家族もクラスメイトも信じてもらえなかった。家でも学校でも針の筵な状態になってしまった。
しかし、幼馴染だけは僕の主張をしっかり聞いてくれた上で僕を無罪だと信じてくれた。それからはその彼女と常に一緒にいて依存するようになっていった。
「今日も家ではゴミを見るような目でみられたよ」
「多分和ちゃんとどう向き合えばいいかわからないだけだよ、いつか分かってもらえるから少しだけ我慢してみたらどうかな?」
「まあ美沙がいるからどうでもいいけど」
「家族をどうでもいいとか言っちゃ駄目、きっと冤罪だってわかってもらえるから頑張ろうね?」
「美沙が言うなら・・・・」
何時ものように家族に対する愚痴やクラスメイトに対する愚痴を零しつつ美沙に甘えながら帰ったら、何時もならパートに行ってまだ帰って無いはずの母さんが青い顔でリビングの椅子に座っていて帰ったのに気づくや否や抱きついて来た。
「和ちゃん、ごめんなさい!」
とっさのことで振りほどくことも出来なかったら急に謝ってきた。何だと思うと僕を痴漢扱いした女性は痴漢冤罪の常習犯で怪しまれてた警察によってついに捕まってしまったようだ。その後の調査の結果僕に掛けられた疑いも完全に晴れたということのようだ。
「今更謝っても遅いよ!この一か月僕がどんな思いで過ごしたか分からない癖に」
そう言って母親を突き放した。
「和ちゃんが怒るのはもっともだと思うの、でもどうしても許してほしくて」
「許すわけないじゃん、一生後悔してろ」
言葉でも母親を突き放したが、不思議と心は軽くならなかった。
その後会社を早めに帰ってきた父親も含めて話し合いをしたが、話は平行線に終わり寝ようとした、冤罪も晴れて気分よく寝れると思っていたのに父と母の悲しそうな顔が過って全然寝付けなかった。
「和ちゃん!冤罪が晴れてよかったね」
翌朝美沙は会うなりお日様のような笑顔で僕以上に喜んでくれた。
「でも父親と母親が今更謝ってきたんだよね」
「和ちゃんのお父さんとお母さんは真面目だもの、自分たちが悪いと思ったら謝るのは当然だよ。それで仲直りはできた?」
「今更感が強くってね、第一何で最初から息子を信じないんだよ」
「えっと、じゃあまだ喧嘩したままなの?」
「そりゃあ簡単に許すわけにはいかないでしょ」
「じゃあ、何時許すの?」
「え・・・・」
美沙の言葉に思わず固まってしまった、僕を信じなかった両親に対する怒りや不信感はあるけど一生許さないかと言われるとそこまででないと思う。僕は何時許せばいいんだろうか?
その後テレビにも取り上げてたこともあってクラスに着くなりクラスメイト達からも謝罪を受けた。その様子を美沙はニコニコしながら見ていたのだが僕はクラスメイト達を拒絶してしまった。
「僕がこの一か月どんな思いで過ごしていたかわからないの? よくも気軽に謝罪何て出来たね恥をしれよ」
そう僕が言った瞬間頬をビンタされた。一体誰にビンタされたのかと思ったら美沙だった。
「和ちゃんの辛かった気持ちは分かるけど、それでも謝罪をしようとした人に対してその態度はなに!」
それからは再びクラスメイトとも話さないだけでもなく、美沙とも会話出来ない状態になってしまった。美沙だけは常に僕の味方だと思っていたのに裏切られた気持ちが強くて会話しようともしなかった。
そんな時、隣の席のギャルである藤島楓に声を掛けられた。
「斎木さ、最近美沙ちゃんと話してないでしょ」
「藤島には関係ないだろ」
「その様子じゃ本当に知らないんだね」
「何がだよ!」
「あんたが暴言吐いた相手に対して謝って周ってたってこと」
「ど、どういうことだよ」
「正直さ、あんたからある程度暴言言われても仕方がないかなって空気はクラスにあるんだけど、それでも美沙ちゃんはあんたが自然に溶け込めるようにしたかったみたいなんだよね、あんたの冤罪が晴れる前からクラスの輪に溶け込めるように周りにお願いしてたりしてたし」
「美沙がそんなことを」
「そ、あんたは美沙ちゃんに依存することしかしてなかったみたいだけど、その間に美沙ちゃんも動いてたわけ、それをあんたの暴言で台無しにされたわけだけど美沙ちゃんは周りに謝ってあんたをクラスに馴染めるように頑張ってるってわけよ」
「そんなこと知らなかった」
「まあ知ってたらあんなこと言わないわね、それで美沙ちゃんまで避け始めたあんたなわけだけど、美沙ちゃんはもてるの知ってる? 現に今隣のクラスの委員長となんか話してるね」
