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知悉の瞳と守る者  作者: 乃木伊穂理
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エピローグ 知悉の瞳と守る者

「おはよう、凪!」


 切菜と戦った日から、早くも二ヶ月が経とうとしていた。学校も二学期が始まり、生徒たちは文化祭に向けての準備でてんやわんやだ。中には朝早くに登校して準備を進めている班もある。私たちの班は比較的時間にゆとりがあるので、いつもよりも広いこの道をのんびりと歩くことが出来ている。


「おはよー、音葉」


 この少女、“暮木音葉”はいつも元気で明るい。老いさえも彼女を蝕むことは出来なくなったというのに。


「聞いてよ凪ー、私昨日箪笥の角に小指ぶつけちゃってさー!」

「それは災難だったねぇ」

「まあ、すぐに治っちゃうんだけどね」


 この音葉なりのブラックジョークは、彼女が相当に落ち込んでいる証だ。何とかしなければ、後々面倒なことになる。そう思った私は、適当に彼女を励ますことにした。


「そんな日もあるさ! さっさと忘れて私に何か奢っちゃいなよ!」

「奢らないわよ!」


 これでよし。


「ところで、樹と詩枝は?」

「二人は校門の看板作りの班だから、多分もう学校に居ると思うわよ」

「うっわー、南無三南無三……」


 私が手を合わせて二人に同情していると、突然後方から何者かが大きな足音を響かせながら駆けてきた。


「あっ、乙倉さんおはよ!」


 慌てた様子の“笹沢崎弥子”は、早口で私にそう告げた。


「おはよー笹沢崎さん。文化祭前の購買部ってこの時間に登校して間に合うんだっけ」

「間に合ってないよ大遅刻だよ! だから全力疾走してるんさ!」

「大変だねぇ。頑張ってらー」

「頑張ってくらー!」


 弥子はそれだけを言ってまた走り始めた。


「あーあ、地球に“マナの結界”を張って時間停止したいなー」


 という願望をぶちまけながら。


「時間停止も出来るなんて、計り知れないわね……」

「思った以上に万能だよね」


 その後も、私と音葉はいつも通りの他愛のない会話を続けていた。そして、ほぼ完成といった様子の校門が横目に映る……と同時に、“知悉の瞳”が反応を示した。


「おはようございます! 乙倉さん!!」

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