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魔物園の魔物達は園主と共に今日も自由に生きている  作者: 海夜 淳
第三章 ドライアド
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潜入・・・失敗

「母さま、本当にここでよろしいのでしょうか?」


「間違いないわ。ここが、私達の目的を達するための場所よ」


「でも…。たくさんの人が、遊びに来る場所に見えますが…」


 フードを深くかぶり、怪しさ満載のドリュリシオとエリュシオは、目的を達するために10年もの歳月旅を続けた。10年の間に様々な変化があった。それまで森の奥深くで暮らしていたため、衣服に関する頓着が無かったが、人里で情報を集めるため、ある程度着飾る事を覚えた。

 また、食に関しても、それまで質素なものしか口にしていなかったが、様々な味付けがされたものを食べるようになった。

 しかし、2人の容姿は10年前とさほど変化していなかった。特に、15歳前後になっているはずのエリュシオは、変わらず5歳前後に見える。


 人里離れた森の奥深く、彼女達の種族が住む地域がある。人用に整備された道はなく、特に目立つ宝物があるわけでも無いため、人が訪れることが無い地域。人の十倍以上の寿命があるが、その一生のほとんどを森から出ずに過ごす為、人との関わりが皆無な魔物。森の守護者とも呼ばれるドライアドという木の魔物が彼女達の種族である。


「それにしても、私達の容姿がこんなに人に知られていないなんて、驚いたわ」


 今更不要だと考えたのか、怪しさが逆に目立ってしまっていたからか、深くかぶったフードを外しながら、ドリュリシオがエリュシオに話しかける。

 エリュシオも同じ様にフードを外し答える。


「そうですね。初めて村に行った時は、暴漢に襲われて裸の親子だと思われました…」


「緑髪の人間も、少ないけど居なくは無いみたいだし、違いは寿命ぐらいかしら?」


「あとは、木材を自由に生成・操作できる力もあります」


「トレントみたいに完全に木の姿をしてたら、ここまで来ることはできなかったわね」


 トレントとは、彼女たちと同じ木の魔物の事だ。しかし、その容姿は人と変わらない彼女たちと異なり、大木に顔がついた様な姿をしている。こちらは比較的浅い森にも存在し、その果実が美味なため、人に狩られる事の多い魔物だ。もちろん、プロディジィウムの森林区でも飼育されている。


 彼女たちは、そのプロディジィウムの入園門前に来ていた。


「ここに、魔物を統べる園主がいるんですね」


「そうよ。さぁ、早速入りましょう」


 2頭の魔物が入園門に歩を進める。丁度内外の境界線に差し掛かった時、なにかの力によって後ろに弾き飛ばされてしまった。


「どうしてかしら・・・?」


 その様子を見たキャストが、彼女たちの元に駆けつける。


「お客様。大丈夫ですか?」


「大丈夫よ。なんで入れないのかしら?」


(私達が魔物だから…じゃないでしょうか?)


 エリュシオが思い当たる節を、駆けつけたキャストに聞こえないように話す。しかし、キャストの言葉を聞いて頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「失礼ですが、入園章はお持ちでしょうか?」


「入園章?なんのことかしら…」


「当園はあちらで入園章をご購入頂いた方のみ、入園頂けますので、お手数ですがお買い求め頂けますでしょうか?」


「そんなのが必要だったのね」


「母さま、今いくら持ってますか?」


「割と持ってるわよ。全部で1500シル?ね」


 一般的に1500シルと言うと、2人で夕飯を外食すると消えてしまう金額である。しかし、ドライアドである2人にとっては、夕飯を外食で食べられるというだけで贅沢な(希少な)事であり、1500シルは十分な金額であった。


「当園の入園料は、大人の方で2万シル、お子様で1万シルとなっております。申し訳ありませんが、またの機会にご利用ください」


 そう言うと、キャストは足早に去っていった。特段、「貧乏人には用はなし」という意図があったわけでは無かった。キャスト全員に相手の貴賤を問わない様教育は行き届いては居る。しかし、昨今あまり見ない入園料について知らない相手に、どう対応すればいいか困惑してしまい、塩対応になってしまったのだ。

 あまりにもそっけない対応のキャストに対し、ドリュリシオはというと


「そんな大金が必要だったのね…。知らなかったわ…」


 それ以上に金額の事がショックだったのか、キャストの態度については気にならなかった様だ。


「母さま。どうしましょう?なんとかして忍び込みますか?私達は遊びに来たわけでは無いのですし」


「いえ!それは駄目よ。目的の為といっても不正だけはだめ」


「しかし、母さま。私達の目指すべき所としては…」


「それでもよ。お金ならなんとかするわ。この1500シルだって、ちゃんと稼いだお金なんだし」


「そうですね…。がんばりましょう!」



 その日から数日後、プロディジィウムの周辺で精巧なドラゴンの木細工を販売する、美人親子が居る、とプロディジィウム周辺が賑わい始めた。

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