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[第一部完結]サラリーマンが異世界でダンジョンの店長になったワケ  作者: エルリア
第十一章

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たくさんの応援をもらった理由は

 完全にゼロからのスタートというのは思っていた以上に気分が晴れやかだった。


 一先ずダンジョンの維持の為に最低限の魔力を加え、数日間は何とか稼働するようにした。


 ディーちゃんがこつこつためていた魔力の塊をありがたく頂戴する。


 子供の不始末は母親の責任ということらしい。


 別に気にしなくてもいいのに。


 俺の位が高ければダンジョンに出入りするだけで多少の魔力を回収できたのだが、残念ながらまともに魔力として計上できそうなのはエミリアとシルビアだけだった。


 ついでに精霊のお三方にも入ってもらったのだが、残念ながら魔力が増えることはなかった。


 もしかしてと淡い期待をしていたのだが残念だ。


 そうは上手いこと行かないよね。


 とりあえず今日からは買取に来ただけの人にもダンジョンの入り口を通過してもらい、少量でもいいので魔力を回収していく。


 ダンジョンに入るだけでもれなく飲み物プレゼント!


 なんて安直なネタだが何もしないよりかはましだろう。


「では行ってきます。」


「シュウイチは安心して自分の仕事を終わらせて来い。」


「ニッカ様によろしくお伝えください。」


「魔力を回収できそうな人がいましたら勧誘の方よろしくお願いします。」


「雪は一両日中には止むそうなので天候が回復次第セレン様に来ていただけるようにお願いしていただければ助かります。」


 皆に見送られながら俺は村への道を歩み始める。


 気温も上がっているようだし今日中に雪はすべてなくなるだろう。


 しばらくすればまた自然と降り出すだろうし、ちょっと早かっただけの話だ。


「シュウちゃんおはよう!」


「おはようございます!」


「シュウちゃん、おはよ。」


 商店を出てすぐに精霊の三人がやってくる。


 どうしたんだろう。


「おはよう、今日はどうしたの?」


「シュウちゃんの様子が気になっちゃって。」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ今日も元気いっぱいだから。」


「本当?」


「もちろん。そうだ魔力の塊、ありがとうねディーちゃん。」


「あれぐらいしか、できないから。でも喜んでもらって、よかった。」


「昨日言いそびれちゃったけどその姿も良く似合ってるよ。」


「えへへ。」


 ディーちゃんが顔を赤らめてモジモジと体をくねらす。


 そこ、奥さん居るのにとか思っただろ!


 ここで褒めとかないと本当に水を止められるかもしれないんだ。


 遊びじゃないんだよ!


「あの、その・・・。」


「おはようルシウス君。」


「昨日はごめんなさい・・・。」


「もう謝らないって約束のはずだよ?それにルシウス君自身も魔力が必要なんだからそっちも何とかしないと。」


「僕の方は大丈夫です!」


 彼がダンジョンの奥で眠っていた理由はただ一つ、魔力を溜めて精霊として孵化するためだ。


 あのままあと100年眠っていれば雪の精霊としてダンジョンから出てこれたはずなのに、冒険者に追い出されてしまったせいで彼はまだ卵のままの状態なのだ。


 幸いうちのダンジョンから魔力を摂取したおかげで半分ほどはたまった状態のようだが、それでも後50年分の魔力が足りないままなので雪の精霊として力をふるう事が出来ないままでいる。


 本来であればそのお手伝いをするべきなのだが、今の俺にその余裕はない。


 自分で何とかするという事なのでお任せするとしよう。


「そっちは私達が一緒にいるから大丈夫だよ。」


「二人ともお願いしますね。」


「任せて。」


 先輩精霊が二人いるんだから大丈夫だろう。


「じゃあ行ってきます。」


「頑張ってねシュウちゃん!」


「いってらっしゃい。」


「頑張ってください!」


 店ではみんなの応援を受けて、途中では精霊様の応援を受けて。


 精霊様に応援されるって普通じゃありえない事なんだよね。


 でもさ、こんなに応援してもらって申し訳ないんだけどさ。


 村に行くのってただ入植者の皆さんと顔合わせに行くだけなんだよね。


 にもかかわらずこの過剰なまでの応援。


 どう考えても何かあるって言っているようなものじゃないか。


 入植初日なんだし、何も起きないと思うんだけどなぁ・・・。


 でも一応覚悟だけはしておくか。


 昨日みたいなことが起きたんだし、何も起きないという保証はない。


 ここは敵陣に単機で突撃するぐらいの勢いで行くしかないだろう。


 いざ行かん、敵陣の真っただ中へ!



