旅の始まり
「13番! 昼食ができたから師匠を呼んできて! 師匠は向かい側にある倉庫にいると思うから」
「おっけー」
師匠とルインと暮らし始めてから1ヶ月が経った。
楔の特訓も順調だ。
この家はオルタネイトの栄えているところから少し離れた丘の上にある。
ここからオルタネイトを一望することができる。
オルタネイトには工場と住宅街が多い。
オルタネイトの中心には塔が立っていて、オルタネイトのシンボルだ。
塔の名前はゲイルと呼ばれている。
「師匠ー。 ルインが昼食を作ってくれましたよー」
「そうか、了解した。13番これを運ぶのを手伝ってくれ」
師匠は箱を持っている。
「分かりました、って重!!!!」
「はっはー。重いだろ」
師匠は笑いながら荷物を俺に持たせた。
手伝ってくれって、師匠は持たないのかよ。
「この中に入っているのは何ですか?」
「秘密だ。後で分かる」
「そうですか」
俺は荷物を家まで運んだ。
「じゃあ、食べよう」
ルインの料理はとても美味しい。
これのおかげで一日頑張れる。
「ごちそうさまでした」
食事を終えて、皿洗いなどを済ませた。
「よし中を開けるか」
箱を開けるらしい。
一体何が入っているのだろうか。
「箱の中身はなんだろな、って大きい石じゃないですか!?」
「師匠。これって、ただの石ですよね?」
「ああ。石だ」
「えーと。それ自慢げに言うことですかね」
「結構前からあの倉庫にあったんだが、本当にただの石だな。放置していたら何か変化が起こるかもと期待していたが、何も無かったようだ」
師匠は少ししょんぼりしたような表情だ。
「それにしてもやっぱりただの石です、ね!?」
石を持とうとした瞬間、手が滑って落としてしまった。
「あ、あーーーーーー!!!」
「何やってるの!!! 13番ーーー!!!」
やってしまった。
石は割れてしまった。
師匠になんと謝ればいいか。
「気にすることではないよ13番。君のおかげで石の正体が分かったよ」
「え」
石の正体が分かったらしい。
本当なのか。
「この石の中にペンダントが隠されていた」
「ぺ、ペンダント?」
「そうだ」
「どうしてそんなものが石の中に入っているんですか?」
「分からん」
なぜペンダントが中に入っているのだろうか。
ここにいる全員が理解できなかった。
「それにしてもこのペンダント、何か光ってません?」
「本当だ!」
よく見れば薄く光っている。
「二人ともカーテンを閉めて部屋を暗くしよう」
「分かりました」
「了解です師匠」
カーテンを閉めて部屋を暗くし、ペンダントの光はより強くなった。
そしてペンダントに触れると、
「うわ!?」
「これは!?」
「これって!」
「ああ、そうだな。これはこの世界の地図だ」
ペンダントに触れた瞬間、光でこの世界の地図が作り出された。
「でもこの地図何かがおかしいわよ!!」
「ほ、本当だ」
「オルタネイトがない!?」
映し出された地図には現在地が丸で示されている。
しかしその場所の名前がオルタネイトではなくフロンテと記されている。
「フロンテ?」
フロンテなど聞いたことのない名前だ。
「師匠!! フルイレのある場所にピンが刺さっています!!」
フルイレとは、オルタネイトの隣の街だ。
「ここに行けってことなのか?」
「多分そうだと思います」
このペンダントは俺たちに何かを知らせるためにピンを刺している。
そこに行けば何かがあるかもしれない。
「行きますか師匠?」
「ああ。俺が一人で行く」
「え!?」
俺とレインは二人で声を揃えた。
師匠はびっくりしている。
「師匠。私たちを置いてくなんてひどいですよ!」
「そうですよ!」
「だって、君たちを危険にさらすかもしれないし・・・」
師匠は俺たちを心配して言ってくれたようだ。
なんて優しい人だろう。
「私たちは師匠の弟子です。大丈夫です!!」
ルインは自信満々に言った。
「そうだな。二人とも、来てくれるか?」
師匠は不安な様子だ。
それもそうだ、このペンダントには俺たちの知らないことが隠されているのだから。
「当たり前ですよ師匠!」
「俺も行きます!」
これで何かを得られるかもしれない。
「じゃあ、明日の朝に出発するぞ」
「了解しました師匠!!」
「了解です」
次の日の朝になった。
「二人とも行くぞ」
「はい!!!! 師匠」
「行きましょう!!」
俺たちの旅は始まった。
ーーゲイル
「ペンダントが何者かによって使われたそうです。主人」
ある女性が今起きている現状を報告した。
「そうですか、あの者たちを集結させなさい」
「承知しました」
主人と呼ばれる男はワインを片手に持ちながら言った。
「ペンダントが使われましたか、やはりこれは逃れられぬ運命なのですね」
オルタネイトの裏で何かが動き始めた。