寝ても覚めても。
寝ても覚めても美沙希のことばかり考えている。
我ながらこれは重症だ、とカズミは思う。
彼女の顔が好きだ。
さらさらの黒髪ショートが好きだ。
すらっとしたスタイルが好きだ。
細すぎる腰のくびれが魅惑的。
長くて美しい曲線を描く手足が好き。
ルアーを投げる姿がカッコいい。
クラスの中でひとりぼっちなのすら愛おしい。
クラスの中であたし以外の友だちをつくるべきだとは思う。いちおうそうは思ってる。
でもあたしだけがあの子の友だちなのがたまらない。
美沙希の友だち? あたしひとりでいいじゃん!
もっともっと彼女の特別になりたい……。
委員長からは「クラスに打ち解けるように言っておいてよ」と言われた。
美沙希がクラスに打ち解けることなどできるのだろうか。
「おはよー! きのうは40アップを釣り上げたよ。サイコーだった。釣りに行こうぜ!」
そんなことを言い出す美沙希は……想像できない。
「おはよう。実は私、釣りが好きなの。女の子なのに、変かな? 一緒に釣りに行ってくれる人がいるとうれしいな」
うわー、もし美沙希がそんなことを言ったら、男子が喜びそう。佐藤くんなんてちょろく釣れそう。
「おはよう……。あの、私、人見知りを克服したいの……。友だちになってください!」
うん、美沙希から歩み寄れば、友だちはできるんじゃないかな。知られていないだけで、実はやさしい子だし。
美沙希は対人恐怖を克服したいと思っているのだろうか。
あたしは彼女のために何ができるのだろう……?
ああっ、また美沙希のことばかり考えている。
美沙希からメッセージが届いた。
『ゴールデンウイーク、釣りしない?』
やった! 美沙希からのお誘いだ!
「行く行く! 美沙希と一緒に釣りまくりたーい!」
『GWは混んでいるから、釣りにくいよ。あんまり釣れないかもしれないけど、それでもだいじょうぶ?』
「平気だよー。あたしは美沙希と一緒に遊ぶだけで楽しい!」
『釣れないと楽しくないよね?』
「あー、釣れないより釣れた方がいいね。精進します、師匠!」
本当は釣れなくたっていいんだ。
そばにいられるだけでいい。
『GW初日、自転車で迎えにいく。午前5時出発でいいかな。早いけど……』
迎えにきてくれるんだ! 何時だっていいよ!
「イエッサー! 準備万端整えて待ってます!」
『つきあってくれてありがとう。楽しみにしてます』
「あたしもすっごく楽しみだよ!」
はあ〜。ゴールデンウイークも美沙希といられるよ。あたし今、かなりしあわせかも。
スマホの画面に美沙希の写真を表示させた。
可愛すぎてヤバい。