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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第十一章

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仲直りをするためには

 まずい。


 まずいぞ。


 絶対攫っていると思われてる。


 確かに俺みたいな男が少女を連れて歩いているのがおかしいのは分かっている。


 顔は似てないし、なんだかよそよそしいし。


 でもこれは少女を見つけ易くする為であって、決して攫っているわけじゃないんです。


 それに攫おうとしている人間がわざわざ獲物を見やすくするでしょうか。いやしない!


 だから俺は怪しくないんです。


 分かってください。


「おい、あれイナバ様じゃないか?」


「そんなはずあるか、あの人が子供を攫うはずないだろ。」


 いや、その本人ですから!


 俺に気付いてくれたかと期待しいたのに一瞬で否定するのやめようよ。


 そんなこんなで冒険者と騎士団員にじりじりと追い込まれていると、その間を縫って一人の女性が俺の前に飛び出してきた。


「アンナを放して!私の娘なのよ!何かしたら承知しないんだから!」


「ちょ、ちょっとまってください!私はただこの子の母親を探していただけで!」


「やっぱり誘拐犯だったか!」


「今すぐ解放すれば手荒な事はしないぞ!」


 いきなり飛び出してきて一体なんですか。


 俺はタダこの娘の母親を探しているだけで・・・。


「お母さん待って!オジちゃんは悪くないの!」


「アンナ!?」


 少女の口から出た言葉に母親が目を丸くする。


 今がチャンスと俺は少女を地面に降ろすと、そのまま母親の元へと駆けて行った。


「見ろイナバ様じゃないか。」


 どうやら取り囲んでいる皆さんも俺の事を認識してくれたようだ。


 やばかった、危なく犯罪者にされるところだった。


「見つけたか!?」


「シルビア様発見しました!ですが・・・。」


「おや、なぜこんな所にシュウイチが居るのだ?」


 騒ぎを聞きつけたのか騎士団員の後ろからシルビア様がやってきた。


「見つかりましたか!?」


「見つかったんですけど、なんか変なんですよ。」


「変って・・・あれイナバ様どうされたんですか?」


 って今度はティナさんがこれまた冒険者の間をすり抜けて登場する。


 よく見るとその後ろにニケさんとユーリの姿もあるんだけど。


 何で?


「お母さん、間違いないですか?」


「間違いありませんうちの子です、良かった、本当によかった。」


 母親が少女をギュッと抱きしめる。


 いやー良かった良かった。


 母と子の対面は絵になるなぁ。


 それでさ、その絵の後ろにこれまた何故かエミリアの姿があるんだけどなんで勢ぞろいしてるの?


「シュウイチさんこれはいったい・・・。」


「この子が帰る家が分からないと言うので探していたんですけど、もしかして人攫いだと思われていました?」


「こちらは母親から子供が居なくなったと騎士団に駆け込んできたので、探していたのだ。」


 なるほど、いなくなったらまずは警察にと同じだな。


 国家権力は優秀ですから。


「私達はそれを聞きつけた冒険者が怪しい人が居るという話しをしていたので様子を見に来たんです。」


 んでもってその怪しい人間が俺なわけか。


「私はこの方が娘さんを探していると聞いていてもたっても居られなくて・・・。」


 エミリアは騎士団に駆け込みながらも自力で探していた母親と一緒に探してあげてたのか。


 なるほどなるほど。


 三者三様の理由があるわけですね。


 あ、俺も入れれば四者四様か。


 それでいて全員が同じタイミングでここに集合したと。


 そんな偶然普通ある?


