大敷設時代
以前から検討中だった史実における広瀬鉄道の設立周辺の物語を書き始めました。
不定期更新になるので、気長に……。
大敷設時代……その後の時代に鉄道の改軌と新線建設による列島改造が行われた時期を指して称される時期のお話。
大正末期、関東大震災を境に政府中央、鉄道省が音頭を取り全国の鉄道網を再整備する方針となり、私鉄をもその潮流に乗り、全国の鉄道マンは熱気に包まれていた。この時期、数年前から取り掛かっていた連結器交換事業も併せて鉄道省の現場は活気に満ちていた。
「まずは地方線区の改軌と重軌道化だ! 世界に例なき自連替え、そして世界に例なき列島大改造だ! 者ども褌を締めなおして掛かれ!」
鉄道省の神戸鉄道局から派遣された官僚が山陰本線の中核である米子駅にて訓辞を垂れる。
彼の訓示が終わるとこの日から山陰本線の改良工事がスタートした。
「山陰地区の鉄道事業が再びこの地から産声を上げるとはな……感慨深い……」
官僚の横に立っている年配の男はしみじみとそうつぶやいた。
「駅長、貴方がこれからは陣頭指揮を執って頂くわけですが、貴方が現場にいた時のことを思い出して最後の御奉公をしていただきたいと……」
「あぁ、わかっている……老骨に鞭を打ってご奉公させていただくよ……」
官僚と駅長は長い付き合いであるらしく、会議室に集まった鉄道マンが散っていったあと、昔のことを懐かしんで少しの間感慨にふけっていた。
「これから今まで以上に忙しくなる……そう言えば、本省から非公式な話だと前置きがあったが、アメリカの企業が進出するという話を聞いたが……」
「あぁ、先日、工場の予定地に案内した。地元の名士たちも顔を揃えていて壮観だったぞ……なんでも、政財界の肝いりだとか……うちとしても輸送実績が増えるから結構なことだよ」
駅長と官僚はまた仕事が増えるなと微妙な表情をして笑った。