藤島が笑いながら指を向けた先には、楽しそうに談笑する美沙と隣のクラスのイケメン委員長がいた。
「あんたは冤罪中の私達の態度が気に入らないみたいだしそれはしょうがないと思うけど、とられちゃってもいいの?」
藤島がニヤニヤ笑いながら言ってくる言葉に耐えられなかったが、その日も美沙を置いて帰ってきた。
家に帰ってからもずっと美沙の事を考えてしまう。美沙は僕を守ってくれてただけでなく周囲に再び溶け込めるように頑張ってくれていた。イケメン委員長と仲良くしてた美沙を思い出すと苦しくなるけど、美沙の優しさに答えるためにまずは一歩進めてみることから始めよう。
「父さん、母さん話があるんだけど」
その日は久しぶりに両親と会話をした。それだけなのに母さんは泣きじゃくるし、父さんも少し目が潤んでた。
ああ。僕が傷ついて来たのと同じように、両親をこんなに傷つけていたことを知り自分の部屋で泣いてしまった。
クラスメイト達も傷つけていたんだろうと気付き翌日のホームルームに勝負を掛けることにした。
翌日のホームルームが終わる頃に行動をおこした。
「じゃあこれでホームルームを終わるぞ」
「先生いいでしょうか」
「どうした斎木、まあ少しなら時間とってもいいが」
「ありがとうございます」
唐突にホームルームに声を上げた僕にクラスの皆が驚いていた、いや、藤島さんだけがニヤニヤしてた。
「ま。頑張れ」
藤島さんの声に背中を押されて緊張しながら教壇にたった。一つ深呼吸をしてから皆に向けて声をだした。
「まずは皆ごめん。折角謝ってくれたのに暴言で返しちゃって恥ずかしく思うよ」
僕がそう言うとクラス中から『そんなの気にしてない』や『和樹の気持ちを考えられて無かったこっちが悪い』等優しい言葉が返ってきた。
「それでも謝らせて欲しい。いつまでもウジウジといじけて美沙に後始末をさせてた僕は冤罪を抜きにしても男として最低だと思う」
「その上でお願いがあります。僕を再びクラスの一員として迎えてくれませんか」
そう言うとクラスの感情が爆発したように盛り上がり『こっちからお願いしたい』『やったー』『お姉ちゃんが優しく迎えてあげる』等一部おかしな返事もあったが好意的に迎えてもらうことが出来た。ちなみに担任の先生も嬉しそうにしていた。
「それとここまで支えてくれた美沙」
「なに?」
「頼りなくて情けなくてイケメンでもないけどこれまで通り美沙の隣にいさせて欲しい!」
「勿論だよ、私の隣は和ちゃんの指定席だもの」
といつも通りに微笑んでくれた。しかしそれで収まらないのがクラスメイト達、思わず公開告白をしてしまったのでクラス中が盛り上がり一限目の先生に怒られた。
色々疲れたこの日の学校を終えて以前通りに美沙と下校していたら美沙から笑いながら質問された。
「告白してくれたのは嬉しかったけど何でホームルーム中だったの?」
「美沙が隣のクラスメイトの委員長と仲良く話してたから焦っちゃって」
「ああ、あれは委員会を体調不良でやすんで代わりに副委員長が出たけどいまいち要点が分からなかったから聞きに来ただけだよ。もしかして焼いちゃった?」
「すげえ焼いた」
「私愛されてるねー。でも和ちゃんも最近藤島さんと仲良くない?」
「美沙が裏で色々動いてくれてるって教えて貰っただけだよ、ありがとうね美沙」
「別にいいよ。好きな人を助けるのなんて当たり前じゃない」
思わず美沙を抱きしめてキスしようとしたら突き飛ばされてしまった
「和ちゃんはムード×だよねー」
「今そういうムードじゃなかった」
「人目に付くとこなんて嫌かなー」
「じゃあ帰りうちに寄って行く?」
「そういうとこだよ、でも、たまには寄っていこうかな」
「やったーーー!」
「喜びすぎ」
冤罪事件は結局2か月も立たずに収束したけど代わりに大切な物を沢山手に入れることが出来たと思う。
家族はコミュニケーションが足りなかったのが問題だと父親が考え家族といる時間を大切にするようになり、クラスメイトとは事件前より結果的に打ち解けることが出来た。
そして、僕が困ってる時は積極的に行動してくれるけど、そうでもない時は一歩下がってニコニコ笑っていてくれる天使のような幼馴染が恋人になってくれたのが一番の収穫かな。
ちなみに藤島さんはなんか気が合ったらしく美沙の親友になってた。
今後も色々ありますが藤島さんの助けもあり幸せな結婚をします。