「お母さんごめんなさい・・・。」


「私こそ怒鳴ってしまってごめんね。つい忙しくて怒っちゃっただけなの、アンナの事を嫌いになるはず無いからね。」


「本当?おうちに帰っても良いの?」


「もちろんよ!本当にごめんなさい。」


 どうやら俺達があっけに取られているうちにこちらは無事仲直りできたようだ。


「オジちゃん、お母さんを見つけてくれてありがとう!」


「ほら、大丈夫だっただろ?」


「うん!」


「娘を助けてくださり本当にありがとうございました。もし本当の人攫いにでも捕まっていたらと思うと・・・。」


 本当の、と言う事はやっぱり人攫いだと思われていたのか。


 でもまぁ仕方ないよね。


「何事も無くて本当に良かった。」


「本当にありがとうございました。」


「どうぞお気をつけて。」


「オジちゃんばいばーい!」


 親子が何度も頭を下げながら去っていく。


 と、仲良く手を繋いで歩いていたはずの少女がクルリとこちらを向き・・・。


「オジちゃんも仲直りできると良いねー!」


 大きな声でそう叫んだ。


 そうだった、すっかり忘れていた。


 俺はエミリア達に愛想を尽かれて離婚されそうに・・・。


「まったく人騒がせな事をしおって。シュウイチならもっと上手くやれたであろう。」


「まぁまぁ、イナバ様はあの子の為に探しておられたんですから。」


「ご主人様のやり方が悪かっただけです。」


 あれ、怒ってない?


 それどころか仕方ないなぁという顔で三人が俺を見ている。


 もしかして俺の勘違い?


 と思ってもう一人の顔を見るとエミリアだけはそうではなかった。


 真剣な顔でただじっと俺の顔を見つめ続けている。


 ヤバイ、むっちゃ怒ってる。


 どうしよう、本当に離婚を切り出されるんじゃ。


「心配をかけて本当にごめんなさい!」


 俺は四人に向って深々と頭を下げた。


 先手必勝、この機を逃せば謝る事が難しくなる。


 まずはちゃんと気持ちを伝えないと・・・。


 無言の時間が過ぎていく。


 頭を上げるタイミングも逃し、そのままの姿勢で四人の反応を待ち続けた。


「エミリア、シュウイチも好き好んで危険に飛び込んだわけではないのだ。そろそろ許してやらないか?」


「ご主人様はご主人様なりに考えて行動されたのです。結果として危険に飛び込む形になりましたがこうして無事に戻ってきました。」


「イナバ様はガンドさん達を助けたい一心でダンジョンに行く決心をされたんです。エミリア様どうか許してあげてください。」


 三人が俺を擁護してくれる。


 それを聞いて恐る恐る顔を上げた。


 だが、エミリアの顔は先程と変わらないままだ。


 やっぱりダメか。


「エミリア、その・・・。」


「・・・分かっているんです。シュウイチさんは自分が危険でも誰かが助けを求めていたら放っておけない人だって。今までもそうでしたし、きっと今回もそうだったろうって。でも、もしシュウイチさんに何かあったらと思うと私・・・。」


 突然エミリアの顔がクシャっと歪み、大粒の涙がポロポロと流れ始める。


 まるで小さな子供のように涙を流す姿を見て気付けばエミリアを抱きしめていた。


 胸の中で声を殺しながら涙を流すエミリア。


 俺にはその肩を優しくさすることしかできなかった。


「エミリアはお前がダンジョンに潜ると聞いた途端に店を飛び出したのだぞ。」


「リア奥様は私達が止めても聞いてくださらず大変だったんです。」


 恐らくリュカさんに話しを聞いたときだろう。


「そんな時にメルクリア殿が来てくれたのだ。もしきてくださらなければ、走ってでも一人でダンジョンにに向っていた事だろう。今度よくお礼を言わねばならん。」


「そうだったんですね。」


「ともかくだ。『今回』は無事だったから良かったものの、もしシュウイチに何かあった場合に送り出したこっちの身がもたないということが今回で件で良くわかった。今後は例え近場であろうと一人での移動を禁じる。サンサトローズに行くのであれば複数人で行く事。営業できない事よりもお前の命の方が大切なのだ。分かったな。」


