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一方その頃 〜『炎の凱旋』パーティー側4〜

 ゴツゴツとした岩肌の土地を、アルバート・デュークは歩いていた。ユリニアの森のその先、この小国の果てにある土地は標高が高く、突出した岩ばかりが広がっている。


 目的地である『巨厳の洞窟』への入り口は、もうそこまで迫っていた。アルバートはダンジョン周辺の独特な魔力を、体全体で感じる。ただでさえ歩きにくく空気の薄い場所だというのに、濃度の濃い魔力がここら辺一帯を包み込み、何とも近寄りがたい雰囲気をしていた。

 それでも、冒険者パーティー『炎の凱旋』一行は、しっかりとした足取りで進んでいく。


「もう目の前だな」


 フィンレー・メルクーリの言う通り、アルバートが道を登り切ると、目の前に広がる光景が一気に変わった。

 自分達の足元から、まるで何かにえぐられたかの様に地面が陥没していた。ゴツゴツした岩もなく、綺麗に地面が露出している。

 そのくり抜かれたような土地の中心に、まるで大地が口を大きく開けているかの様に、洞窟の入り口が存在感を露わにしていた。


 洞窟の周りには、岩で作られたであろう遺跡の様な人工物がちらほらと見える。所々崩れ落ちており、その建造物が大昔に作られたことを物語っていた。

 まさしく、伝説のメノールターナが残したダンジョンである。


「これが巨厳の洞窟……」


「つい1ヶ月くらい前に、この島国で大きな揺れがあった。その際に、この目の前の土地一帯が陥没し、コレが出てきたそうだよ」


 アルバートの独り言の様な声に、フィンレーが鼻高々に知識をひけらかす。


 前まではここに洞窟も建造物も存在しなかった。陥没もなく、ただただ、岩肌の土地が続くばかりだった。

 この先をさらに進めば、島の端へと繋がり、切り立った崖の下には海が広がっているだろう。

 そんな場所につい1ヶ月前、ダンジョンが突然現れたのだ。


 異様な光景に、それまで順調に足を進めていたパーティーメンバーは揃って足を止める。周りに広がる異様な魔力はさらに濃くなり、ダンジョン周りの空気は澱んでいる様に見えた。


「おう。こりゃヤバいな、他のダンジョンよりも気味が悪りぃ」


 アラスターがそう言いながら、楽しげに笑って見せる。気温が低いにも関わらず、上半身裸で大きな盾を背負う彼のスタイルは、今日も健在である。


「キツイ、ムリ、帰りたい……」


「何、弱音吐いてんだよ。これからだろ! それともあれか? お子ちゃまにはちょっと刺激が強すぎるか?」


「次、お子ちゃま言ったら、コロス……」


 ドロシーがギロッとアラスターを睨む。睨まれた本人は「おーコワイコワイ」と言い、大袈裟に自分の肩を抱いて見せる。が、顔はニヤニヤと笑っており、怖がってもいなければ、反省している様子すらも無い。


 そして、アルバートの隣では身を屈め頭を抱えているヘレナが、いつもの如く呪文の様にブツブツと声を出している。


「ごめんなさい……私なんかが来てしまって……ごめんなさいごめんなさい……私なんかが生きててすみませんっ」


 これから向かうダンジョンの異様な光景を目の当たりにしても、『炎の凱旋』パーティーメンバーは、多少の緊張感は持ちつつも、いつも通りの賑やかさである。

 

「みなさん、いつもこうなのですか?」


 これから命懸けの任務が待っているというのに、不真面目にも見える振る舞いに、アルバートは眉根を寄せてそう問いかけた。


「そうだね。いつも緊張に負けて尻込みしていたのは、前にいたあの無能な奴だけだったよ。ほんと弱い奴だった」


(無能な奴……前にいた召喚士のことか)


「さぁ、行こうか。ダンジョンが僕たちを呼んでいる」


 アルバートが何も返さずにいると、フィンレーが英雄気取りにそう言い放ち、止まっていた足を動かし始めた。先陣を切って急な下り坂を滑る様に降り始める。

 それに続く様にアラスターが降り始め、対抗する様にドロシー、そして焦る様にヘレナも後を追う。


「おい! お前も早くこいよ!」


 アラスターの急かす声に、アルバートがそう声を張り上げる。


(そうしていられるのも今のうちだな)


 この後起こることを目の当たりにして、このパーティーが正常でいられるか。それはきっと難しいだろう。

 アルバートがダンジョンに共に入って壊れなかったパーティーなど、存在しないのだから。



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