東条邸の怪 第一幕
初めまして、ウタウウサギと申します。この小説に興味を持っていただけたことがうれしいです。これが初投稿作品で至らぬところばかりですが、少しずつ上達できるように精進いたします!
8月の始まり、その日は特にむし暑く聞きなれたセミの鳴き声も心なしか弱々しい気がした。
空には雲一つ無く、いちめん真っ青な中に太陽だけがじりじりと照りつけている。
世間は夏休み真っ只中、同級生たちは今ごろ何をしているのだろう、海やテーマパークにでも行ってるのだろうか、額に流れる汗を拭いながらとりとめもないことを考えているうちに僕は学校までの長い坂道を登り切っていたのだった。
「あっ!!東雲くんやっと来たぁ!遅いよぉ!」教室に着くなり星奈先輩の大声が僕を歓迎した。
星名憂美、彼女は僕の所属するこの「夕霧学園 みすてりーくらぶ」の部長である。
ちなみにこの部の名前は先輩がつけたものだ。
「すみません、ちょっと寝坊してしまって。」僕がそう返事をするが早いか、「東雲!あんたどーゆうつもりよ!今日は一色先輩と谷崎君が調査でいないし、めぐみは帰省中だからあんたがいないとあたし星名先輩と二人きりなのよ!?」今にも泣きそうな顔で叫んだのは同級生の月島真奈美。
とある事件を経て今年の春からこの部にやってきた。
一色薫先輩と同級生の谷崎康太、それに後輩の三堂めぐみもおなじくこの部のメンバーなのだが今は不在のようだ。
ひどぉ~いまなみん!おっぱい揉んじゃうゾ!ブーブー騒ぐ先輩と本気で泣き出しそうな月島をかわしつつ僕は席についたのだった。
「それにしてもわざわざ一色先輩まで調査に行くなんてどうしたんですか?確か東北の寒村で神隠しが起きてるって話でしたっけ?」二人が落ち着いたところで話を始める。
「そう!なんかね調査に行った康ちゃんからぜんぜん連絡がなくてぇ、ほら、噂の内容が内容でしょ~?だからぁ薫っちも行っちゃったの。」
「そうだったんですか…康太のやつ大丈夫かな…。」実際、神隠しとはあまり穏やかな響きではない。
この場合、怪談とか超常現象のたぐいではなく誘拐とか何かしらの犯罪が関わっていそうなものだからである。
しかし、「だいじょぶだって~薫ちゃんがいればなんとかなるなるぅ~」この先輩、能天気というか天然というかむしろバカなんじゃないだろうか…?
「まぁ星奈先輩ならともかくとして、一色先輩なら心配ないわよ。それより東雲!あんたが来るまで今日の会議待っててあげたんだからアイス奢んなさいよ!」こうして一言多い月島がまたその豊満な胸を星奈先輩に狙われている間に、僕は三人分のアイスを買いに行くのだった。
それで_「それで今日は何か特別なネタがあるのか?今日は休みだったのにいきなり呼び出しなんて。」アイスを食べつつ僕は言う。
「同級生の弥生知ってるでしょ?ほら、東条弥生。あたしけっこう仲良いんだけどね、きのう弥生から電話があって相談されたの。」どうやらその相談というのは要約するに東条家のもつ別荘におかしなことが起こるようになった、そしてそれがエスカレートしているということらしい。
「そこで夕霧学園がほこるこのみすてりーくらぶにお鉢が回ってきたってことか。」仲の良い友だちが所属しているとはいえこの部活をあてにするあたり、意外と東条も抜けてるやつなのかもしれない。
「みすてりーくらぶ」なんてこんなふざけた名前で、実態もよくわからないのだから。
「弥生の電話の時の声ね、すごく焦ってて怯えてるみたいだったから心配で…警察も調査したんだけど証拠もないし原因もわからないらしいの。」
「まぁ~まなみんもこう言ってることだしぃ~?ね!三人で別荘の怪を解決としゃれこも~よ~!」
月島がここまで言うのはやはり他人ごととは思えないからだろう。彼女の身にも、つい最近まで同じようなことが起こっていたのだから。
「そうだな、一色先輩がいないのはちょっと心細いけど、とにかく東条に会いに行ってみるか。」
「この憂美ちゃんがいるんだからに安心しなさいっ!それより~、ウフフっ、その別荘って~避暑地で豪邸なんでしょ~?たっのしみぃ~!」
「先輩!まじめに考えてくださいよ!遊びに行くんじゃないんですからね!」
月島、たぶんその人にそんな分別はないぞ。
最後まで読んでいただけてとてもうれしいです。次回から怪異との関わりを描いていきます!