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■■に捧げるメルヘン  作者: 伊和春賀
5/5

5: “How stupid you are.”

「あなたは何て愚かなの」

 ささやく声が聞こえます。

「あなたは何て愚かな願いをしたの」

 耳元に囁く声が聞こえます。

「あなたは何て愚かな願いを最後にしたの」

 少女の耳元に囁く声が聞こえます。

「消えてしまいたい? そんなことがあなたの願いなのかしら?」

 鏡に映したように裏返った声が少女の耳元に聞こえます。

「あなたが消えたら、私はどうなるのよ。我儘わがままなんだから。まったく、もう」

 声は少し怒ったように少女に話しかけているのです。

「ねえ、聞いているの?」

 色とりどりの四角形がふわふわと浮かび上がり、人のような形を作っていきました。

「ああ、そうか。あなたには聞こえていないのよね。私の声なんて、届かないのよね」

 その人型はより細かな四角形の塊となっていきました。

「でも、こっちを見ているのよね。だって、あなたの目が私を追ってくるんですもの」

 モザイク状の手が少女の瞳に迫ってきます。

「けれど、それはおかしなことなのよ。あなたが魔女でなければ有り得ないほどに」

 少女の瞳に何色もの四角形が触れました。

「卑しい目。ああ、なんて卑しい目なの。あいつと同じなんて。そんな目で見つめないでよ」

 モザイク状の手はバラバラになって崩れていきました。

「ああ、触れることさえ許されないのね。こんなに醜い目なのに」

 四角形は回転し、赤くなりました。

「まあいいわ。許してあげる。あなたはあいつとは違うもの。ね?」

 反転した声が少女の耳元に囁きます。

「あなたは間違いを犯したことに気付かないといけないのよ」

 色とりどりの四角形はだんだん五角形になっていきました。

「どんな間違いを犯したのか。それは分かっているのよね?」

 五角形は六角形に、六角形は七角形になっていきました。

「だからね。あなたは思いのままの願いをすればいいの。今度は本当の、心の底からの願いを。って、ねえ、聞いてるの?」

 七角形はいつの間にか四角形に戻っていました。

「ああ、そうだった。あなたはもう、耳は聞こえないし、口を利くこともできないのよね」

 モザイクの顔から青い三角形が一つ落ちました。

「悲しいわ。あなたとお話しできないなんて。折角出会えたのに」

 モザイクは欠落した三角形を拾うと、遠くへ投げました。

「あなたはとっても魅力的だったのよ。何てもったいないことをしたのよ。主人公失格だわ」

 三角形は放物線を描いて飛んでいきます。

「でも、これはあなたの物語なの。私がそれを見守るの」

 三角形は向こう側に落下すると、そこから緑色の芽が生えました。

「だからこうして、私は種をくのよ」

 モザイクの手が小さな双葉にちょこんと触れました。

「これって面倒なことなのよ。あなたが思っている以上に」

 小さな四角形で構成された顔は、少し歪んだように見えました。

「はあ。これでいいわね。これからあなたがすべきことは、もう、決まっているのよ」

 モザイクの顔から、ころころと丸い球が転がっていきます。

「あなたの欲は海より深く、あなたの罪は雲より軽い」

 緑色の芽は素早く伸びると大きなつぼみを付けました。

「それを分からせてやるだけでいいの。無知で愚かな人間どもに思い知らしてやりましょうよ」

 蕾はだんだんと大きくなり、赤く色づきました。

「さあ、あなたはもう一度望むの。本当の望みを」

 蕾は開き、花弁が幾つも重なった真紅の花が咲きました。

「今度は間違えてはならないわ。あなたは無知で愚かな人間であってはならないの」

 鏡で反転したような声が少女に囁き続けます。

「あなたの願いで全てを変えるのよ」

 真紅の花はおしべとめしべを揺らしています。

「さあ、手を伸ばして。そこにあなたの欲望が詰まっているのよ」

 少女は実体の無い手をあでやかな花弁に伸ばしました。

「そうよ。その調子。欲望のままに願いを叶えるのよ」

 花弁はそっと少女を包み込み、ゆっくりと閉じていきました。

 それを見ていたモザイクの顔は少しほころんでいたようにも見えます。


こんがらがってきたから書き直す!

そして、こんなことしてるから完結しない!

次だ、次!

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