第二話
「ただいま」
俺の住む家は、アパートの三階。
家の中は怖いほど静かだ
玄関には母さんが好きだった画家の向日葵が飾ってある。
母さん、絵が好きだったなー。
足の怪我で病室にいた時に、もらったって言ってたよな
そんな事を思いながらすぐそばの棚に鍵を置いた。
電気を付けていない状態でこの部屋は、幽霊がいても可笑しくない。幽霊なんて信じたくもないけど
すぐに電気を付けた。
あー、疲れた。
アパートの三階へ上がる体力の無さ、すごく疲れた
上着を脱いで、ネクタイを外す。
クラッと立ち眩みがして、壁に手をついた。
悠哉の奴、何故俺の顔に当てる...
俺は咄嗟に自分の顔を抑えた。
悠哉が下手なくせにサッカー部だっていうのは知ってたけど、
顔に当てる能力があったことまでは知らないぞ
「マジ痛え...何かくれよ、絆創膏とか」
返事はない。俺は誰に話しているんだ。
俺以外に靴はないのに
母さんは俺を産んですぐに死んだ。
あと父さんは、母さんをおいて予め作っておいた他の女と
逃げた。
で、玄関に飾ってある向日葵は唯一母がいたという
証拠になるもの。
他の女とデキる前に話してくれた
学校でも家でも一人は辛い
普通ならここで美少女の妹が絆創膏か何かを持ってきて
「大丈夫?お兄ちゃん」とか言ってくれる筈なんだが、
それもない。
兄弟も妹も誰もいない。
自分で箇所を冷やしておくしかないか...
その前に、静かすぎるからテレビでも付けようか。
部屋の電気を付け、リモコンを探した。
透明な机の下にネズミ色のリモコンが見える。
こんな所に置いてたか?寝ぼけて置いてたのか
電源の場所にスイッチを入れた。
『そうですね~、このまま中国が』
テレビの中でジャーナリストが中国についてを語っていた。
まぁ、興味無いけどね
リモコンを机の上に置くとすぐ顔がヒリヒリと痛み出した。
氷を取り出して冷やすしかないかー...
めんどくさいけど
よろけながらも歩を進め、冷凍庫に向かう。
「あ。」
スマホを鞄から取らないとな。
薄灰色になった冷凍庫から氷を三つほど取り、そのまま
自分の顔に当てた。
『続いては今日のニュースです。中学一年生の男子が
屋上で自殺しました。
原因はいじめだとされていますがこれに対して学校側は...』
「っ...冷てぇ」
タオルでもしてた方が良かったなー。
『学校側はいじめはなかったと主張しているそうです
これに対して警察は』
何だよ、またテンプレ主張かよ
テレビを見て、思った。
最近、自殺のニュースが増えたなぁー不謹慎だ
鞄からスマホを取り出し電源を付ける。
すると一通のメールが来ている事に気付いた。
俺のメアドを知ってる奴は悠哉と、今日サッカーをした
奴らだけだ。
それ以外のクラスメイトとはLINEで繋がっている。
そしてこの時間帯にくるメールは大体、迷惑メールか
悠哉からのメールだけ。
たく、悠哉が俺に謝りに送ったのか。
謝るなら直接言ってくれても良かったのに
再度愚痴り、しぶしぶメールを開く。
どうせ、「楓ごめんな」で終わりだろ
が、それは俺の妄想のはるか上をいくものだった。
『クラスメイト人気投票 管理人 安田』
なんだこれ
クラスメイト人気投票って...いかにも昼間のあのリア充共が勝手にやりそうだな。
そしてイケメンやらリア充な奴らが上位になり、
下っぱの俺達が見下されるというオチだ。
でも、何で俺なんかに届く?
いやもしかしたら俺が最後の一人かもしれないけど、
俺達まで巻き込む気かよアイツら
『クラスメイト人気投票とは、匿名で投票を行い、
クラスの人気者を決める投票だよ♪』
文面的には悠哉のイタズラ?いや将人か?
次々と友達の名前を上げるが、全く一致しない。
それもそのはずだ。俺へのメールにある件名
『管理人 安田』
誰だよ安田って
俺の名字は木山だし、クラスに安田とかいう奴はいない。
悠哉のイタズラか?
こんなモノが流行ってんのか?
やめてくれよ、ただでさえ格差の激しいクラスだぞ。
メールの本文には訳の分からない事が書いてあった。
まぁ、悠哉が考えたんだから当然か
「は?」
俺はスマホを持ったまま体を起こし、立ち上がった。
は...? 何だよこれ
『木山 楓様
貴方はゲームマスターです。』
俺の名前...そして、悠哉が使わなそうな可愛い絵文字
悠哉だったら気持ち悪い。
いや、それより
『貴方はゲームマスターです。』
ゲームマスターって何だよ