梅雨の出会い
雨煙る昼下がり。髪が纏わりついて離れないことに嫌悪感を抱きつつ、窓の外を眺めると走る人影が見えた。
あ、コケた。悲惨だなあ。結構高そうな服に見えるけど、一体何があったらこんな天気の中走ることになるのだろう。コーヒーのお供にするにはちょっと悲しすぎる光景だからやめてほしいのだけど。
……誰も助けに行かないか。ちょうどコーヒーを飲み終えてしまったし、仕方ないな。
大きくため息をこぼした僕は、会計を済ませ喫茶店を出る。
「あの、大丈夫ですか?かなり豪快に転んでましたけど。」
「いえ……すいません、大丈夫です」
「大丈夫って……血が出ているじゃないですか。動けますか?とりあえず雨のかからないところへ。」
彼女の荷物を持ち、立ち上がらせる。
おっと、これは参ったなあ。思ってたより大事になりそうな気がするぞ。
だってこの子、今をときめく‥‥
とりあえず助けるけど、何があったらこんな子がこんな雨の日に転ぶことになるんだろうか?
このときの僕はまだ、この出会いが大きく日々を変えることになるとは思っていなかった。