一方その頃 〜『炎の凱旋』パーティー側3〜
宿場町『パロン』にある酒場には、今日もたくさんの冒険者達が訪れ、お酒を片手に味の濃い料理を食らっている。
いつもなら豪快にエールを飲み交わしながら盛り上がっているはずが、なぜか今日は張り詰めた空気が漂っている。皆一様にお酒をチビチビと飲みながら、店内の一角にあるテーブル席へと視線を送っていた。
その先には、今やこの小国の最強と呼び声が高い冒険者パーティーの面々が集まっている。
「あれが噂の……」
「精霊サラマンダー、一回拝んでみたいよな」
「おい、あんまジロジロ見るな。消し炭にされるぞ」
注目を浴びている事を自覚しつつも、アルバートは周りがヒソヒソと話していることなど全く気にせず自己紹介を始めた。
「初めまして。光栄ながら『炎の凱旋』の召喚士を務めさせていただく事になりました、アルバート・デュークです。よろしくお願いします」
メガネをクイッと上げながら、パーティーリーダーのフィンレーという男に挨拶した時と同じ文言を、初対面である他三人の冒険者に向かって放つ。
一人は大柄な男性でアラスターと名乗り、「お前、噂通り強そうだな! 強い奴は大歓迎だ!」という言葉から始まり、「それでお前、どんなタイプの女が好みだ?」などと、アルバートが全く興味のない会話をし続けてくる。
二人目の魔女らしき少女はドロシー・リードと名乗り、その後は言葉を発する事なく黙々と目の前の食べ物を消費していく。一体、小柄な体のどこに消えていくのだろうか。
三人目はヘレナ・アルマートと名乗り、「すみません」「私なんかがここにいてすみません」と、なぜか無駄に謝り続けている。
そして、リーダーであるフィンレーはというと、周りの冒険者から注目を浴びている事に大満足の様子で、キラキラオーラ全開で誇らしげに笑っていた。
(最強パーティーと聞いたから誘いを受けたが、このパーティーポンコツばかりじゃないか)
アルバートが見る限り、四人とも魔力量がずば抜けて高いわけでは無さそうだ。技量は実践で見定めるしかないが、このポンコツさ加減ではどう考えても自分より数段劣る様に思える。
期待外れもいいところだ。
(この国での目的を達成したら、即このパーティーを抜けるとしよう)
アルバートは落胆した気持ちを切り替え、遥々この小国にやって来た一番の目的を投げかける。
「あの、国が新しいダンジョンの攻略を始めると伺ってきたのですが、このパーティーも参加するのでしょうか?」
「そうだ! その話をみんなにしなくてはと思っていたよ」
フィンレーはご自慢のブロンドヘアをかき上げながら、無駄に声を張り上げる。どうやら、こちらに視線を向けている冒険者達を意識している様だ。
「先程ギルドから正式にオファーが来て、『炎の凱旋』に新ダンジョンの攻略任務が与えられた!」
フィンレーの言葉が店内に響き渡った瞬間、静かにこちらの様子を窺っていた周りの客達がワッとざわつき始める。脳みそが単純な冒険者達は、まんまとフィンレーの自己顕示欲に踊らされている。
「本当かよ! それは働きがいがあるぜ! ドロシー、お前もそう思うだろ!」
「面倒くさい……」
「元々、国からギルドにダンジョン攻略の要請がかかったらしい。つまり、この国の王様直々の命と言っても過言ではないだろう。上手くいけばたくさんの褒美をもらえるかもしれないな。例えば……今まで食べた事もない高級料理とか……」
「私頑張る」
「食い意地だけは一人前だな、ツルペタちゃん」
「次ツルペタ言ったらコロス」
「私なんかがダンジョン攻略なんて……すみません、すみません」
それぞれが、それぞれの反応を見せる中、アルバートはこのパーティーに入ったのは正解だったと思っていた。
アルバートがこの国に来た理由は、初めから新しいダンジョン攻略に潜入する事だった。もしこのパーティーにそのオファーが来ていないのであれば、これから『炎の凱旋』のメンバーとして名を挙げ、ギルドに実力を見せつけた後に直談判するつもりだった。が、どうやらその手間は省けたらしい。
ポンコツばかりだと思っていたが、少なくとも最強パーティーと呼ばれるにふさわしい実績はあるようだ。
「ダンジョン攻略は三日後からスタートする。それまで各々準備を進めてくれ」
(三日後……。思っていたより早くかたがつきそうだ)
アルバートはそう心の中で呟きながら、メガネをクイっと上げ、誰にも気づかれない程度に口角を引き上げるのだった。




