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ジェイソン

 カリアスとセレネは、カリアスが育ったユリニアの森にある小屋を訪れていた。

 小屋の前にある切り株に腰掛け、焚き火をしながら少し遅めの昼食を食べている。今回のメニューはここまで来る間に獲った川魚の丸焼きに、薬草と小屋にあったかろうじて食べれそうな野菜のスープだ。

 セレネは相変わらずの食欲で、一人でほとんどをペロリと食べてしまっている。

 先ほどまで怯えていたセレネだが、食事を取る事によりだいぶ緊張が解れてきた様だった。スープを飲みながらほっこりと幸せそうに頬を緩めている表情を見て、カリアスもホッと息をついた。


 先ほどジェイソンと全く感動的とは言えない再会を果たしたカリアスは、その後、小汚く汚れたジェイソンを無理やり近くの池に突き落とした。

 この池に住み着いている水棲馬(ケルピー)や他の生き物に申し訳なく思いながらも、薬草で作った自家製の石鹸をジェイソンに投げつけ、体を隅々まで綺麗に洗う様に言いつけたのだった。


 ジェイソンがいない間、小屋でのんびりしようと思っていたカリアスだったが、その小屋の中も酷い有り様で、こうやって外で昼食をとっているところである。


「なんか……悪い。変人だけど根はいい人なんだ」


 ふとセレネにそう声をかける。彼女はスープの入っている器をそのぷっくりとピンク色をした唇から離し、カリアスに視線を向けてきた。


「分かっているわ。ちょっと、いやだいぶ緊張しちゃったけど、もう大丈夫よ」


 そう口にしたセレネを見ながら、カリアスは本当に彼女を連れてきて良かったのかと思いながら、ここに来るまでの経緯を振り返っていた。




「カリアスの師匠?」


「そう。あの人なら何か知っているかもしれない」


 セレネと行動を共にする事に決めたカリアスは、更に情報を得る為にも当初の予定通りジェイソンに会いに行こうと考えていた。

 このままセレネの母を探しにいくにはあまりにも情報が少な過ぎた。どのダンジョンにいるのかも分からないし、ダンジョンにセレネを連れていく事自体もリスクがあるとカリアスは考えていた。まずは情報収集に徹するべきと判断したカリアスは、自分よりも多くの事を知っているジェイソンに、相談する事が一番手っ取り早いと考えたのだ。


「クセは強いけど、根は良い人だし、あの人以上にダンジョンに詳しい人物はいないと思う」


 きっと世界中探してもジェイソンよりダンジョンや魔獣に詳しい人はいないだろう。あの人は研究者として優秀であると同時に異質でもあった。

 研究熱心で自分が気になった事に対して異常な執着を見せる。頭の回転が早く、召喚士としてもその実力は飛び抜けている様に思えた。


 そして、何よりも信頼ができる人物でもあった。

 情報収集をするにあたって、セレネの正体を晒さなくてはいけない場面が出てくる。しかし、彼女の存在は隠さなくてはいけないと、カリアスはそう考えていた。


 ドラゴンは魔物の中でも特別だ。単純に強さや魔力量もそうだが、本来はダンジョンにのみ存在し、そのトップに君臨する絶対的強者なのである。


『もし、外の世界にドラゴンがいると分かったら』


 多くの人は恐怖に襲われるだろう。だが、一番恐るべきはセレネの存在を利用しようと企む輩が出てくることだ。

 そんな人いないと信じたいところだが、こればかりは安心できない。


 彼女の存在をどこまで公にして良いものなのか。カリアス自身も解りかねていた。

 そう言うことも含め、カリアスはジェイソンに相談したかった。

 魔獣、ダンジョンに対しての知識量、そして、自分の隠し名を知っている唯一の存在だった信頼できる人物。


(やっぱり、ジェイソンに相談するしかない……)


 カリアスは自分に言い聞かせる様に、心の中でそう呟くのだった。

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