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召喚士の才能


「ダンジョンが召喚士って?」


 そう聞いてきたセレネに対して、カリアスは説明をしようと口を開きかけふと止める。どう説明したら良いのだろうかと、まだ自分でも整理しきっていない情報を脳内で並べていく。が、まだうまく言葉に表せそうにない。こういう時に、自分はまだまだだなとカリアスはいつも思っていた。

 黙り込んでしまったカリアスに変わって、ジェイソンが助け舟を出す。


「セレネちゃん、召喚士の才能は何で決まるか知っているかい?」


 説明下手なカリアスに代わり、ジェイソンが優しく問いかけた。


「いいえ。知りません……。召喚士の存在は知っていますが、詳しくは……すみません」


「謝らなくていいんだよ。知らないことは悪いことじゃ無い。召喚士の才能はね、大きく分けて二つあるんだ。一つは魔物を引き寄せる力。そして二つ目は単純明快、魔力量だ」


「魔物を引き寄せる力と魔力量……」


「魔物を引き寄せる力、そして魔力量。その両方を持ち合わせていればいる程、召喚士は強い。つまり才能があると言う事になる」


「そうなのですね」


「ダンジョンにも同じ事が言える。多分、ダンジョンの持つ莫大な魔力量は、魔物達を無理矢理引きずり込んでしまうのだろう。私もつい先程までは、ダンジョンの魔物はダンジョン内で生まれているのだと勝手に思い込んでいた。私とカリアスはセレネちゃんの話を聞いてその考えが間違っていたと分かった。そして新たな仮説を立てるとしたら、ダンジョン召喚士説が一番有力になる。まるで召喚士のようにダンジョン外にいる普通の魔物たちをその圧倒的な魔力量によって眷属とし、支配しているという仮説だ。そう言いたかったんだよな、カリアス」


 ジェイソンが全て説明してくれた今、カリアスが特別追加するような情報はなかった為、コクリと頷くだけにとどまる。

 ダンジョンは言うなれば意思を持たない召喚士なのだろう。その強力な魔力で魔物を眷属にし、その命が尽きるまで迷宮の中に閉じ込めている。相手に意思がない分、たちが悪いことこの上無い。

 カリアスは多くの魔物を苦しめているダンジョンに対して怒りが込み上げてくる。

 そんな中、ジェイソンの説明を真剣な眼差しで聞いていたセレネが口を開く。


「私がダンジョンにこのまま行ったらどうなりますか?」


「結論から言うと、ダンジョンの下僕にされちゃうだろうね」


「そんな! じゃー私がダンジョンに行くことはできないのですか?」


「難しいな」


 カリアスもジェイソンの結論と全く同じ事を予想していた。あれだけ魔力を持っている最強魔獣のドラゴンですら、セレネの母のようにダンジョンに取り込まれてしまっている。

 どういう基準で魔物を取り込んでいるのか分からない今、不用意にダンジョンにセレネを連れていくわけにはいかなかった。


(もっと情報を集めないとダメか。せめてどういう基準で魔物を取り込んでいるのかだけでも……)


 今現在もダンジョンに囚われてしまっているセレネの母を思うと、一刻も早く助けに行ってあげたいとカリアスの気持ちが焦る。きっとセレナの方が何もできない今のこの状況を歯痒く思い、不安で辛いはず。


 色々な可能性を考え、どうにかセレネが安全にダンジョンに行ける方法を探ろうとするが、何かがプツンと切れてしまったかのようにカリアスの思考が停止してしまった。どうやら、数日森の中を歩き回ってきた為、疲労がピークに達してしまったらしい。

 何も考えられなくなってしまったカリアスは「はぁー」とひとつため息を溢し、視線を自分の足元に落とす。

 

 青々と茂る森の植物が、カリアスの疲れて霞んだ目を多少癒し、揺れ動く木漏れ日が、焦る心を落ち着かせてくれる。会話が途絶えた空間には、木々の揺れ動き擦れる音や水の流れる音、鳥の囀りが心地よく響いていた。

 自然豊かなユリニアの森の励ましに感謝しつつ、カリアスは再び解決策を見つける為に、鈍間になった脳を動かそうとした。その時だった。


「難しいが、不可能とは言っていない」


 疲れで思うように働かなくなった頭の中に、そんな含みのある言葉が流れ込んできた。カリアスは思わずハッと顔をあげ、ジェイソンに視線を向ける。ジェイソンは髭がなくなった自分の顎を片手で撫でながら、ニヤニヤと笑うのだった。

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