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ドラゴンとダンジョン

 ドラゴンの国には様々な言い伝えがあるらしい。

 そして、その中の一つに『ダンジョン』にまつわるとある秘密があった。


「人間が住むこの世界には、ダンジョンと呼ばれる創造物があるでしょ?」


「ああ。確かに、この世界の至る所に存在している。この国にもあるしな」


 そう、ダンジョンはこの世界にある様々な国々の至る所に存在している。

 千年以上前に存在していたとされる種族メノールターナが、かつてその財宝を隠すためだけに作り上げたと言われている。しかしそれはただの伝説であり、本当の話かどうかも分からない。

 そして、この島国にも攻略済みのダンジョン一つを含め、三つのダンジョンが存在する。


「私達ドラゴンはそのダンジョンに、数年から数十年に一度導かれるの。そして、導かれたらそのダンジョンを守る義務を与えられると言われているわ。そして同時に……」


「同時に?」


「ダンジョンに選ばれるという事は同時に、もうドラゴンの国に戻れないことを意味するの」


(あーなんとなく分かった)


 カリアスにとってセレネの話はとても興味深いものだった。なぜなら、ダンジョンのボスとして冒険者と戦うドラゴンの存在のカラクリを知ったからだ。その情報は、探求者が持つ好奇心を大きく満たし、更にカリアスが長年追い求めてきた謎の鍵になり得るものだった。

 

 と同時に、そこまでセレネの話を聞いて、カリアスは理解する。

 セレナはダンジョンに導かれた母を探すために、遥々この国にやって来たのだと。

 カリアスはその琥珀色に輝く瞳を曇らせていく。何故なら、セレネの母親が今どうしているのか、カリアスには想像できてしまったからだ。


(言うべきなのか……)


 カリアスは事実をそのまま伝えるべきか、隠しておくべきか考える。彼女の病み上がりの体を考えれば、残酷な現実を知って気力を無くしてしまうよりも、今は希望を持って治療に専念した方がいいに決まっている。

 だが、


(本当にそれでいいのか?)


 命の恩人とは言え、全く得体の知れない人にここまで自分の事を話す事は、きっと勇気のいる事だっただろうとカリアスは思った。母を探すための情報を得るのに自分の危険を顧みずに語るその強い意志を、カリアスはひしひしと感じていた。そして、そんなセレネに嘘や誤魔化しはいけない事だろうとカリアスの良心が訴えている。

 

「ねぇ、カリアス。何か知らない? どんなことでもいいの! お母様やダンジョンいついて何か知ってる事はない?」


 そんなカリアスの心の葛藤を知ってかしらずか、彼女はカリアスに必死な眼差しを向けてそう訴えてくる。


「本当にどんな情報でもいいのか?」


 カリアスは気づいたらそう口にしていた。


(そんなこと言ったら、悪い情報があると言う事を告白しているようなもんじゃないか)


 心の中で自分の会話能力の乏しさに幻滅しながら、カリアスはセレネを真っ直ぐ見つめる。彼女はハッとした表情を一瞬した後、何かを心に決めたような表情をして姿勢を正した。


「どんなことでも受け止めるわ。だから、お願い」


 その容姿からは似つかわしくない程の大人びた雰囲気で、セレナはそう言った。


(俺も覚悟決めないとだな)


 そんな彼女を見つめて、カリアスはそんな事を思った。

 まだ出会って数日。会話し始めたのはたったの数時間。それなのに、なぜか目の前の少女には自分の追い求める謎や真実を話さなくてはいけないような気がした。

 そして、彼女を助けた以上このまま放っておくことはできないとカリアスは思うのだった。

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