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魔物園の魔物達は園主と共に今日も自由に生きている  作者: 海夜 淳
第一章 魔物園「プロディジィウム」
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商業区広場と地区説明

 一行が門をくぐると、そこには広大な広場があった。左右には様々な商業施設が並び、その奥には飲食店や宿泊施設が立ち並んでいた。



 そして広場中央にあるものに、一同の目は釘付けになった。



「こ・・・これは・・・」


「ドラゴン!ドラゴン!」


 広場中央には、丸太ほどある四足でしっかりと地面に立ち、両翼を広げ今にも雄叫びを上げそうな姿のドラゴンが鎮座していた。その大きさ、高さは建物の2階を優に超え、広げた翼は片翼だけで大人2~3人を包み込んでもなお余りある。表皮は漆黒の鱗に覆われ、ドラゴンの中でも最大種のブラックドラゴンであることがわかる。


「これは・・・生きてはいないのか?」


「はい。開園2年目に亡くなったブラックドラゴンを剥製にしたものです」


「ドラゴン…死んでしまったのか…?」


 マルコルが残念そうに聞くと、ミコトはマルコルの目線まで屈み


「大丈夫ですよ。山岳区には、まだまだブラックドラゴンを飼育しています。ブラックドラゴン以外にも、レッドドラゴンやブルードラゴン、滅多に姿を現しませんがエンペラードラゴンもいますよ」


 笑顔でマルコルを安心させる。すると、シャルルは先程ブラックドラゴンを目にした時以上に驚いた。


「エンペラードラゴンまでおるのか!それだけじゃない、レッド、ブルー、ブラックの3種が同じ地区に暮らしているだと?ありえん…」


 シャルルが驚くのも無理はない。一般的に最大種といえばブラックドラゴンだが、実際はエンペラードラゴンのほうがはるかに大きい。ブラックドラゴンが最大種と言われているのは、エンペラードラゴンがあまりにも人前に姿を現さない伝説級の魔物だからだ。

 更に、レッド、ブルーの両種は非常に仲が悪いとされ、両種が揃うと争いから周囲の街がいくつも滅びると言われている。それらが同じ環境下で飼育されているなど、信じられないことだった。


「エンペラードラゴンは普段はキャストの方が入ることのできない山岳区の奥地に居る為、一般展示ではありませんが、2~3年に一度上空を旋回しているのが目撃されています。一応【園主】がテイムしておりますが、他の魔物との特性の違いから相互不干渉という形で飼育しております。もちろん、人を襲うようなことはありませんので、御安心ください」


「いつでも見れるわけではないのだな。3種が共存しておるのも、テイムの力というわけか…」


「その通りでござます。プロディジィウムの全魔物は【園主】がテイムしている為、魔物同士で争い合うことはありません」


「エンペラードラゴンまでもテイムする力とは一体…」


 シャルルは驚き疲れたのか、先程までの不満気な態度は鳴りを潜め、すっかり大人しくなってしまった。


「あの…さんがくく、というのは、なんですか?」


 シャルルが呆然としている横で、リリシアがミコトに尋ねる。


「山岳区は、山でできた地区です。ドラゴンやグリフォンなどの空を飛ぶ魔物を飼育している場所です。他にもたくさん地区があって、それぞれの地区に合った魔物がいますよ」


 ミコトはそう答えると、左手を前に出し「インフォ」と唱えた。すると、中指の指輪からホログラフが出現し、プロディジィウム全体の地図と地区の説明が表示された。この指輪は、入園章と同時に受け取った指輪と同種のもので、キャストが全員1つずつ装備しているものだ。


挿絵(By みてみん)


===================

プロディジィウムの地区について


商業区:ゲストの皆様にお食事やお買い物を楽しんでいただくための区域です

    宿泊施設もこちらにあります


森林区:広大な森が広がる地区です

    植物系魔物や鳥類系魔物を多く飼育しています


草原区:草原と複数の丘からなる地区です

    昆虫系魔物や魔獣類を多く飼育しています


海洋区:海と河口部分からなる地区です

    水棲魔物を多く飼育しています


砂漠区:砂漠が広がる地区です

    熱を好む魔物を多く飼育しています


山岳区:多くの山々と火山からなる地区です

    飛行系魔物や希少魔物を多く飼育しています


廃墟区:朽ち果てた廃墟と教会のある地区です

    ゴースト系魔物を多く飼育しています


迷宮区:ダンジョンのある地区です

    家族で楽しくダンジョン体験ができます


特殊区:園主達管理者と一部のキャストが暮らす地区です

    当園の歴史を紹介した博物館や希少な生態を持つ魔物を飼育しています

===================


「すごい…たくさん」


「リリシア様はどの地区に行ってみたいですか?」


「私…かわいい魔物さんがいるところがいい」


「であれば、草原区にあるふれあい広場がおすすめですよ。子供の魔物と触れ合う事ができますが、一角うさぎやケットシーの子供はとても可愛いですよ」


 可愛い魔物が居ると聞いてリリシアの表情が明るくなる。しかし、そこにマルコルが割って入る。


「駄目だ!まずはドラゴンだ!山岳区へ行きたい!」


「そうだな。儂もドラゴンが気になってきた」


 シャルルがマルコルに追随する。ドラゴンに関する情報があまりに衝撃的だったのか、ドラゴンのことしか考えられなくなっているようだ。


「かしこまりました。しかしながら、山岳区はここからだと少し距離があるため、これから向かうとなりますと、帰りは夕食時を過ぎてしまいます。そうなると、3日に1度開催しております、セイレーンとマーメイドによるディナーショーに、間に合わなくなってしまいます。よろしいでしょうか?」


 セイレーンとマーメイドは共に、美しい歌声で有名な魔物だ。しかし、その両者が奏でる歌には、魅了の魔力が含まれており、聞いた相手を混乱させる力がある。プロディジィウムの魔物たちは、テイムされているため、魅了の魔力が抑えられており、安全に歌声を聞くことができる。セイレーンとマーメイドの歌が安全に聞ける機会など、普通は絶対に訪れない。


「むっ。そんなものまであるのか…。3日に1度と言ったな。今日見なければ期間内に見ることはできんというわけか。マルコルよ、そろそろ昼過ぎじゃ。腹も空いておろう。今日のところは昼を食べて草原区で我慢するとしようではないか」


「父上がそう仰るのであれば…」


 マルコルは渋々といった感じではあるが、山岳区へ向かうのは明日にすることに納得した。対するリリシアは、草原区(ふれあい広場)に行けるということで、一気に表情が明るくなった。ミコトが「よかったですね」と小声で話しかけると、何度も頷いている。


 そうして一行は、商業区にある高級レストランで昼食を取ることにした。

母親のフリールが空気…

次回、フリールとセドリックが…!?

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