私にか見えない透明。
私は、一般家庭に生まれた。小学校中学高校大学に行きそして結婚する。そう当たり前の様に思っていた。
当たり前じゃなくなったのは高校の時だった。
他人と話すのが苦手としていたので、クラスのなかで浮いていた。
入学したてのころは誰かが話かけてくれていたが私が話さないので自然と離れていった。
人間は集団行動になると集団の中の誰かを虐めたりしたくなるものだ。私がその標的になるとは思ってもいなかった。。
最初は、班行動から除かれたり必要な時に話しかけても無視されるというものだった。
私があまり話さないからしかたがないか。それくらいとしか思っていなかった。私にとっては些細なことだったので慣れていった。
私が慣れるのをわかってか、虐めはエスカレートしていった。
物を隠したり、朝来ると机に落書きがあったり、どれも幼稚な物だった。落書きを消しながら
「高校生にもなってこんなことする?」
小声で言ったつもりだったが、イジメっ子達に聞かれてしまい逆上させてしまった。
次の日から、無理やりトイレに呼び出され暴力を振るわれるようになった。
さすがに暴力は痛く耐え難いものだったので
「やめて」
怒りをこめ大きくいい放ったが、イジメっ子達はケラケラと笑い暴力はより一層強くなった。
慣れているのかわからないが痣はでてこなかった。
耐えきれなくなり、担任にイジメを受けていると言ったが、
「そんな、ドラマや漫画のようなイジメが私のクラスであるわけがない。」
淡々と言った。
その時の担任の表情は私を蔑み、めんどくさそうな眼をしていた。
なぜこの人の生徒なのだろう。それくらいしか思い浮かべなかった。
担任がだめなら校長言えばいい。
校長にイジメを受けていると言うと
「頼むから我慢して卒業してくれ。卒業してさえくればいい大学に推薦書をだすから。」
担任と同じ眼をしていた。しかし、言葉は慣れていた。
この学校に私の味方はいないんだ。
次の日から学校に行くのをやめた。
親にイジメを受けていることをいうと
「気持ちの整理がつくまでゆっくりしなさい」
そう優しく言ってくれた。その一言で私は久しぶりに癒された。
親には迷惑をかけたくない。学校にいかない分独学で勉強をした。
ある日の晩、喉が渇いたのでお茶を飲もうと一階に降りた。
親の話し声がキッチンから聞こえた。
「育て方が悪かったのかしら、1日中部屋に籠って何をしているのかわからない。これ以上あの子を支えていける自信がない。」
今さら勉強していますなんて言っても信じてくれないだろう。
喉の渇きを忘れ、ベッドの中で泣いた。
死のう。静かにそう思った。
夏休みの初日に教室にいた。死ぬならここで死ぬそう決めていたからだ。
少し汗ばんだ右手にはカッターナイフが握ってある。
頼りないがこれで心臓を刺し死ぬ。
もしかしたら死ねないかもしれない。まあ、死ねなかとしても後悔はしないだろう。
私は、殺される。クラスメイトや担任、校長そして親に。
私にしか見えない、透明な犯人。形すらわからない。
私の血によって少しは赤く染まるだろうか。形も浮かぶだろうか。濃くは染まらないが透明ではなくなるだろう。限りなく透明に近い色に。
そう願いながら心臓にカッターを刺した。