時間だ、答えを聞こう!
時間だ、答えを聞こう!
これをリアルに聞く日が来るとは思わなかった。
いや、一字一句一緒ってわけじゃないけどそれに近い物はある。
「時間だ、お前の答えを聞かせてもらおうか。」
「おぉ・・・。」
「何だ?」
「いえ、なんでもありません。こっちの話です。」
「大方まともな答えを導き出せず気でもふれたんでしょう。」
「失礼な、私は十分まともです。」
いきなり人を狂ったように言うのは止めて頂きたい。
徹夜でハイテンションな感じがあるのは否めないが、これでもまともな方だ。
二徹すると流石にアレだけどね。
「という事は答えが出たのか?」
「頂いた資料を読み取り私なりの回答を導き出しました。何故我が国から人材を誘拐していたのか、そして軍事的に行動してでもそれを成功させたいのか。それは全てこの地を豊かにするためですね。」
「・・・・・・。」
どや顔全顔の俺とは対照的に、呆れた顔をするお二人。
いやいや、まだここからですよ。
「南北を高い山に囲まれ、僅かな平野部も魔物が闊歩するためまともに耕作できていませんね。その為わずかな食料を他国に依存する傍ら、輸出で儲けるほどの特産物はありません。しいて言えば野良ダンジョンがあるのでそれを目当てに来る冒険者から外貨を獲得、もしくは素材を輸出する方法も無くは無いでしょうけど、それすら手つかずの様子。よくもまぁ、これでここまでやって来れましたね。」
「それも全て国王陛下が尽力してくださったお陰だ。お前に何が分かる。」
「数字は正直ですから。それを読み解けばおおよその事は分かりますよ。」
「貴様、無礼にもほどがある。」
「まぁまて、話はそれだけか?」
冷静さを欠いたダークスを諫め、話を続けるように促してくる国王陛下。
その目は・・・なんていうか随分とお怒りのご様子です。
「一番の問題は魔物です。山岳地帯だけならまだしも平野部にも出没する為、街道を安全に通行することが出来ていません。そのせいでまともに物資が輸送できず、最奥である王都までもが物資不足にあえいでいる。せっかく手に入れた食料も、途中で魔物に食べられれば何の意味もありません。」
「いかにも、魔物の存在は我が国一番の難問だ。」
「この国だけが突出して魔物に襲われている、もしくは発生しているとは数字を見る限りでは思えません。わが国でも同様もしくはそれ以上の魔物が発生していますが、平野部は穏やかで魔物の数はかなり少ない。それが何故かは・・・聞くまでもないですよね。」
「無論だ、それを処理するだけの武力があるからであろう。」
「半分正解です。武力は確かに必要ですが、それは兵力の話。今一番重要なのは自由に移動して魔物を狩る存在です。」
「兵士ではなく冒険者だと言いたいのか?」
「これに関しては横におられる方が先に気づいて、その為に動いていたようですね。冒険者を呼び寄せるために必要な存在。ただ魔物がいるだけでは冒険者は来てくれません、冒険者が魔物を狩った後、それを売り、買い物をし、疲れを癒す。その為の環境がこの国にはないんですよ。」
そこまで言って、やっと怖い顔ではなくなってきた。
でもまだ険しいままだ。
これでは外に出ることは出来ないだろう。
そりゃそうだ、ここまではダークスが先に気づいて手を打っている。
それでも足りないから、戦争を匂わせさらに強制転送なんて過激な方法を取ったんだろう。
俺かププト様を釣り上げれば勝ち、そんな感じだったんじゃないかな?
