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釣りガールズ  作者: みらいつりびと
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謎の美少女川村美沙希

 川村美沙希かわむらみさきが席を立ったとき、クラスの男たちの目は彼女に釘付けになり、女たちの多くはそんな男子たちを見て眉をひそめた。女子の中で琵琶びわカズミだけは、うわーっ、きれーっ、お友だちになりたいーっ、と強く願った。

 高校の入学式の日、1年1組の自己紹介のときだった。

 美沙希は立ったまま、なかなか話し出さなかった。

 女子高生としてはかなりの長身で、手足がすらっと長い。顔立ちはアイドルだと言われてもおかしくないぐらい整っている。髪はボーイッシュなショートカット。残念ながら胸は平たい。とても平たい。女子の制服を着ていなければ、美少年と思われるかもしれないような少女だった。 

 男たちの目を引き、女たちも意識せずにはいられない特別な美人……。


 美沙希はなかなか話し出さない。


 担任の小坂弓枝こさかゆみえが「川村さん、自己紹介よ。何か話して」と呼びかけた。

「川村です」と美沙希は言った。そして席に座った。


 教室中の人間が、それだけ?!と思った。


 小坂教諭はせめてフルネームぐらい言ってよ、と心の中で叫んだ。しかし彼女は気弱な教師だった。席についてすっかり沈黙してしまった美沙希を、しばし呆然と眺めていることしかできなかった。

 美沙希の後ろの席の胡桃沢翔くるみざわかけるが立ち上がり、自己紹介を始めた。

「胡桃沢翔です。中学のときは野球部に入っていました。高校でも野球をつづけるか、別の運動部にするか迷っています。よろしくお願いします」と彼は言った。


 教室中の人間が、ふつうだ、と思った。 


 ふつうの自己紹介がつづき、琵琶カズミの番が来た。

「あー、琵琶カズミです。えっと、中学では美術部でした。きれいなものが好きです」と彼女は言った。心の中で、川村さんみたいな、とつぶやいていた。「仲良くしてもらえたらうれしいです」

 特に川村さんに……。

 琵琶カズミは川村美沙希のような飛び抜けた美少女ではなかった。垂れ目で愛嬌があるが、特徴はそれだけの平凡な顔だ。しかし胸は大きかった。巨乳と言ってもいいサイズで、ぽよよんとしていた。髪の毛は少しカールしたくせ毛で、肩のあたりまで伸ばしている。


 ホームルームが終わり、クラスメイトたちが高校生活での新たな友だちをつくろうとしてざわざわとおしゃべりをする中で、美沙希は誰とも会話せず、さっさと教室を出ていった。

 彼女が気になって仕方がないカズミは、思わず美沙希のあとを追った。

 

 美沙希は細長い布のケースを持っていた。

 その中に釣り竿が入っていることを、カズミはまだ知らない。

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