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魔物園の魔物達は園主と共に今日も自由に生きている  作者: 海夜 淳
第二章 セイレーンとマーメイド
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開幕

 ブロンドの髪とそばかすが印象的な女性ジェシカと、緑髪の好青年リックは、プロディジィウムの商業区画にある広場に来ていた。二人共初めてのプロディジィウムの為、入園門を潜ってすぐにあるブラックドラゴンにあっけに取られている。


「話には聞いてたけどすごいわね。この剥製よりも、動いてるドラゴンのほうがすごいんでしょ?楽しみだなぁ」


「そうだね。実は…今夜のセイレーン・マーメイドショーの予約も取れたんだ。だから楽しみにしておいて」


「ほんとに!?あのチケットって貴族以外は抽選なんでしょ?よく取れたね」


「まぁ、ちょっとね…」


 3日に1度開催されるセイレーン・マーメイドショーは、非常に人気が高く、貴族とその従者以外は、100倍以上の倍率の抽選に当選しなければ観ることができない。しかし、一部例外があり、その日プロポーズをする事を決めている等の特別な理由がある場合、その内容次第で優先的に予約が取れる事がある。

 ガリウスは「リア充枠なんていらねぇ!」と言って反対していたが、ティーリウスやミリティアの意見により、日に500席限定で優先席を確保することになった。

 リックも、数日前にプロディジィウム内の宿泊施設と合わせて、プロポーズ枠での予約を取っていた。



 二人は、その日は比較的近い草原区と森林区を観光し、ディナーショー会場へと向かった。会場へ向かう頃には、リックもとても楽しそうな表情に変わっていた。子供の頃から一緒に過ごし、気が付けば恋人同士になっていたジェシカとは、いずれ結婚したいと考えていた。その為、二人で過ごしているうちに、色んな事に因われたままではいけないと思い、彼女の事だけを考えることにしたのだ。


「いらしゃいませ。リック様とジェシカ様ですね。お席は1階のこちらの席をご用意しております。指輪にお席の場所を転送させて頂きましたので、ご確認をお願いします」


 会場に着くと、入り口にて予約の確認を行い、『インフォ』を使って会場マップに記された座席まで向かう。劇場の入口を思わせる扉をくぐると、そこは見たことも無いほどに巨大なホールだった。


「すごい!おっきなホールだね。何人ぐらい入るんだろ…」


 ジェシカの疑問に答えるために、リックは『インフォ』に記された、この会場の説明を開いた。


「えっと…。最大5万人が一緒に夕食を食べられる広さなんだって」


「5万人!すごいね。2階と3階は貴族専用で、平民は1階だけなんでしょ?ちゃんとマーメイドとセイレーンの歌聴こえるかな?」


「大丈夫みたいだよ。ほら、ステージの後ろに大きな黒い布が張ってあるだろ?あそこに、光魔法で歌ってる姿を映して、音も風魔法で聴こえるようにしてくれるみたいだよ」


「あそこがステージなんだ。すごい!ステージに海と岩場があるよ!」


「ジェシカったらさっきから『すごい』ばっかりだね」


「だって、本当にすごいんだもん。こんな所に来れるなんて、ほんと、ありがとね」


 すごいを連呼しながら、ジェシカはリックに先導され会場マップに記された座席に着く。そこは会場の隅の方ではあったが、黒い布が張られたスクリーンがよく見える場所だった。直接マーメイドやセイレーンは見えないが、落ち着いて食事が取れるなかなかの席だ。

 テーブルの中央には、料理の名前が書かれた、見慣れない黒い板が置いてあった。


「えっと、インフォによると、これで食べたい料理を注文できるみたいだね。料理名に触ると料理が運ばれてくるんだって」


「へぇ。すごいな~。魔法ってこんな便利なこともできるんだね」


「【賢者】ミリティア様の力らしいけど、確かにすごいね。ジェシカは何が食べたい?」


「ん~・・・。こんな雰囲気だから、高級レストランのフルコース、みたいなのばっかりだと思ったけど、意外と料理は普通なんだね」


「そうだね。サラダにポトフに…メインもビーフシチューとか焼魚とか、割と普通な料理が多いね」


「まぁ、貴族みたいなフルコースが出てきても、緊張しちゃうから、私はこっちの方が気軽でいいかも」


「確かにね。じゃ、僕は春野菜のサラダとスープ、メインはステーキにしようかな」


「私も同じもので」


 二人が料理を注文し終えてしばらくすると、辺りがうっすらと暗くなり、ステージ上部からゴンドラに乗った男性が降りてきた。


「皆様、お待たせいたしました。これより、セイレーン・マーメイドによる歌の世界へご案内させていただきます。3部構成でお届けします今宵のショー。まず始めに、セイレーンによる序曲『サルウェーテ』をご覧あれ!」


 辺りが一段と暗くなり、どこからか歌声が聞こえ始めた。


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