再会
親友を失った私を気遣ったのだろう、両親は県外の高校への進学を勧めてきた。
両親は仕事の関係上引っ越すことが出来ないため一人暮らしになるらしかったが、
1人の時間が欲しいと思っていた私にとって、その提案は渡りに船だった。
まぁ結局の所、私は1人になれなかったのだけれど。
アパートには、高校の入学式の一週間前に引っ越した。
事前に必要なものは送っておいたので、さほど苦労することはなかった。
荷物の整理が粗方終わった部屋を見渡すと、乱雑に積まれた空の段ボールの後ろに何かが居た。
私の目の前で死んだはずの百合子が、中学校の制服姿で座り込んでいた。
幻覚かと思って、目を擦った。でも、消えない。
「やっと気付いてくれたね。久しぶり。会いたかったよ。」
百合子が私の視線に気付き、口を開いた。
「わ、私も会いたかった。でも、なんで?生き返ったってこと?」
「生き返った、っていうとちょっと語弊があるかも。たぶん、桃にしか見えないし、桃にしか触れないから。」
少し困ったような顔で、百合子が答えた。
「触れるの?」
恐る恐る、百合子の髪へ手を伸ばす。
懐かしい感触が私の手に伝わった。真っ黒で、少し癖のある百合子の髪。私の大好きだった百合子の髪。
手を毛先の方へ滑らせて、頬、それから首に触れる。温かい。脈もある。
「ちょっと、くすぐったいよ。」
百合子が笑ながら身をよじった。
「ごめん。つい、懐かしくて。」
手を放し、再び百合子と向き合う。懐かしんでいる場合じゃない。
私には百合子に確認しておかなければいけないことがあった。
「色々聞きたいことはあるんだけれど、百合子は、自分がその…死んだときのことを憶えているの?」