「ようこそおいで下さいました、昨日の雪でどうなる事かと思いましたがさすがイナバ様ですな。」


「おはようございますニッカさん。別に私が来たから晴れたわけじゃないですよ?」


「その通りだ、むしろこいつが来たせいでこの村はアリに襲われたんだろ?」


「何を言っておる、お前の馬鹿息子が原因だろうが。」


「おっと、そうだったか?」


「まったく。どの口がそれを言うのだ。」


 敵陣の中はいつもと変わらないようだ。


 どうやら俺の思い過ごしらしい。


 よかったよかった。


「今日到着するんですよね?」


「昨日のままだったら夕刻までずれ込むと思っていたがこの調子なら問題ないだろう。」


「到着後ひとまず仮の住居に荷物を置いてもらい今日は挨拶だけの予定です。夕刻は簡単では有りますが歓迎の宴を催す予定ですのでよろしければいかがですかな?」


「そういうことでしたらエミリア達にも声を掛けておきましょう。」


 シュリアン商店と村は一蓮托生、新しい住人にもちゃんと挨拶しておかないとね。


 出だしが肝心です。


「ウェリス達はもう現場に?」


「歓迎の宴には来るそうですが昨日の遅れを取り戻すために朝早くから出ております。」


「それと、備蓄の件ですが・・・。」


「シルビアより聞いております。ですが、天候が回復しましたので一度止めるよう先方には連絡を入れてあります。ただどうしても止められなかった分がいくらか有りますので、それはこちらで保管いたしましょう。」


 まさか昨日の今日で天候が回復するとは思っていなかったからなぁ。


 あの雪もお天道様のせいではなく精霊のせいだったわけだし。


 一応その辺の事情も説明しておくか。


「どれぐらいの量ですか?」


「そうですな、この村の一期分と言うところでしょうか。」


「半分こちらで買い取りますよ。」


「いえいえ、もともと備蓄を増やすよう計画しておりました。プロンプト様より追加の資金も頂戴しておりますのでご安心ください。」


「そうですか。では宜しくお願いします。」


 問題ないのならお願いするとしよう。


 うちもお金が稼げない以上切り詰めるところは切り詰めなければならない。


 幸い定期収入もあるし日々食べていく分には困らないので無駄な部分を削るぐらいだ。


「それはそうとそっちは大丈夫か?」


「なにがです?」


「随分と冒険者が減ってるみたいだが、あの人数じゃ商売になってないだろ。」


「確かに冒険者は減っていますが原因はわかっていますし、それにダンジョンのほうで少し問題が出たので今はこれぐらいで良いんです。」


「問題とは大丈夫なのですか?」


「色々とありまして、でもまぁ何とかなります。」


「何かお力になれることがあれば遠慮なく申し付けてください。イナバ様にはまだまだ頑張って貰わねばなりません。」


「お気遣い有難うございます、」


 何を頑張るかまでは聞いちゃいけない。


 ニッカさんがシルビア様との子供を期待している事は知っているので、藪をわざわざつつく必要は無い。


 色々と頑張ります。


「まぁ、こいつの事だうまくやるだろ。」


「それはお互い様ですよ。」


「俺か?俺は不器用だから適当にやれば良いんだよ。」


「まったく、お前がそんなのだから補佐する人間が大変なのだ。」


 ドリスのオッサンは相変わらずだ。


 俺もこれぐらい適当に力を抜いて生きていけたら楽なんだろうなぁ。


 こういう部分は見習わないと。


「では到着するまで少しあるようなので用事を済ませてきます。村にはいますので何かあれば呼んで下さい。」


「わかりました。」


「それじゃ俺も行くかな。」


「さぼりですか?」


「馬鹿野郎、せっかく来てくれるのに不備があったらまずいだろうが。点検だよ点検。」


 何だかんだ良いながらもちゃんと仕事するんだよなぁこのオッサン。


 面倒見が良いというかなんていうか。


 だからこそ村のみんながオッサンに一目置いているわけだけど。


 オッサンと共に村長の家を出て分かれる。


 まずはセレンさんの家とそれからウェリスの所だな。


「おはようございますイナバです。」


「はーい、すぐ行きます!」


 ドアをノックすると中からすぐに返事が返ってきた。


 この声はシャルちゃんかな?


