表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/57

ドラゴンの姫君

 カリアスは冒険者パーティーを追放され、故郷『ユリニアの森』に足を運んだ。

 そして今現在、森の奥にある池の辺りで倒れた巨木に座っている。しかし、何故か隣にはカリアスが未だかつて見た事のない美貌を持つ少女が、同じ巨木に腰掛けているのだった。


 カリアスがこの状況に混乱している中、その元凶である人物はカリアスが貸したワイシャツをすっぽりと羽織り、野草とキノコのスープを美味しそうに味わっている。

 それもすでに十杯目である。


(相当お腹空いていたんだなー………)


 よくその華奢な体に入っていくなとカリアスは思いながら、美味しそうに頬を綻ばせている彼女の様子を見ていた。


 つい一時間程前に出会ってから、カリアスとセレネは簡単な自己紹介を交わしていた。


 彼女の名前は『セレネ』と言うらしい。

 風属性のドラゴンであり、彼女曰くドラゴンの国から来た姫君らしい。


(ドラゴンの国って……それに姫って……どこまで信じたら良いのやら……)


 少なくともカリアスは魔物に関しての知識を人一倍持っている。しかし、ドラゴンの国など聞いた事がない。そもそも、ドラゴンがダンジョン外に存在している事すら、カリアスは数日前に身を持って知ったばかりだった。

 もはや彼女の存在に違和感を無くしつつあるカリアスだったが、そんな彼女が話した内容はカリアスをまた混乱の渦に飲み込ませるのに充分なものだった。


「で、なんで君はこんな所に傷だらけで倒れていたんだ?」


 カリアスはそんな自分の頭を整理するかのように、セレネに一番疑問に思っていたことをぶつける。

 美味しそうにスープを味わっていたセレネは、持っていた器を膝の上に下ろすと、なんとも深刻な面持ちでスープを見つめ始めた。その表情の代わりように、カリアスの心は焦り始める。


(なんか……またまずいこと言ったかな……)


 彼女が視線を落とすスープの湯気が、森の心地の良い風に煽られ揺れている。

 カリアスも自然とその湯気の動きに目を止める。大きく揺れたり、かと思えば消えたりと様々な動きを見せる湯気をずっと見ていると、心が少し落ちついていく気がした。


「探しているの……」


 カリアスがそよぐ水蒸気を見つめながら焦る感情を押し込めようとする中、セレネはポツリとそう呟いた。カリアスはその言葉に眉を寄せ、隣で下を向いているセレナの表情を見ながら慎重に声を発した。


「探しているって、何を?」


 カリアスの質問に対し、セレネは下唇を噛み器の持つ手にいっそう力を入れる。そんな彼女の姿を見て、カリアスは踏み込んだ質問をしてしまった事にまた後悔した。


 カリアスは召喚士である前に、育ての親であるジェイソンと同じく魔物やこの国の歴史を探る探求者でもある。純粋な好奇心でつい聞いてしまったその質問は、セレネの反応を見る限り彼女の気分を害するものだった事は明白だった。


「嫌だったら無理に答えなくて良い」


 カリアスはそう言って自分の好奇心を押さえ込み、彼女から視線を逸らし夜空を見上げた。

 今日は月がより一層光り輝いている気がする。それは、夜でも賑わいを見せる町の明るさの中で見る月の光に、ここ数年で慣れてしまったからなのか、それとも今日の雲がない夜空の気候が関係しているのか。カリアスはそんなことをボーッと考えて気を紛らわす。 


「お母様を探しているの」


 ふと隣から凛とした声が響いてきた。思わず視線を横に向ける。

 そこにはカリアスを見上げるようにして、美しいエメラルドグリーンの瞳がより一層強い光を放っていた。


(お母様……? ってことはドラゴンの王女?)

 

 そんなことを心の中で思いながら、カリアスはセレネの次の言葉を待った。


「私の国には昔からいろいろな言い伝えがあるの」


 そんな言葉から始まったセレネの話は、とても興味深く、新鮮で、そして悲しい話だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