「如何にも、そこまではダークスが気付きそれを解決する為に手を尽くしてきた。」
「ですがうまくいかなかった。当然です。」
「当然だと?」
「やり方が悪いんですよ。誘拐まがいの方法で連れてきてまともに働くと思いますか?どうせ大半は逃げるなりなんなりして居なくなったって所でしょう。」
「そんなことは無い、皆快く働いてくれている。」
「で、五年経ったと。非効率すぎます。」
五年経っても計画が進んでいないのならばそれは失敗と言ってもおかしくない。
にもかかわらずそれを勧告しないのは、国王の情けなのかそれとも見る目が無いのか。
いくら頑張ってくれているとはいえ、数字が伴わないのであれば何の意味も無いと思うけどなぁ。
「ならば、お前にはできるというのか!?」
「ここではあえて出来ると言いましょう。」
「ほぉ、適当に出来るとは言わないのではなかったのか?」
「出来る自信があるからできると言っているです。五年も必要ありません、二節あれば可能でしょう。」
「何をバカな!」
「それが出来る人物だと、貴方は知っているはずだ。私が国でどれだけ功績を上げているか知らないはずありませんよねぇ。」
あえて挑発的に。
自分は出来る男だとアピールする。
それが、この場で生き残るために必要な事。
認めさせ、何としてでもここから出なければ。
その為には国だって売る・・・ようなことはしない。
さすがにそこまでブラックにはなれないなぁ。
なのでホワイトなまま、ここから出て国に戻る。
戻ってやる。
「そうなのか?」
「・・・この三年で急に力をつけあの国で一番勢いのある人物と言えるでしょう。」
「別に口だけが達者な訳じゃありません。私はしっかりと結果を残している。わずか三年で、元老院、貴族院、そしてレアード陛下にも一目置かれる存在になりました。それは精霊師だからではありません、一商人としてここまでのし上がったんです。」
「だから自分には出来る、そう言いたいのか?」
「はい。二節頂ければ国境から一番近い町アミルトンに拠点を作ってごらんに入れましょう。」
「そんな短期間で可能な訳が・・・。」
「出来ます。シュリアン商店のイナバ=シュウイチ、この私なら可能です。」
言い切る。
これは詭弁でも嘘でもない。
俺になら出来る。
その自信がある。
だから言う。
「正直私は貴様のような男は知らない。残念ながらこの国までそのシュリア・・・なんだったかな?」
「シュリアン商店です、陛下。」
「そう、そのシュリアン商店という店の事も入ってきてはいない。だから貴様がどれだけすごい男だとしても信じることは出来ない。」
「まぁ、そうでしょうね。」
「ここから逃げ出すために自分の栄光をひけらかしているだけかもしれない。」
「わかります。」
「さらに言えば、もしそんなすごい男ならば強制転送させたことへの報復を受ける可能性だって十分にある。今までと違いかなりの権力を持っていそうだからな。」
「二つ、訂正させて頂けますか?」
陛下の言いたいことはよくわかる。
俺だって同じ立場なら同じことを思うだろう。
逃げるための口実。
適当な事を言っておいて、逃げれば戻ってこない。
そう思うのが普通だ。
逃がせば面倒な事になるとわかっていて、わざわざ逃がすようなことはしないだろう。
普通は。
「訂正だと?」
「一つは報復を受けるとの事ですが、その可能性はありません。二つ目は私に権力はありません。私はただの商人でそれ以上でもそれ以下でもありません。」
「二つ目はともかく、一つ目は何故言い切れる。」
「私がそれを止めるからです。仮に国に戻ったとして、報復で攻め込もうものなら一番最初に被害が出るのはアミルトンでしょう。自分で興す街を潰させるような馬鹿なことはさせませんよ。それに、レアード陛下は防衛はすれど攻め込む事はしません。そのような事をすればどちらの国民にも被害が出る、わざわざ血を流すことを好まないからこそこの百数十年争い無く過ごすことが出来たんです。」
「なぜそこまで言い切れる。」
「権力はありませんが多くのつながりがあります。元老院にも混成議会にも王族だけではなく、各ギルドにも知り合いが多くいる私だからこそ、彼らは私の話を聞いてくれるでしょう。そして、その人たちの力を借りて、私はアミルトンの街を大きくして見せます。」
そして陛下は無言になった。
何かを考えるように俯き、横にいるダークスは何とも言えない顔をしていた。
悔しさなのか、それとも驚きなのか。
恐怖なのか。
ただ一つ言えるのは、昨日までの俺を見下すような表情ではないという事だ。
無言の時間が続く。
カードはもう残っていない。
無論切り札は残しているが、これは最後の最後、それこそ死ぬ間際のとっておきだ。
今使えるカードは最適な場所で切った。
後は向こうの返事待ちだ。
さぁ、どう出てくる。
「・・・こいつの言っていることは本当なのか?」
「悔しいですが事実です。」
「ただの商人が権力を持たずに?そんな馬鹿げた話があるか?」
「あるからそうお答えしているんです。」
「何故だ、なぜ五年かかったことを二節で出来ると断言できる。」
