真珠の耳飾りのいかつい少女
※挿絵を表示してお楽しみくださいませ。
「なんだ、この絵は?」
「今度、巨匠画家のパロディー展をやろうって話になってさ」
「ほぅ。で、フェルメールを題材にしたってわけか?」
「そういうこと。よく描けてるだろう?」
「どこがだよ。オランダ政府からクレームが来るぞ」
「ユーモアの分からない男だな。――作品は、他にもあるんだ」
「ひとつでやめとけば良いものを。――牛乳を注ぐ女に、手紙を書く女か?」
「そうそう。ソックリだろう?」
「似ても似つかない。第一、牛乳パックやボールペンは、この時代に存在しない」
「かったいなぁ。有り得ない物を書くから、芸術は面白いんじゃないか」
「有り得ない物を描くのは、有り得る物をありありと描けるようなってからだ。こんなくだらないパロディーなんか描いてないで、真面目にデッサンに励め」
「いやぁ、それなんだけど。これでも、キャンパスで何人かにモデルを頼んでみたんだよ? でも、誰も相手にしてくれなくてさ」
「なんて言って頼んだんだ?」
「ねぇ君、フェルメールに興味ないかい? って」
「タチの悪いナンパじゃないか。それに釣られる女は、かえって怪しいぞ」
「仕方ないから、全部、自撮り写真を元に描いたんだ」
「どれも顔がいかついと思ったら、お前がモデルだったのか。こんなもの、こうしてやる!」
「わっ! 窓から投げ捨てないでくれよ」
「やかましい。お前も投げ捨ててやろうか? ヒトが貸した金で遊びやがって、この野郎」
「ひぃ! 勘弁してくれ~」