「これはお願いではなく私達全員の総意です。ご主人様が何と言おうと守っていただきますので宜しくお願い致します。」


「私もそれが良いと思いました。残されるのは正直辛いです。」


 ニケさんにいたっては事情を知っていながら残るしか出来なかったんだよな。


 エミリアやシルビア様は力になれたはずなのに何も出来なかった。


 その全てが単独で行動する俺のせいというワケだ。


 某少年探偵宜しくどこかに行くたびに何か問題に遭遇する現状からすると、みんなの総意を無視する事はできない。


「わかりました。」


「絶対に一人で行かないって、約束してくれますか?」


 泣き顔のままエミリアが顔をあげて俺を見つめる。


 そんな顔で見つめられたら約束するしかないじゃないか。


「極力そうします。」


「何故お前はそこで約束しないのだ!」


 シルビア様に思いっきり怒られてしまった。


「いや、みんなを危険にさらすわけには行かないじゃないですか。」


「危険だと分かっていても私達は一緒に居たいんです。何も出来ないとしても傍に居たいんです。」


「本当にご主人様は女性の気持ちと言う物をわかっていないですね。」


「それをユーリが言いますか?」


「ダンジョン妖精ではありますが私も一応女という性ですので。」


 いや、まぁそうなんですけど。


「ともかくだ、シュウイチが何と言おうとこれは決定事項だ。危険があろうと我々は一緒に居る、そう決めたぞ。」


「諦めてくださいイナバ様。」


「ご主人様どうぞ宜しくお願いします。」


 いや、だからぁ。


「・・・死ぬときは一緒です。」


「そんな悲しい事言わないで下さい。」


「全員それぐらいの気持ちなのだ。」


「この命を救ってくださったのはイナバ様です。この間言いましたよね、好きにして良いんだって。だから、私も好きにするんです。」


「ダンジョン妖精である前にあの人の魂を受け継ぐご主人様のお世話をすることが私の使命です。その命が尽きるその時までずっと一緒にいていただきます。」


 ニケさんはともかくユーリまで。


 えっと、ユーリってこんなキャラだったっけ?


 全員からこういわれているんだ、それに応えないのは男として失礼だよな。


「これからも御迷惑をかけますがどうぞ宜しくお願いします。」


「「「「はい。」」」」


 全員が嬉しそうに笑っている。


 やれやれ、何とか無事に仲直りできたようだ。


 エミリアの機嫌も戻ったしこれで無事に家に帰れそうだ。


 あの少女との約束も守れたわけだな。


 俺もちゃんと仲直りできたよ。


「そろそろ定期便が出ます、明日は店を開けなければなりませんので急ぎ帰りましょう。」


「シュウイチその荷物は何だ?」


「これですか?ププト様がみんなにって渡してくれたんです。なんでも王都で有名なお菓子だとか。」


「やった!帰ったら早速食べましょう。」


「いや、それよりもまずは風呂だ。」


「・・・臭います?」


「正直に言いまして、少し。」


 ですよねー。


 いくら冬場とはいえ三日もお風呂に入っていなかったらそうなりますよねー。


 仕方ないじゃないですか。


 強行軍だったんですから。


「お背中流しましょうか?」


「え!?」


「それはいいな、一人でどこかに行かないよう監視する必要もある。」


「さすがにお風呂場から逃げ出したりはしませんよ?」


「それが分からないのがイナバ様ですから。」


 いや、お風呂場でとか勘弁してください。


 むしろ背中を流されるほうが事件が起きそうなんですけど。


「そうと決まればすぐに帰りましょう。火の当番はお任せ下さい。」


「ユーリ様宜しくお願いします。」


「いや、だから・・・。」


「シュウイチは何もしなくても良いからな。さぁそうと決まれば急いで帰るぞ。」


 今度は俺が人攫いにあうように定期便の待つ門へと連れて行かれる。


 ってそうだ!


 大変な事を思い出した。


「そうだ馬が!」


「御安心下さい、ご主人様がダンジョンに行かれている間に私とシルビア様で回収しておきました。」


 あ、そうですか・・・。


「だからお前はなにも気にせず私達の傍にいればいい。」


「シュウイチさん三日間ご苦労様でした。」


 そう言われたらもう何も言い返せない。


 大人しくしていよう。


 その後引きずられるようにして発着場まで連れて行かれ、定期便に乗り込む。


 腰を下ろした瞬間に三日分の疲れが押し寄せてくるのが分かった。


 フラフラと揺れる身体をエミリアとシルビア様がそっと支えてくれる。


「よく頑張ったな。」


「ありがとうございます。」


「シュウイチさん、お帰りなさい。」


「ただいま。」


 さぁ、家に帰ろう。


 二人の体温を両腕に感じながら俺は瞬き一つする間に眠りについた。

無事に仲直りできたようです。

いやーよかったよかった。

これでひとまず終了と行きたいところですが、まだ終わっていないことがあるので

もう少しだけお付き合い下さい。

何をするかって?

ほら、もって帰った奴があるじゃないですか。

他所のダンジョンよりも自前のダンジョンをどうにかするのが大切ですからね。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

また次回もよろしくお願いいたします。

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