「それはやり方の問題です。命令では人の動きは鈍いですが、願いであれば動きが早くなります。無理やり連れてこられた彼らの動きが鈍いのは致し方のない事。その点私であれば、多くの人に願う事で素早く事を動かすことが出来ます。商人だけではない、ギルドやその他大勢の人に声をかけ、一度に動かすことが出来るからこそ時間を短縮できるのです。」
命令されて動くのは軍隊だけ。
普通はイヤイヤ動くに決まっている。
受動的か能動的か。
それだけでも人の動きは大きく変わるのだ。
「一度に?」
「はい。」
「お、お前は冒険者相手の商売にどれだけの人員が必要かわかっているのか?」
「もちろんわかっています。私はダンジョン商店の店長ですよ?冒険者相手に商売をしていながらそれがわからないはずないじゃありませんか。」
「具体的には何をどう用意する?」
「まずは冒険者ギルドの設置を、それが無ければ始まりませんからね。続いて商店を誘致します。私のようなダンジョン商店でも事足りますが、ここはやはり複数誘致すべきでしょう。飲食店、物販店、武器防具の販売店並びに工房、宿も値段に応じて複数あった方がいろいろと便利です。さらに飲み屋と娼館を準備すれば一先ずは彼らの欲求は満たせますよ。」
人間の三大欲求。
食欲睡眠欲性欲。
加えて物欲と色欲を刺激すれば尚の事良い。
冒険心は満たされているだろうから、それ以外を見たし、癒し、そしてまた戦いに出向く。
買ってきた魔物の素材を売り、そのお金で欲を満たす。
いくら商人や職人を集めても、それを使う為の『カネ』を用立て出来なければ何の意味もない。
「商人や職人はともかく娼婦までも用意できると?」
「彼女たちも商売と割り切っていますからね、新天地を求めている人も多いんです。娼館にはいくつか伝手が有りますのでそこを通じて融通してもらいましょう。あぁ、出がらしなんかじゃありませんよ、とっておきの女性を用意します。その辺りにはかなり敏感ですからねぇ冒険者は。」
「なぜ最初にギルドを?」
「簡単ですよ、その方が楽だからです。一から始めるよりも初めから規格の決まったものを使う方が都合がいい。幸い冒険者と冒険者ギルドは切っても切れない仲ですし、輸送ギルドを誘致しておけば物流も改善できます。冒険者が来れば護衛が増えますから、奥地への輸送も安全に行うことが出来るでしょう。幸い今年も豊作ですから、それなりに安く穀物を輸入できるはずです。」
モノだけではだめだ。
ハコがないといけない。
その二つが噛み合って初めて大きな効果を生み出す。
まぁ、最終的に必要なのは人力だけどな。
「それが貴様とダークスの差か。」
「非合法と合法の差ですね。」
「・・・で、ですが今は机上の空論にすぎません!」
「わかっている。口では何とでも言えるからな。」
で、またここに戻ってくると。
いくら俺が出来ると言ってもそれを信じることが出来なければ机上の空論、絵に描いた餅ってやつだ。
どうしたもんかなぁ・・・。
「ではこうしましょう。人質を置いていくというのはどうですか?」
「何をバカな!家族でも呼び寄せるつもりか?」
「そんな危険な事しませんよ。ですが、世界に一つしかないとっておきの品、それこそ宝物庫に入れるべき最高の品を持っているのですが、それを置いていきます。もし私が戻らなければそれを売るなり好きにすればいい、それこそ私一人なんかよりも何十倍も高く売れるでしょうね。」
「そんなものをお前がもっているわけがあるか!」
「これを見てもそう言えますか?」
俺はポケットから例の融合結晶を取り出し、頭上高く掲げる。
上部からの明かりを取り込み、青と緑の結晶がまばゆい光を放ちだす。
覗き込む二人が身を乗り出すのが分かる。
そのまま落ちてくれたら面白いのだが、流石にそれは無かったようだ。
「それは・・・それはなんだ?そのように美しい物私はこれまで見たことが無い。」
「これは私に祝福を授けて下さった二精霊の融合結晶です。」
「馬鹿な!結晶の融合は不可能だと論文で・・・。」
「それは三年前に撤回されました。これが何よりの証拠です。」
まぁミド博士に渡したのは失敗作の方だけどな。
こっちが本家本元の融合結晶だ。
「世界に一つしかない融合結晶。」
「はい。これを人質、いえ物質ですかね、ともかく置いていきます。それなら文句は無いでしょう。誰にも渡したことのない大切な品です、絶対に取りに来ますから余計な事をしないと約束してくださいね。」
「逃がしてもらう身で随分と偉そうな物言いではないか。」
「本来であれば門外不出、このような場所に出すことのない品です。アミルトンの街を復興させる為の準備と引き換えに帰してくださいよ。」
二人からもらった大切なお守りだ。
こんな簡単に渡せるものではないのだが、背に腹は代えられない。
だが置いていくだけだ。
返して貰うからなと、念を押す。
さて、どう出るか。
あれもなかなか名台詞ですよね。
リアルで聞くことは・・・まぁ無いと思いますが。
何はともあれ彼のターンは終了したようです。
後は向こうがどう出てくるか。
大切な手駒をどう扱うか、それはまた次回という事で。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願い致します。