 ドタバタという音が聞こえてきてすぐにドアが開けられる。


 迎えてくれたのはティオ君だった。


 あれ、二人は?


「おはようございます!」


「はい、おはようございます。ティオ君二人は?」


「お姉ちゃんとセレンさんはご飯作ってます。」


「ご飯?」


 まだ昼食には早いとおもうんだけど。


 良く見るとティオ君の口にお土産がついている。


 つまみ食いしていたな。


「お待たせしました!」


「おはようシャルちゃん、セレンさんは今大丈夫かな?」


「どうぞ中へ。」


「どうぞ!」


 二人に促されてとりあえず中に入る。


 家の中は甘いようなしょっぱいような不思議な匂いで満たされていた。


 部屋の中心には大きな布が広げられており、その上には大小様々な壷が置かれている。


 はて、なんだろうか。


「おはようございますイナバ様、すみません手が離せなくて。」


「急いでいませんので大丈夫ですよ。それは何ですか?」


 台所から鍋を持ったままセレンさんがやってくる。


 匂いの元はどうやら鍋の中にあるようだ。


「大雪になると思って昨日から仕込んでいたんです。この冬用の保存食なんですけど、ちょっと作りすぎちゃって・・・。」


「おすそ分けしていた食材がこんな風になっているとは思いもしませんでした。」


「そのまま置いといても痛んじゃいますし、急に寒くなったので大急ぎであれこれ仕込んだら手がつけられなくなっちゃって・・・。シャルちゃん、さっきの塩漬けは緑の壷に広げて敷き詰めて下さい。」


「緑ですね。」


「僕も手伝う!」


「ティオはダメ!さっきからつまみ食いばかりするんだもん、お昼ご飯食べれなくなっちゃうよ?」


「だって美味しいんだもん。」


 その気持ちはわからなくもない。


 ついつい手が伸びちゃうんだよね。


「お手伝いしましょうか?」


「こっちは大丈夫です。でも、お手すきでしたら一つだけお願いが。」


「私に出来る事でしたらなんでも言ってください。」


「ウェリスさん朝早くに出ちゃったのでお弁当を渡せなかったんです。机の上にあるので持っていってもらえますか?」


 机の上にはウェリスに似合わない可愛らしい柄のついた包みが置かれていた。


 愛妻弁当とはうらやましい。


 俺だってな、言えば作ってくれるんだぞ!


 悔しくなんて無いんだからな!


「こんな事でしたらお安い御用です。」


「顎で使うようで申し訳ありません。」


「セレンさんにはいつもお世話になっていますから。そうだ、雪が止んだので地面が乾いたらまたお店に来てもらえますか?勿論体調の良いときだけで大丈夫です。」


「ご迷惑じゃありませんか?」


「迷惑だなんて、むしろこっちからお願いしたいぐらいです。ウェリスも忙しくなるので来れる日だけで大丈夫ですから。」


「お医者様には動けるなら動いたほうが良いといわれていますし、無理の無い範囲でお手伝いさせていただきます。」


「お待ちしてます。じゃあシャルちゃんティオ君お手伝い頑張ってね。」


「「はい!」」


 愛妻弁当を預かり今度は村の北部へ向かう。


 入植者用の工事はもう終わっているので今は水路を作っているはずだ。


 えーっと、ウェリスウェリスっと。


 お、いた。


 土を掘る人、それを運び出す人、掘った部分が崩れないように補強する人、そしてそれを指揮する人。


 ウェリスの指示で作業は滞る事無く進んでいく。


 元が盗賊だとは思えない仕事ぶりだ。


「お疲れ様です。」


「なんだ、暇そうな奴がやってきたぞ。丁度良いそこの雪を捨ててくれ。」


「暇そうとは随分な言い方ですね。」


「なんだ手伝わないのか?口しか動かさない人間は楽で良いな。」


「誰も手伝わないとは言っていません。ですがそんな言い方をする人にこれを渡す事はできませんね。」


 そう言いながら俺は預かった愛妻弁当をウェリスに突き出す。


 少し驚いた顔をするもまたいつものようにつまらなさそうな顔で俺を見た。


「それを人質にするとは良い度胸だ。」


「訂正して貰いましょうか、口だけの人間ではないと。」


「そのひ弱な身体で何を言う。口だけでないと言うのならまずはそれを証明してから言うんだな。」


 確かにウェリスの言い分にも一理ある。


 そんじゃままずはそれを証明してだなぁ・・・。


「イナバ様それはお預かりします。」


「あ、すみません。」


「これを使って下さい。」


「助かります。」


「雪は東の待機所付近に捨てていただければあとはこっちでやりますので。」


「わかりました。」


 すかさず部下の皆さんが俺に道具を持って来てくれた。


 すごい連携だ。


 さっきまで作業をしていたのにいつの間にやってきたんだろうか。


 恐るべし。


「さて、お前が頑張っている間に俺はこれを頂くとしよう。」


「あっ!」


 何の違和感もなく弁当を手渡している事に気がついた。


 愛妻弁当はウェリスの手元へと届けられ、何故か俺は肉体労働をする事になっている。


「証明してくれるんだろ?」


 俺を見下すようにニヤニヤとした顔をするウェリス。


 くそ、俺としたことがまんまと口車に乗せられてしまった。


「入植の皆さんが来るまでですよ。」


「それまでに終わらせて貰えれば十分だ。お前ら、うちの大将が見本を見せてくれるんだとよ!」


「「「「ありがとうございます!」」」」


「それだけ大口叩いたんだ、すぐにへばってくれるなよ。」


 確か今日は入植してくる皆さんと顔合わせをするだけのはずが、なんでこんなことになっているんだろうか。


 まさか、あの過剰なほどの応援はこの事態を想定してだったのか!


 これは全く想像していなかった。


 魔力がなくなりゼロからのスタートだと意気込んで来たのに、それがまさか肉体労働になるとは。


 世の中思う通りには行かないんだな。


 でもまぁ、やるとなったんだから最後までやらないと。


 ここで口だけじゃないって所を見せておかないと俺にだって男としてのプライドがある。


 やってやろうじゃないか。


 それから暫く除雪作業に没頭する。


 雪は重たくすぐに腕が棒のようになってしまうが、終わりはなかなか見えない。


 でも、身体を使っている間は余計な事を何も考えないで済むので気持ちが少し楽になった。


 もしかしたらウェリスは俺の調子が悪いところまで見抜いていて、俺の為にこんな指示を・・・。


「なんすか!兄貴の弁当むっちゃ豪華じゃないですか!」


「うわすげぇ、こんな弁当見たことねぇ。」


「いいなぁ俺も結婚してぇなぁ。」


「ばーか、お前みたいな男に誰が惚れるんだよ。」


「そこのもやしでも結婚できるんだ、お前らならすぐだぞ。」


 誰がもやしだ。


 ひ弱で悪かったな。


 前言撤回。


 絶対俺を苦しめる為にこんな事させてるんだ。


 この野郎、覚えとけよ。


 あとでセレンさんに言いつけてやるからな!


 イナバ=シュウイチ。


 この男、口は達者だが心は狭い残念な男である。


「余計なお世話だ!」


 どこからか聞こえてきたナレーションに俺は一人ツッコミを入れるのだった。

たまには身体を動かすと気分が変わります。

いつもデスクワークなので筋肉はなくなりますし、お腹に肉はつくしで困ったものです。

腹筋ローラーで細々と頑張っております。

閑話休題。

気持ちも新たに村へとやってきた主人公。

十章で取り組んでいた入植が無事実を結ぶようです。

どんな人が来るのか。

これからどうなっていくのか。

それはまた次回という事で。


ここまでお読み頂き有難うございました。

ブックマークいつも有難うございます。

評価も少しずつ増え、ユニークアクセスも気付けば10万目前。

いやはやこんなにたくさんの人に読んで貰えるとは。

有り難い話です。

これからも頑張っていきますのでどうぞ宜しくお願い致します。

それでは今回はこの辺で。

また次回も宜しくお願い致します。

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